[緑陰随筆特集]

熊本地震支援活動に見た「絆」

公益社団法人鹿児島県栄養士会 理事 児玉 敬三

 昨年(2016年)4月14日,16日に発生した熊本地震では多くの方々が甚大な被害を受けられ,懸命な復興活動にもかかわらず今なお不自由な生活を余儀なくされておられます。被災されたすべての皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに一日も早い復興を祈念申し上げます。

〇栄養士会の活動
 さて,(公社)鹿児島県栄養士会(以下,本会)では,本会理事会にて「平成28年熊本地震」被災者支援対策本部を設置し,その直後に(公社)日本栄養士会の災害支援医療緊急車両(JDA-DAT 河村号)を志布志港経由で熊本へ移送するところから具体的な支援活動を開始しました。
 そして,4月22日から5月27日までの約1カ月間に延べ95人の本会会員が避難所での支援活動(授乳婦や誤嚥の可能性のある高齢者への声掛け指導等)を行いました。
 益城町では,慢性腎臓病から透析移行期にある避難者の摂取栄養量および栄養状態について意見交換をした後,本人の指導に関わったことで,対象者の安心感を得て,体調悪化を防止することができました。さらに,宇土市においては,鹿児島県医師会JMATに同行し,糖尿病患者への支援食糧の食べ方の工夫や施設運営に携わる市職員への栄養相談を実践しました。

 災害支援医療緊急車両(JDA-DAT 河村号)とは,キッチンボックスを
搭載した車両(キッチンカー)です。平時は,各都道府県栄養士会での
JDA-DAT活動に利用し,災害時には,JDA-DAT災害支援医療緊急
車両として活動します。


〇「協働」と絆
全国から参加した管理栄養士との
活動前ミーティング(益城町)

災害支援物資の仕分け作業
(益城町)

 活動を通して,「栄養・食事」は,被災者のみならず支援する方々も含めたすべての人々のいのちを守り,生活を支え守る基であると実感すると共に,最悪の条件の中での肉体的な痛み,精神的な痛み,社会的な痛みから人々を守ろうとする多くの災害支援者との「協働」を体験することができました。
 そして,本会の活動においては,短期間で人員をそろえ,支援活動の要請に応えることができたのは,諸先輩方と若い会員との,日頃の活動で育まれた強い信頼関係がベースにあったからこそであり,その絆こそが本会の宝であると感じることができました。

〇絆の深化
 本会活動においては,日帰り支援の危険性や情報共有体制の脆弱性,支援者への精神面でのフォロー不足等,今後の課題も少なくはありませんでしたが,“一人の管理栄養士・栄養士”として,時代・社会の要請に「ハイ!」と応え,会員同士の“絆と信頼”を基として,専門能力を磨き,人間力を育み,愛深き管理栄養士・栄養士の集団に深化成長できる可能性を確信できました。
 今後は,さらに多くの関係諸機関と連携し,協働力の強化に向けて訓練して参ります。そして,「絆」とは最も深いところで人と人を繋ぎ,人と自然をも繋ぐ大きな力であることを仲間と共有し続けて参ります。





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