鹿市医郷壇

兼題「後悔(くけ)」


(447) 樋口 一風 選




清滝支部 鮫島爺児医

長ご生きた娑婆にゃ感謝で後悔は無し
(長ご生きた 娑婆にゃ感謝で 後悔はのし)

(唱)すっ事ちゃ全部したでち悟っ
(唱)(すっこちゃずるっ したでちさとっ)

 石原裕次郎の「我が人生に悔いはなし」という歌を、思い出しました。前向きに生きてこられた証でしょう。人生にやり残したことは無いので、ただ感謝の気持ちだけで、すばらしい生き方です。そのような生き方をしたいものです。薩摩郷句は滑稽や批判など人をちゃかしたような印象がありますが、この句のように真面目な句もあるのです。




紫南支部 二軒茶屋電停

夫婦喧嘩すい度び後悔ん眼鏡違げ
(みとげんか すいたび後悔ん 眼鏡ちげ)

(唱)人を見い目が無かった思もっ
(唱)(人を見い目が 無かったともっ)

 この句は前の句と違い、すこし後悔でしょう。結婚するまでは、おとなしく従順な女性だと信じていた、自分の眼鏡違いが悔やまれます。眼鏡違いはお互い様です。夫婦です、話せばわかりますよ。




 城山古狸庵

上手じならじ後悔ばっかいの呆えゴルフ
(じょじならじ 後悔ばっかいの ぼえゴルフ)

(唱)ああじゃこうじゃちまた悩ん出っ
(唱)(ああじゃこうじゃち また悩ん出っ)

 昔の自分を思い出しましたのでいただきました。原句は「呆えゴルフ後悔ばっかいじゃ上手ないめ」でした。もちろんこのままでも良い句ですが、惜しむらくは、もう少し推敲が不足でした。
 上下を入れ替えただけで、下五の座りが良くなります。作りっ放しじゃなくて、もう少し推敲をしてみましょう。


五客一席 上町支部 吉野なでしこ

ちょっしもたまたも寝過ぎっ間け合わじ
(ちょっしもた またもねすぎっ かけ合わじ)

(唱)後悔ばっかいで呆え生魂
(唱)(後悔ばっかいで ぼえいっだまし)


五客二席 川内つばめ

青春な後悔ばっかいの我が一生
(青春な 後悔ばっかいの わがいっで)

(唱)そん頃ら其いが良かち思もちょっ
(唱)(そんこらそいが よかちおもちょっ)


五客三席 清滝支部 鮫島爺児医

売ったなあ直き上がった株い後悔
(売ったなあ いっき上がった かぶい後悔)

(唱)本当っじゃっ短気は損気
(唱)(ほんのこっじゃっ 短気は損気)


五客四席 城山古狸庵

停年ずい平社員じゃち後悔をしっ
(てねんずい 平社員じゃち 後悔をしっ)

(唱)てげてげ仕事つしちょった証拠
(唱)(てげてげしごつ しちょった証拠)


五客五席 清滝支部 鮫島爺児医

切符をば切られっ後悔ん飛ばし過ぎ
(切符をば 切られっ後悔ん 飛ばし過ぎ)

(唱)直き凹しゃっルンルン気分
(唱)(いっきべっしゃっ ルンルン気分)


秀  逸

清滝支部 鮫島爺児医

出掛け前じっくい診らじ後悔をしっ
(出掛け前 じっくいみらじ 後悔をしっ)

済んでから後悔ばっかいで気が滅入っ
(すんでから 後悔ばっかいで 気がめいっ)

好っじゃっち言わんかったや嫁め行たっ
(すっじゃっち ゆわんかったや よめじたっ)

打っ前い後悔をせんごっ素振ゆしっ
(打っ前い 後悔をせんごっ すぶゆしっ)


 城山古狸庵

勝手てしっ子が出来っから後悔をしっ
(かってしっ 子がでけっから 後悔をしっ)


上町支部 吉野なでしこ

堪さんこっ後悔ばっかいの亭主ん愚痴
(のさんこっ 後悔ばっかいの ととんぐぜ)


 川内つばめ

人生を後悔をば肥料し強よ生きっ
(じんせいを 後悔をばこやし つよ生きっ)

厄払い沢山使こてん後悔あせじ
(やっばれい いっぺつこてん 後悔あせじ)

取消せじ滑った口が後悔をしっ
(といけせじ 滑ったくっが 後悔をしっ)


今月の投句から
 後悔(くけ)と愚痴(ぐぜ)を同一と勘違いされたのではないかと思われる句で、「後悔(くけ)を聞っ」がありました。兼題の意味を理解して、句を作りましょう。


薩摩郷句鑑賞 100

鬼どんも落花生拾るい畳み這っ
(おんどんも だっきしょひるい たたみほっ)
            枦山りんどう

 鹿児島では節分の事を節替わい(せっがわい)と言った。この日独特の料理を食べたり、厄年の人は、四辻にお金を撒いたりするものだった。それを拾った人が、厄を分けて負ってくれるという考えがあったようである。
 一方豆まきは盛んで、特に子供のいる家では、どこでもやっていることだろう。
 もっとも、大豆より落花生とか、飴類が多いので、この句のように、鬼役になった子供も、逃げるどころか、その落花生拾いに夢中になってしまうのである。


医者ん嘘そいも薬か元気ぢっ
(医者ん嘘 そいもくすいか 元気ぢっ)
            堂園 三洋

 早いもので、明日は故中川一郎氏の四十九日であるが、その自殺隠しのため、札幌中央病院長が偽診断書を書いたことは記憶に新しいところ。私文書偽造に問われる模様。
 ところでこちらは、医者の嘘は嘘でも、患者を快方に向かわせる嘘である。相当な重症患者が、医者に、「なあに、大したことはありませんよ。すぐ治ります」と言われたので、それが精神的な薬になって、快方に向かい始めたのである。嘘も方便、有難い嘘と言うべきか。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋




薩 摩 郷 句 募 集

◎4 号
 題 吟 「 顔(つら)」
 締 切 平成29年3月6日(月)
◎5 号
 題 吟 「 真似(まね)」
 締 切 平成29年4月5日(水)
◇選 者 樋口 一風
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


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