=== 新春随筆 ===
ロ ー ド レ ー ス 観 戦
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いま20歳の一人息子が自転車競技にはまり込んでいる影響もあって,最近自転車ロードレースを観戦する機会が増えた。時速40〜50キロ,ときには60〜70キロで走り続ける選手にとって,一番の敵は空気抵抗だという。さらに,やみくもにペダルを踏んでいるように見えて,実は自らの成績を犠牲にしてエースのために風よけになることもあるチームスポーツでもあるようなのだ。
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昨年10月に大分市であった
「おおいた いこいの道クリテリウム」。
選手は市街地に設けられた周回コースを
ぐるぐる回る
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宇都宮市で毎年開かれる国際大会の
ジャパンカップ・サイクルロードレースに
一昨年,初めて行ってみた。
マスコットガールに挟まれ有頂天
になる私
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国内22チームが参加するJBCF(全日本実業団自転車競技連盟)主催の「Jプロツアー」。昨年10月,大分市であった今季最終戦に出場する息子(西 寅太郎といいます)の応援を兼ねて,晴天に恵まれた会場を女房とともに訪ねた。
1周4キロを30周する3時間弱のコース。レース序盤から「チーム右京」「宇都宮ブリッツェン」といった強豪チームの選手4人が,30人ほどの大集団から飛び出した。これを「逃げ」というのだが,「逃げ」た選手は通常,圧倒的な空気抵抗のせいで徐々に体力を奪われる。一方で後続のメイン集団は先頭選手の交代を繰り返して体力を温存し,レース最終盤で逃げた選手を抜き去るのが一般的なパターンだ。
ところが,この日は逃げた4人の選手のペースがなぜか落ちない。そのままメイン集団に大差をつけてゴールしてしまう可能性が出てきた。困ったのは「逃げ」に選手を送り込まなかった後続のメイン集団。なんとか先行する4人をとらえようと終盤,ある強豪チームのメンバー2人が猛然とスピードを上げた。
不利と分かっていても…
血相を変えてゴールを目指す選手たち。アップダウンに合わせて頻繁にギアを替える機械音が沿道に響く。集団の中で,チームメートに向かって「前に出ろっ」と怒声が飛ぶ。
先頭で追いかける2人はもろに風を受けて体力を消耗していく。それでも前方で逃げた選手をとらえないことには勝利はない。不利と分かっていても,集団の先頭でペダルを踏むしかないのだ。2人のうち前を走る1人は,続く2人目のエースの勝利を信じて懸命に風よけの役割を果たし続けた。
だが,結果は「逃げ」た4人がそのままゴール。メイン集団の先頭を務めた2人は力尽きて1人はリタイア,もう1人も集団に埋もれた。
こうして敗れはしたが,勝利の可能性にかけて風に立ち向かった2人の姿が強く印象に残った。ちなみに息子はレース序盤にリタイア。出走101人のうち完走はわずか20人だった。
「鹿児島は最高」
鹿児島の自転車競技といえば,鹿屋体育大学が有名だ。昨年の大学選手権では男子が4連覇,女子も2連覇。昨年8月のリオ五輪では卒業生の塚越さくら選手がトラック競技,また,内間康平選手がロードレースの日本代表で出場した。
ちなみに息子が所属しているのは「ニールプライド・ナンシンスバル」(来季からは「インタープロサイクリングアカデミー」にチーム名を変更)という長野県が拠点の日仏混成のチーム。Jプロツアーで昨季は5位だった。
一昨年,鹿児島に転勤してきた私は勤務医の女房を福岡に残して単身赴任中。時折,自転車を抱えて息子が鹿児島に来るのだが,鹿児島の練習環境はとにかく最高だそうだ。鹿児島市内から日置や枕崎へ抜けて知覧を通って市内に戻ったり,大隅半島の海沿いを走ったり。私の車を風よけ代わりに,農道を時速50キロ前後で延々と走る「カーぺーサー」という練習もこなした。鹿児島市内には茶輪子(ちゃりんこ)というプロショップもあって,オーナーご夫妻がかつて競技選手だった縁もあって息子もいろいろアドバイスを受けているらしい。
ところで,私自身も鹿児島に赴任する際に実はマウンテンバイクを買った。あちこちサイクリングに出かけて運動不足解消をと誓ったはずが,夏は暑いし冬は寒いと言い訳ばかりで,全く効果は出ていない。メタボの花咲く54歳。今年こそはといつも年頭に誓うのだが,今年もどうなることやら自信はない……。

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