=== 新春随筆 ===

春 も 夏 も 秋 も 冬 も

(S36.2.3生)
北区・上町支部
(南風病院)

     川井田浩一
 みなさん、こんにちは。おめでとうございます。
 もう数え36か、おじさんだな(ウソいうな!!)
 丑年生まれの川井田です。丑年とも抱負とも関係ない話をたくさん書きます。ご容赦を。
 6年前の単身赴任をしたころからの習慣で、今も夜乱読に励んでいます。
 まあ、なんでもかんでも。一部紹介します。一般にいうベストセラー書で読んだのは「国家の品格」「チーム・バチスタの栄光」「亡国のイージス」「北方水滸伝」などくらい。ミステリものや戦国時代ものはすごく食指が動くのですが、ハマると抜けられなさそうで…。あえて我慢しています。宮部みゆきや浅田次郎なんかいかにも面白そうですけどね。「チーム・バチスタの栄光」も発売後すぐ‘ピン’ときて読みましたが、「すごい」と思いました。案の定トンでもヒットになりましたね。
 今回紹介するのは、流行とはちと(だいぶ?)違う本たち。でも面白いこと請け合い。ヒマはないかもしれませんが、是非手にとってみてください。図書館にしかない本もありますので検索してみてください。また、私にご連絡くださればお貸しできるのもあります。
「復活の日」:小松左京、(ハルキ文庫)・・・言わずと知れた70年代のベストセラー。ハルキ文庫で新装になっていて、6年前偶然に手にとりました。実はそれまで、その名を知っていても読んだことはありませんでした。その中身は…ある陰謀により世界に蔓延したMM菌(ただの細菌ではないんですが、その正体、もちろんフィクションではありますが拡がり方がすごく興味深い)、ほとんどの生物は死滅、残された人類は南極に1万人だけ。どのようにして彼らは生き抜いたのか。あることをきっかけに日本人研究者吉住は残された人類のために決死の原潜での航海にでる。しかしてその結末は???う〜ん、思い出してもドキドキします。今年ももう一回読みました。これかつて映画にもなったんでしたね。草刈正雄とあの「オリビア・ハッセー」が主役だったそうです(みてません)。新型インフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)、BSE(牛海綿状脳症)に恐々とする今でこそリアルに思える内容。医学生全員に読ませたほうがよいのでは?と勝手に思っております。しかもこれが40年以上前の1964年に書かれたとは!やはり小松左京、ただ者ではないことを改めて思い知りました。もちろん、「日本沈没 上下」(小学館文庫)も改めて読むと面白いです。首都圏周辺が突然遮断されてしまった日本を描く「首都消失 上下」(徳間文庫)、日本中で数十人だけがなぜか残された世界を描く「こちらニッポン… 上下」(角川文庫)らも相当考えこんで書かれているし(当たり前!!)戦中戦後を体験した小松の哲学がよく感じられます。「SF魂」(新潮文庫)、「小松左京自伝 実存を求めて」(日本経済新聞出版社)を読むと、その哲学の背景が興味深くわかります。「SF魂」で小松左京が新婚時代に、唯一の娯楽のラジオが壊れたため、毎日新作(おそらくSF)を何枚も書いて新妻に読ませたところなんか、時代が違うとはいえ凄いことだと思いました。天才を通り越して、ある意味バケモンですな、この人は。
「祖父・小金井良精の記」:星 新一(新潮文庫)・・・高校時代、星 新一の「ショートショート」をずいぶん読みました。同世代の方々にはよくおわかりでしょう。で、彼の長編が面白かろうとは思えなかったので、読んでいませんでした。が、偶然手にとったこの一品は、大人になって読むとすごく奥が深いことに気づかされました。明治維新後、朝敵とされた長岡藩から上京し、苦学のすえ、東京帝大の初代解剖学教授となった小金井。学問の探求と帝大のありかたに苦労し、定年後も日本人の来し方を探り、没年近くまでアイヌの研究などを続けたとか。なんにせよ、当時の帝大教授は皆、死後自ら病理解剖にその身を捧げたという話もありました。森 鴎外とも縁戚になり、鴎外が(やっぱり)女にだらしなかったらしいことも。その生涯もさることながら、星 新一の父(小金井の婿)、星 一(はじめ)の話がすごく興味深かったです。続けてやはり星 新一による「人民は弱し、官吏は強し」、「明治・父・アメリカ」(新潮文庫)で星 一の生涯の一部を面白く読みました。明治中期から大正にかけて、苦学をしてNYに留学(というより押しかけ入学し)かの野口英世と同郷でNYにて交流し、金に無頓着だった野口の支援をしたとか、社会教育に熱心で後の星薬科大学を作り上げたとか、自ら社長室で危ない実験をしながら巨万の富を築き上げたとか、驚くべき話ばかり。「息子からみた父という側面を割り引いてもすごい人がいたんだ、それを知らなかったなんて」と感じさせられました。野口英世の伝記より面白くタメになるかもしれません。
「星 新一 1001話を作った人」:最相葉月、(新潮社)・・・
