第49回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会開催にあたって

第49回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会 学術総会 会長
鹿児島市医師会病院 副院長
有村 敏明
ご挨拶
 第49回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会を11月7,8日の両日鹿児島の地で開催する事となりました鹿児島市医師会病院の有村です。伝統ある本学会のお世話をさせて頂くことは私にとって大変光栄な事であると同時に、多大な責任の重さを痛感しております。
 今回は「重症疾患に対する高気圧酸素療法の役割」というテーマを掲げさせて頂きました。私は臨床麻酔・救急医学が専門で、侵襲制御学の領域で仕事をさせて頂いております。この領域での高気圧酸素療法は重要な治療の一角を占めていることは紛れもない事実であります。例えば、血流不全、一酸化酸素中毒、減圧症などに対する高気圧酸素療法は、これらの疾患の治療の本幹をなすものと考えます。しかし、救急医療を先導する医療機関が最近高気圧酸素療法の分野から撤退する傾向がありますが、それは経営の面から不採算領域であると判断されている事が原因かと思います。DPC病院の場合、入院患者では非救急の適応疾患では包括の中で算定されないため処置がコストとなってしまい、それが高気圧酸素療法の分野から撤退させる要因となっているようです。この点をふまえまして、一つのシンポジウムと二つのワークショップを重症疾患の観点から行う事としました。
 社会の変化に応じて疾患の変遷も起こっています。例えば、マリンスポーツ人口の増加に伴う減圧症患者の増加、またストレスも一因かと思われる突発性難聴、更に火災や自殺願望者による一酸化炭素中毒の増加などが挙げられます。更にコンパートメント症候群、重症急性膵炎などの重症疾患治療の選択肢に高気圧酸素療法は有用なものと考えられます。これらの疾患は基本的には高度救急救命センターで対応して頂く必要があります。コストパフォーマンスが悪いという理由で救急医療を先導する医療機関が撤退するのは大変矛盾した対応と思えてなりません。
 その対策として我々は高気圧酸素療法の有効性、必要性を広く社会にアピールする必要があります。その方法として学会誌に研究、症例論文を掲載する事、多施設研究を行いそのデーターを論文としてまとめること、それらの結果を厚生労働省保険局にエビデンスとして提出し、診療報酬に反映させることだと思います。勿論現在も学会執行部が行っていますが、会員全員で取り組むことが明るい将来が見える事では無いかと思います。
 今回の学会ではポスターセッションは設けず一般口演のみの方式を取らせて頂きました。ご容赦ください。特別講演はお二方に御願いしました。最初は鹿児島志学館大学教授の原口先生に鹿児島の歴史についてお話をして頂く事としました。また九州高気圧酸素療法の育ての親である八木先生にもお話して頂く事となっております。さらに、今回はこの学会の将来の提言を代表理事にお話しして頂く事としました。その他招請講演、教育講演等を幾つか用意しております。
 この時期の鹿児島は例年でありますとさわやかな秋晴れが続いている時期ですが、今年は大きな台風に2度も見舞われやっと秋らしい気候となりました。この時期は桜島の噴煙も鹿児島市方面にはあまり流れてこないのですが、噴煙は相変わらずあげています。来鹿された皆様にはいい思い出となるでしょう。また鹿児島は美味しい食物が豊富です。黒豚、黒牛、黒薩摩鶏、黒糖焼酎などです。火山の地ですから温泉も豊富です。市内の銭湯はすべて温泉です。黒シリーズを食し、温泉に浸かり、学術総会で活気ある討論を期待したいと思います。会員の皆様の御来鹿を楽しみにしております。気をつけておいでください。
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