[設立70周年記念特集]
新制鹿児島市医師会設立70周年記念によせて
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鹿児島市医師会は昨年11月に設立70周年を迎えました。医師会の今日の隆盛は歴代の会長並びに執行部の先生方をはじめ,諸先輩及び会員の先生方のご尽力によるものであり,心より敬意を表します。この度,鹿児島市医報の「70周年記念特集コーナー」に歴代の議長にも寄稿依頼がございましたので,私の医師会歴の中で記憶に残る出来事等について,思いつくままに筆を執らせていただきました。
顧みますと,私は昭和53年に鹿児島市医師会に入会以来,約40年を経過しておりますが,平成20年までの約30年間は紫南支部で勉強させていただきました。その後は谷山支部へ異動しておりますが,これまでに医療連携や様々な医師会活動の中で多くの先生方にお世話になってまいりました。
私が入会しました紫南支部には,尾辻達意先生,鮫島耕一郎先生,太原春雄先生という医師会の重鎮である先生がおられ,支部会や医師会の行事等ではいろいろと厳しいご指導をいただいておりました。当時の紫南支部の会員数は30人位であったと記憶しておりますが,支部会では出席率も高く,和気藹々とした家族的な雰囲気の支部でありました。やがて,医師会病院をはじめ新規開設の医療機関が増加し,会員数は100人以上の大規模な支部になり,今日に至っております。
特に記憶に残る出来事には,平成5年8月6日に鹿児島市を襲った集中豪雨,8.6水害がありました。甚大な災害となり甲突川流域の会員の方々は大変な被害を受けられておりました。当時の私は支部長と救急医療の委員を担っており,何回も災害救助訓練に参加しておりましたが,現実の大災害では何一つ救援活動ができなかったことの無念さを思い出します。
医師会では医療政策上の意見を具申していくために,医師会とは別の組織体ではありますが,日本医師連盟による医政活動が行なわれてきました。鹿児島県では衆議院議員総選挙における奄美群島区の保岡氏と徳田氏の闘いは保徳戦争と呼ばれ,激しい選挙戦が繰り返されておりました。平成4年より奄美群島区は鹿児島県第1区に編入されましたので,鹿児島市が主戦場に変わってしまいました。私は医師連盟の支部執行委員になっておりましたので,選挙の度に医師連盟や当時の県医師会長の指示により選挙応援に出ておりました。その後,徳田氏は自民党に入党することになりましたが,現在になっても鹿児島市医師会には選挙戦の影響が尾を引いております。
平成16年度になり,鹿児島市医師会では海江田 健会長から林 茂文会長へと引き継がれ,同年7月の第186回定時代議員会において,代議員会議長の尾辻清彦先生は任期満了で退任されることになりました。当時,私は代議員に任命されておりましたが,議長に私が推薦されましたので,止むを得ずお引き受けした次第でありました。議長の任期中において最も記憶に残っておりますことは,平成17年2月の臨時代議員会及び3月の定時代議員会のことでありました。当時の医師会共同利用施設の運営は厳しい状況になっており,鹿児島市医師会訪問看護ステーション,鹿児島市在宅介護支援センター,指定居宅介護支援センターの所謂居宅ケア3部門の廃止に関する議案と,協議事項として鹿児島市医師会看護専門学校の方針についての議事が挙げられておりました。この議案については執行部に手続き上の問題があり,審議は執行部への責任追及となり,私の稚拙な議事進行もあって審議は夜遅くまで紛糾し,大変ご迷惑をおかけしておりました。この問題に関しては,医療情勢の変化により全国的に医師会の共同利用施設の運営は困難となっていた背景がありました。いずれにせよ,全ての委員が医師会運営の将来を懸念しての事であったものと理解しております。現在の医師会病院と臨床検査センターについては今後の地域医療を支えていくためにも可能な限り継続していきたいものであります。平成20年6月,私の一身上の都合で谷山支部に異動することになり,第195回定時代議員会において議長を横峯佑爾先生に引き継いでいただくことになりました。
ご承知の如く,我が国では国民皆保険制度の普及と医療及び経済の発展もあり,今では世界一の長寿国となりました。同時に世界に類を見ないスピードで少子高齢化が進み,高齢化率も27%を超え,世界一の超高齢社会になっております。最近の社会保障給付費は約120兆円にもなり,そのうち医療費は約40兆円,介護費も10兆円に達しています。一般会計歳出97兆円のうち社会保障費の一般会計拠出金は約32兆円となっており,今後の2025年問題により高齢化の影響は益々深刻になっていくことが予想されます。更に医療の進歩による高額な薬剤費や治療費の増加に伴う財源をどのように賄っていくのか,我々医療界にとっても避けて通れない問題となっております。既に厚生労働省は,2025年を目途に「地域包括ケアシステムの構築」を推進し,医療界においては「地域医療構想」実現のために「地域医療調整会議」の具体的論議を策定するとしております。また,平成30年度からは第7次医療計画と第7期介護保険事業計画もスタートいたします。
我々医療界は大きな分岐点に差し掛かっており,今後の厳しい社会環境の中で,持続可能な医療保険制度と地域医療を構築していくためには,会員の結束を図り,医師会の主導的役割が不可欠であろうと思います。
最後になりますが,鹿児島市医師会の設立70周年の節目にあたり,今後も医師会の益々の発展と会員の先生方のご健勝とご活躍をご祈念申し上げます。

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