 その星 新一の評伝、ハードカバー590p。その長さも気にならないくらい興味深い一冊。前記で星 新一の少年期までの知識を持ってこれを読むと「なるほど、ふーん、そうだったのか」と一気読み。最相葉月の丁寧で気持ちのこもった文章づくりがまた良いです。坊ちゃんだった学生時代、いきなり星製薬の社長を継がされて、それを取り潰す羽目になった青年時代。物書きの最初はSFという言葉もないころの苦労と楽しさ。しかしその才能と時代背景から、「SFの御三家」(もちろんあとの2人は小松左京と筒井康隆ですね)と持ち上げられたゆえの苦労。60年代から続けた「ショートショート」というジャンルから抜け出せない周囲と自らの苦悩。なんと言っても、あの短い文章ならではの難しさは際立っていたはずなのに「短いので楽に書けている」かのように誤解されたための苦労と現実(原稿料は相対的に安い)もあったという。その目で「ボッコちゃん」や「ノックの音が」を読み返すとまた意味深いものです。
 また、最相葉月には現代社会の科学ニュースを星 新一の「ショートショート」と対比させながら綴った「あのころの未来 星 新一の預言」(新潮文庫)というエッセイもあります。星 新一・小松左京・手塚治虫らの通ってきた、似た時代背景と異なった人生の対比はとても興味深いものがあります。ほぼわれわれの親の世代でもあります。
「はやぶさ不死身の探査機と宇宙研の物語」:吉田 武、(幻冬社新書)・・・2005年11月に世界で初めて小惑星に着陸(タッチダウン)した小惑星探査機「はやぶさ」。その誕生打ち上げからタッチダウン(もちろん映像はなくデータから解析)をわかりやすく解説してあります。(この「はやぶさ」世紀のタッチダウンもリアルタイムで見損なった、痛恨。本書で知りました。)その歴史的偉業の意義と、とりまく人々の模様、そしてなんと言ってもそれを培ってきた「宇宙研」(JAXA宇宙科学研究本部)の生い立ちが面白い。なんとなく聞いたことはあったが、いわゆる「糸川研」のペンシルロケットに始まり、カッパ(小学生時代はコレでした)ラムダ、ミューのロケットと初の人工衛星「おおすみ」らを育ててきた歴史を要約的ながら初めて通してみかえした。最近特に、日本は将来とも工学・理学で立て直さなきゃいかんのでは?と考えている矢先だったので、「なるほど、ふんふん」と読みました。続けて「やんちゃな独創糸川英夫伝」:的川泰宣、(日刊工業新聞社)、「逆転の翼 ペンシルロケット物語」(新日本出版社)も読みました。糸川英夫っちゅう人もとんでもない人だったようです。私より少し上の世代の方々は、もっと同時代的にお馴染みの方だったのでしょうか。ロケットも全く何もないところから、まだ戦後混乱期とも言える1955年に始め、独自の固体燃料ロケットで世界4カ国目となる自前の人工衛星打ち上げの基盤を作り(自身はこの1年くらい前に辞めています…政治的な絡みらしい)、「おおすみ」成功時はアラブの砂漠を走るタクシーの中のラジオで一報を聞き、人知れず涙されたとか。システム工学とやらを全く一人で始めたり、45年かかってバイオリンを作り上げたり。何か星 一とある意味通じたところを持つ、特別「変な」人だったように感じました。ちなみに「はやぶさ」は様々な苦難を乗り越えて今も地球を目指して宇宙を旅しています。2010年にはその雄姿をわれわれに見せてくれるのでしょうか?「宇宙研」のHPでは毎週「はやぶさ」の様子がアップされています。よろしければ一読を。
「宇宙へのパスポート」:笹本祐一、(朝日ソノラマ)・・・知る人ぞ知るロケットおたくのSF作家笹本、科学ジャーナリスト松浦晋也とその仲間たちがロケット打ち上げの感動を求めて日本を世界を駆け回ります。無論、ほとんど自腹で、車やレンタカー、フェリーを駆使し、民宿や安旅館や時に体育館に泊まりながら。世界最高の固体燃料ロケット(今は無き)M(ミュー)ロケットを追いかけて北海道から内之浦まで、H2Aを追いかけて、種子島まで何回も。はたまた、スペースシャトルを追いかけてヒューストンへ、アリアンを見にアフリカは仏領ギアナまで。ESA(欧州宇宙機関)の接待で腹一杯になって感動しているところが笑えます。また、キューブサット(後述)を追いかけてロシアはプレセツクまで。モスクワの街をフラフラしていて、偶然にセルゲイ・コロリョフの家に遭遇するところが泣けます。「日本のマスコミは打ち上げの取材をするのにも極めて不勉強で、しかも『大新聞主義』を振りかざす。アホだ(大名取材旅行で来ているくせに)。何かというと『この失敗(または延期)の損害はいくらか?』しか聞かない」というくだりはまさに至言。この国の現在と将来のあり方を考えさせられます。1・2・3巻あるのですが、最近朝日新聞社出版から新装になった模様。それなりに評価され需要もあるのでしょう。読み出したら止まりません。自分で打ち上げを見たくなること請け合い。禁断の書かもしれません。だって県内でロケット打ち上げがあるなんて鹿児島だけでしょう。