[緑陰随筆特集]
臨床検査に係る J C C L S 共用基準範囲導入の必要性について
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盛夏の候,鹿児島市医師会の先生方におかれましては,ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。また,日頃から鹿児島県臨床検査技師会の運営に際しまして,心温かいご理解とご支援を賜り心から感謝申し上げます。
さて臨床検査において結果解析における重要な指標として,以前は「正常値」や「参考値」が使われておりましたが,現在は「基準範囲」が主流にて使われております。
基準範囲は臨床検査値の結果解釈や判断を行う上での目安(ものさし)として重要な役割を果たしています。しかしこの基準範囲は,母集団が明確でなかったり,健常者データの変動要因情報が不足していたり,施設ごとに設定していたりと,いまだに施設間差があります。このような現状をふまえ,日本臨床検査標準協議会(JCCLS)から共用基準範囲が発表されました。
鹿児島県臨床検査技師会においても,一般的に測定される検体検査項目に対する共用可能な基準範囲を設定するための多施設共同研究への要望が高まってきています。
この状況を改善する為,鹿児島県医師会臨床検査精度管理委員会では,平成27年度より推奨基準範囲を共用基準範囲に変更,導入するよう呼びかけを行っています。
改めて説明しますと,基準範囲とは「基準母集団から得られる値の分布の特定範囲で,一般的には基準値分布中央の95%の範囲」であり,臨床診断値とは病態を識別するためのカットオフ値や治療目標値,あるいは健診等で用いられる予防医学的な観点で設定された判断値です。
では,なぜ,全国で共用できる基準範囲が必要なのか?
検査結果はその患者の医学情報として診断し,治療方針,治療効果判定に利用されております。一方,施設の機能分化が進み各専門医療機関に分散され病態によっては患者も移動し診察いたします。これらを考慮し判断する「ものさし」が統一化されなければ,結果が同じでも臨床診断は施設によって違うものになる可能性があります。
さて,この共用基準範囲を利用するにあたって,各医療機関の検査室が外部精度管理として日本医師会・日本臨床衛生検査技師会・鹿児島県医師会・鹿児島県臨床検査技師会など,毎年実施している精度管理調査に参加しその測定値に偏りない「良好」の成績を得ていることが条件となります。また,採用時の注意点として共用基準範囲と臨床判断値の使い分けを明確にすることが重要であり,それに対して検査技師は詳細に説明する義務があります。さらには共用基準範囲の普及のために30の医療団体,学会から賛同を得ており,さらに,鹿児島県医師会からも推奨のお言葉をいただいております。これらを踏まえ鹿児島県臨床検査技師会は啓発活動に力を入れております。我々は精度の高い結果と,この共用基準範囲を提供・広報する業務は臨床検査技師の責務である事を再認識し日々の検査業務に邁進いたします。
参考資料として共用基準範囲一覧表を掲示いたしますのでご参照のほどよろしくお願いいたします。
最後に鹿児島県臨床検査技師会は,鹿児島市医師会の先生方の診療支援チームの一員としてしっかりと職責を果たせる臨床検査技師育成の土台となり牽引となるような活動を行う所存であります。今後ともご指導ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。


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