=== 年頭のあいさつ ===

年 頭 の ご 挨 拶
会  長

     猪鹿倉 忠 彦

  新年明けましておめでとうございます。
 会員の皆様方におかれましては,ご家族はじめ医療施設の職員の方々ともども,晴れやかなお気持ちで,新しい年をお迎えのことと,お喜び申し上げます。
 本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。

 熊本地震から早くも2年近くが経とうとしておりますが,その復興はまだまだ不完全と伺っており,一日も早い完全復興を祈るばかりです。昨年は,鹿児島市(県)は台風や大雨など少なからず大難を逃れえたようですが,ヒヤッとした震度5に至る錦江湾の直下地震,異常な蒸し暑さと長雨続き,また,季節外れの大型台風の接近や新燃岳の再活動など,自然の驚異はいつも身近にあると感じざるをえませんでした。大規模災害への対策は今後も大きな課題ですが,災害時における救護活動や物資供給だけではなく,特に災害直後に地域医療を一刻も早く安定させるための医師会業務の継続性という観点から,我々鹿児島市医師会を含む九州首市医師会間で一昨年締結した「災害時の相互支援に関する協定」のように,地域内に限らず県内あるいは近隣県や九州域をも含めた広域での正確で迅速な情報の共有と,各郡市医師会業務の支援体制の構築が必須と思われます。

 さて,日本は全国的に少子高齢化が進んでおりますが,鹿児島市も例外ではございません。人口は60万人で2005年頃からほぼ横ばい状態(正確には2017年は,60万人をわずかに下回った)ですが,将来に向けた人口流出の歯止めと若手世代の育成を,高齢化対策とともに市政策も重点化に位置付けております。
 一方,鹿児島市医師会は,昨年11月に晴れて70周年を迎えました。その節は,多くの会員先生方にも同祝賀会にご参列賜り盛大に挙行できましたこと,改めて感謝御礼申し上げます。当医師会は,年々その規模が大きくなり,昨年9月には1,500人の大台を超え,その後も増え続けております。医療施設は550を数え,九州中では福岡市に次ぐ2番目に大きい医師会へと成長しております。さらに大きさだけではなく,医師会への入会率は常に97%以上で,九州はもちろん,全国でもトップに位置します。地域医療に対し,医師会という専門家集団で臨むことの意義と重要性を,各々が熟知し実行していることの現れであると,心強くそして気高い心意気を感じる次第です。

 さて,小生が鹿児島市医師会会長を拝命した3期目も,早くも残り半年弱で任期満了となります。厳しい医療情勢が続く中,総じて慌ただしくも怒涛の如くこの3期目後半が経過しようとしております。
 その過程で,共同利用施設の安定化は全国的にも医師会の共通の問題と思われますが,鹿児島市医師会でも,医師会病院ならびに臨床検査センターの安定化は,同じく喫緊の課題です。詳しくは昨年の各医師会報をご覧いただきたいと存じますが,医師会病院に関しては,運営安定化のために院内のさらなる効率化をはかり,取り組んでまいりました。総じて,ようやく幾分なりとも上方軌道へと向かいつつありますが,なかなかシミュレーション通りとはいかないのが現状です。しかし,職員も必死になって現場の部署から様々な改善策を提示し,その取り組みを強化しております。さらに全役職員が一丸となって粛々と臨まねばなりません。会員の先生方のさらなるご理解とご協力を重ね重ねお願い申し上げます。一方,検査センターの運営の安定化も大きな課題ですが,会員のための施設として5年後も10年後も,民間企業との競合の中,安定して継続させ続けるため,様々な検討を行い取り組みました。結果,SRLに集配及び検査業務を委託する運びとなりました。車で例えれば,ナンバープレートとボディ,そして運転手は医師会,エンジンとタイヤがSRLという感じです。医師会検査センターとしてのスピード・精度・サービス(3S)を堅持しつつ,確実な収支改善に至っております。今後も,今まで以上に,特に3Sに関して,要望やクレームなど何なりと申しつけていただき,会員のための検査センターとして,さらに強化・充実してまいらねばならないと思います。