世界でも10数箇所しかないはずです。かくいう私もまだナマで打ち上げを見たことないのです。市立科学館でのパブリックビューイングは一度見たのですが。今度スケジュールが合ったら西之表の田○病院に呼んでくれないかなぁ。行きたいなぁ。そして、ごく最近出た「昭和のロケット屋さん ロケットまつり@ロフトプラスワン」:語り・林 紀幸、恒見恒男、聞き手・松浦晋也、笹本祐一、あさりよしとお、(エクスナレッジ)が笑えます。トンでも事件がしょっちゅうあった手作りロケット時代から、糸川英夫博士の裏話まで、「ホントにそこまで言っていいのか?」と心配になるようなことも。これ何部売れたのでしょうか。ビックリDVDも付いています。今でないと買えないかもしれません。そして興味を持たれたら、「月をめざした二人の科学者 アポロとスプートニクの軌跡」:的川泰宣、(中公新書)も是非読んでみてください。かの有名なV−U、サターン5型を作り上げたドイツ→アメリカのウェルナー・フォン・ブラウンに対して、死後までその名前を知られることもなかった、ソ連の宇宙開発のリーダーのセルゲイ・コロリョフの歩み。特にコロリョフは殆どの方がご存知ないでしょう。私も知りませんでした。しかし、月到達以外ではソ連の方がアメリカをリードしていたのです。今でも、ロシアの技術力は侮れません。これも目からウロコです。
「キューブサット物語 超小型手作り衛星、宇宙へ」:川島レイ(エクスナレッジ)・・・東大中須賀研究室と東工大松永研究室の学生と大学院生が造ることになった10cm立方の小さな『キューブサット』は本当に宇宙へ行けるのか?最近でこそ公募もされるようになった相乗り型の小型人工衛星の先駆け。そこにはペンシルロケット時代にも似たドラマがあった。(「中島みゆき・地上の星」をBGMに読みましょう)何年もかかって考え造り、実験して造り上げた衛星を、幾多のメンバーが代わる代わる(研究室なのである者は卒業し、ある者は否応なくそれに巻き込まれ、自分も成長していく)産み育てた。果たしてその結果とは?その衛星がロシアの打ち上げ基地プレセツクに旅立つ時、成田でプロマネ(プロジェクト・マネージャ=大学院生)は「娘を嫁に出す父親の心境のよう」だったという。「上がれ!空き缶衛星」:川島レイ、(新潮社)はこれの前身、コーラ缶の大きさにシステムを苦労して詰め込み、作動させ打ち上げたやはり東大・東工大の学生たちの物語。「キューブサット物語」の前に読んでおくとまた、泣けます(県立図書館にあります)。ちなみにこの衛星は宇宙には行っていません。打ち上げ、作動を確かめて回収するという国産ロケット手探り時代と同じ目的で造られたためです。彼らの一部と後輩がキューブサットを作り、卒業してH2Aやその先のロケット、衛星を造ろうとしているんです。日本の若者もまだまだ立派なものです。
「ロケットボーイズ 1・2」:ホーマー・ヒッカム・ジュニア、(草思社)・・・SF、宇宙、ロケットに随分はまっています。やればまだまだ出てきますけど。この本は、アメリカ50年代後半のスプートニク・ショックという時代背景と寂れつつある炭鉱町という社会背景の中で、普通の高校生たちが、全国高校生科学コンクールの優勝を目指して手作りロケットを作り上げるという実話を背景にしたフィクション。ノンフィクションではないけれど、アメリカらしい、無口で頑固だが炭鉱夫から信頼されている父、優しいが芯が通っていて強い母、アメフトのスターだが挫折する兄、優しい科学の女性教師、いろいろな性格の友達やガールフレンドといった映画を彷彿とさせる青春物語。そして最後は…、ロケットの神様といっていいウェルナー・フォン・ブラウンと会うことになるといった出来過ぎの感がありますが、変な映画よりこの本のほうがずっと面白い(実際に映画化されたらしいけど、映画としてはいまいちだったらしい)。一方、「ローバー、火星を駆ける 僕らがスピリットとオポチュニティに託した夢」:スティーブ・スクワイヤーズ、(早川書房)は2004年に実際に火星に着陸して、火星を走り回った「スピリット」と「オポチュニティー」の2台のローバー(自律型探査車)の開発物語。こっちは「キューブサット」とまた違った趣で盛り上がります。ただ、結末(成功した)を知っているので。しかし、彼我の宇宙探査・工学への国の取り組みの違いなどはある意味よく知れるといってよい一冊。コーネル大学の研究者である著者の火星探査の構想が採用されるや、様々なポジションの仲間を引き込んでプロジェクトを成功させるという組織横断型のプロジェクトXタイプの話。日本ではなかなかこうはいかないでしょう。それぞれに頑張ってはいるのですが。

 う〜ん、コレだけでほぼ6000字。
 この3倍くらい書けそうですが、「今日はこれくらいにしといてやるか(バキバキ!!)」いつか続編書いてもいいですか?




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