鹿市医郷壇

兼題「服(ふっ)」


(461) 樋口 一風 選




 清滝支部 鮫島爺児医

   高価け服が帽子じゃ靴じゃち小言を言っ
  (たけふっが ぼしじゃくつじゃち ぐぜをゆっ)
(唱)廉しとじゃ駄目ち買た一揃い
  (やしとじゃぼっち こたいちそろい)

 気にいったブランドの高級な服を買ったはいいが、この服に合う帽子や靴やネクタイがないことに気づきました。コーディネートするには、かなり金を食います。おしゃれも大変です。
 この句のポイントは「高価け服が、小言を言っ」と、服を擬人化していることです。
 ご存知でしょうが、川柳や薩摩郷句は人間を詠みますので、人間不在の時は、それを人間のようにして詠みます、それを擬人化と言います。




 城山古狸庵

   白衣をば見れば血圧ちゃ高こけなっ
  (はくいをば みればけつあちゃ たこけなっ)
(唱)美人の女医い鼓動た心臓
  (しゃんのせんせい とためたしんぞ)

 白衣を見ただけで血圧は上がるそうです。院長回診となると、白衣のお医者さんや看護師さん達に取り巻かれると血圧は上がりっぱなしです。
 白衣だけでそうなのに、美人の女医さんなら血管は破裂しそうです。医郷壇らしい句が出来ました。




 上町支部 吉野なでしこ

   同し服く美人が着ちょれば高価こ見えっ
  (おなしふく しゃんがきちょれば たこみえっ)
(唱)容姿じゃ負けてんセンスで勝負
  (よしじゃまけてん せんすでしょうぶ)

 電車に自分と同じ柄の服の人と乗り合わせて、ばつの悪い思いをしたことがあります。お互いの服の値段を知っていますので困ります。昔は誂えの服で一点物でしたので、同じ物は少なかったのですが、最近は既製品が多く、句の様な状態になることもありそうです。
 でも、自分より容姿の劣る人?が同じ服を着ているのも嫌なものでしょう。
 やはり自分より綺麗な人に着ていてもらいたいものです。



 五客一席 紫南支部 二軒茶屋電停

   寒み寒みち重ね着をしっ雪だるま
  (さみさみち かさねぎをしっ ゆっだるま)
(唱)ひっ転だぎい起いも出来じ
  (ひっころだぎい おきいもならじ)


 五客二席 川内つばめ

   狭か家い懐かし服が場所を取っ
  (せまかえい なっかしふっが ばしょをとっ)
(唱)思い出が有っうっ捨もならじ
  (おもいでがあっ うっせもならじ)


 五客三席 霧島 木林
   
   高け服くば買えち学校い堪さん親
  (たけふくば こえちがっこい のさんおや)
(唱)ブランドん品ね決むち校長
  (ぶらんどんしね きむちこうちょう)


 五客四席 醤油屋孫一

   お洒落言っ流行った服も今じゃ野暮
  (おしゃれちゅっ はやったふっも いまじゃやぼ)
(唱)一度着た限い箪笥ん肥料
  (いっどきたぎい たんすんこやし)


 五客五席 印南 本作

   子供服一年持たじ財布あ騒動
  (こどんふっ いんえんもたじ ふぞあそど)
(唱)ぶかぶかじゃれば可哀想しか思もっ
  (ぶかぶかじゃれば ぐらしかともっ)



 秀  逸

 城山古狸庵
   合食と似た服じゃっで着らん言っ
  (がっしょっと にたふっじゃっで きらんちゅっ)
   詰襟のMがまぶしか医学生
  (つめえいの えむがまぶしか いがっせい)
   昼寝いな一番着易しアッパッパ
  (ひんねいな いっばんきやし あっぱっぱ)

 清滝支部 鮫島爺児医
   良か服のボタンが開ちょっ恥ね爺
  (よかふっの ぼたんがえちょっ げんねじじ)
   新け服くば態っ破って流行い言っ
  (にけふくば わざっやぶって はやいちゅっ)
   服か無して着物で通た戦時中
  (ふかのして きもんでかよた せんじちゅう)
   軍服が似合た爺様も今遺影
  (ぶんぷっが におたじさまも いまいえい)
   似た服も出店変われば値が跳ねっ
  (にたふっも でみせかわれば ねがはねっ)
   季節が変わっ服も変わって気も変わっ
  (きがかわっ ふっもかわって きもかわっ)

 上町支部 吉野なでしこ
   似合もせんブランド服くば買集めっ
  (におもせん ぶらんどふくば こあっめっ)
   流行服き鏡の前で背を伸べっ
  (はやいふき かがんのまえで せをのべっ)

 川内つばめ
   高価け服も尻が入らんじ無駄いなっ
  (たけふっも しいがいらんじ むだいなっ)
   爺の服くば孫が喜っ着て歩っ
  (じのふくば まごがよろくっ きてさるっ)
   寒か奴季節外れい厚か服
  (さんかごろ きせつはずれい あっかふっ)

 霧島 木林
   気い入った服く諦めた大か五体
  (きいった ふくあきらめた ふとかごて)
   私服よか仕事着せえな気を遣っ
  (しふっよか しごっぎせえな きをつこっ)
   特売日良か服探し店巡い
  (とくばいび よかふっさがし みせめぐい)

 印南 本作
   良か服くば威張っ着ちょいが悪いか根性
  (よかふくば いばっきちょいが わいかねす)

 醤油屋孫一
   歳すばとっ流行いの服きも疎とけなっ
  (とすばとっ はやいのふきも うけとなっ)
   カシミヤち白熊んよな容姿しけなっ
  (かしみやち しろくまんよな よしけなっ)
   着ろ思もて見えた値札いそっ戻でっ
  (きろともて みえたねふだい そっもでっ)


兼題について
 今月の句に、「ついてこいあのときばかり今服従」という句がありました。下の句の「服従」の「服」は意味が違います。兼題の「服」は着る服のことです。兼題の意味を理解して、句を作ってください。郷句に、読み込みという形式があります。その時は意味は違っても「服」の字が付けばよいです。一風

薩 摩 郷 句 募 集

◎6 号
題 吟 「 下手(へた)」
締 切 平成30年5月7日(月)
◎7 号
題 吟 「 計算(さんにょ)」
締 切 平成30年6月5日(火)
◇選 者 樋口 一風
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


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