 一方,在宅医会の拡充と地域包括ケアシステムの構築の進捗,そして,一昨年の地域医療構想策定を踏まえ,鹿児島保健医療圏でも調整会議が始まりました。地域医療構想は,ご存知のごとく,病床機能を4つの区分(高度急性期から慢性期)に分類して将来推計が行われるわけですが,これは県民の地域医療の将来のニーズを統計的な客観的データにより見通したもので,それにより進むべき一定の方向性を示した指針・目安であります。すなわち,既存の病床の増減を図るのが目的ではなく,高度急性期から慢性期に至るまで,患者の状態に応じた適切な医療を切れ目なく提供するために不足している医療機能を,将来においていかにして充実また補完させていくかという視点が重要であります。我々の鹿児島保健医療圏では,その調整会議の中に独自に3つの専門部会(高度急性期・急性期,回復期,慢性期・在宅)を立ち上げ,現場の状況と意見の集約に臨んでおります。公的病院の2025策定プランとのすり合わせや,市町村との在宅介護事業等をふまえた協議体制など,さらに広範で複雑化していく模様ですが,全県下の医療の行方と将来の安定化も鑑みねばなりません。鹿児島保健医療圏は県内の他の医療圏と人口動態はもちろん医療資源そのものが大きく異なり,一極集中という特殊な状況にあります。それ故にそれらの観点から,我々の鹿児島保健医療圏は,全県下の医療を支えカバーする重要な立場にあることを念頭に置かねばならないと思われ,今後は行政はじめ県下の各圏域とさらに連携協力して臨む姿勢を強化する必要があると思います。

 また,施行されて2年になる医療事故調査制度は,今後も注視すべきテーマであると思います。本来,医療事故の再発を防止するための制度であり,医療訴訟とは無縁のものであるはずですが,依然その混同の危険性が指摘されております。医療訴訟に利用されないようにするためには,まず制度の正しい理解と運用のために,地域の医師会員へ十分に啓発していくことが大切であると思われます。鹿児島市医師会としては,会員への同制度の正しいアナウンスを目的としたサポートセンターの設置をはじめ,昨年1年かけて,種々のテーマに沿った研修会を多数企画してまいりました。特に研修会は毎回,多くの参加者が来場し,医療従事者の興味の深さが汲み取られましたが,次年度も鋭意継続してまいりたいと思います。

 ところで,来年度は診療報酬と介護報酬の同時改定で幕開けし,同時に第7次医療計画と第7期介護計画がはじまります。また,再来年にはいよいよ消費税の10%増税がなされ,その利用法の変更等が議論されています。医療界は2000年頃から一つの大きな転換期にさしかかり,昨今は非常に厳しい医療情勢となっています。我々は今から未曽有の超高齢社会に臨んでいくわけですが,その初めのハードルとしての「2025年」を目指して,息継ぎすることなく残る7年間に挑まねばなりません。2025年には鹿児島市の,いえ鹿児島県の,さらに日本の医療はどうなっているのでしょうか? 鹿児島市医師会としましては,「会員のための医師会としてどうあるべきか,どうあるのが会員のためにベストか」という理念の下,会員のための医師会として,そして鹿児島市の地域医療のための医師会として,恥ずることのなきよう誠心誠意臨み,会員の地域医療を支え守るべく,後世へ確実に繋げて参らねばならないと思う次第です。そしてさらに,鹿児島県の医療の充実安定化には,その半分を担う鹿児島市の地域医療の活性化が必須であり,それは得てして,鹿児島県の医療,県民の医療を支えることにもなります。そのためには,鹿児島市医師会が,県医師会そして各郡市医師会とも情報を交換・共有し,また多方面の動向をしっかりと見据えながら,地域医療での力強い専門家集団として発展していくことが必要です。会員増強と若手の育成はもちろん,内面だけに限らず行政や関係諸機関とのさらなる連携はじめ,様々な角度や方面から,鹿児島市の地域医療を活性化し,県の医療を支えていくことにも,さらに大きな力を注いでいかねばならないと思います。

 年始にあたり,医師会と地域医療の発展,そして皆様方におかれましても,さらに活力のある充実した年でありますことを祈念いたします。
 本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。



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