新年明けましておめでとうございます。
会員の皆様方におかれましては,ご家族はじめ医療施設の職員の方々ともども,晴れやかなお気持ちで,新しい年をお迎えのことと,お喜び申し上げます。
本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。
新年早々,験を担ぐわけではありませんが,昨年は干支で申しますと,「丙申(ひのえさる)」でした。古人のいわれによると,種々の意味から「変革の年」で,さまざまな場面でうねり,争いごともあるとされ,何かしらの時代が動くとされています。また一方で,「形がはっきりする」「地が固まる」年でもあるとも言われますが,皆様方はいかがでございましたでしょうか?新年を迎えるにあたり,昨年を振り返りつつ反省もふまえ,新年への抱負と決意の糧にいたしたいと存じます。
まず自然環境的な観点から,昨年の年明け早々は,鹿児島市も大雪に見舞われ,交通が混乱しました。暖冬と言われながらも,地球の温暖化で気象のバランスが崩れ,逆に雪が多く降るのだと聞きました。一昨年来の桜島の大噴火の兆候は,日々桜島を恨めしく眺めつつも,結局のところ鳴りを潜めておりますが,それに引き替え,予想だにしえなかった4月の隣県の熊本から大分にまたぐ広域で起こった熊本地震と10月の阿蘇山の大噴火,さらには大型台風による風水害など,自県に直撃ではなかったにしろ,自然の猛威と脅威を目の当たりにし,災害時の救急対応の整備の重要性を改めて知らされた年でした。特に大規模災害への対策は今後の大きな課題であり,正確で迅速な情報の共有と地域に限らず広域での連携した対応が必須と思われました。折しも昨年10月末に開催されました九州首市医師会連絡協議会では,九州首市医師会を構成する9医師会間で,災害時の相互支援に関する協定を締結いたしました。これは,災害に伴う医療救護活動そのものの支援ではなく,大規模災害で当地医師会の機能が麻痺した際,地域医療を復興・復旧させ地域医療を支えるために,被災地医師会の担うべき役割と機能を支援するというものです。地域医療に臨むに際し,とても心強い繋がりになると思います。
さて,鹿児島市は人口60万人の大都市ですが,年々高齢化と人口減少は進んでいるようで,将来に向けた人口流出の歯止めと若手世代の育成を,市行政も重点化しております。一方,鹿児島市医師会は5区15支部から構成され,年々その規模が大きくなり,1,477人の会員と約550もの医療施設を抱え,九州首市の中でも福岡市に次ぐ2番目に大きい医師会へと成長しております。また各共同利用施設の運営に加え,救急医療,介護保険,産業保健,学校保健,災害対策,市や県の保健福祉衛生業務などにも多く関与しております。
当医師会は,昨年は役員の任期満了に伴う改選が行われ,私もまた昨年4月の代議員による選挙を経て,6月には鹿児島市医師会会長として3期目を拝命いたしました。会員のための医師会として,その重責に精一杯臨む所存ですが,昨今の厳しい医療情勢が続く中,総じて慌ただしく,怒涛のごとく過ぎた1年であったように感じております。そして,何と申しましても,共同利用施設である医師会病院ならびに臨床検査センターの安定化が継続した大きな責務です。
まず,医師会病院の運営安定化のために院内の効率化をさらにはかる必要性があり,昨年4月から新しい体制として,病床を現状の平均稼働率から逆算し,それにマッチするスタッフ数の調整を行い,かつ病理部門の業務を外部に委託し,さらに人件費や支出の削減をはかることで,ぎりぎりまで効率化を行いました。並行して,スタッフのモチベーションを上げるために様々な取り組みを行い,全役職員一丸となって取り組む態勢を構築しました。また,大学医局との良好な関係を保つべく,足しげく大学医局へ医師派遣など医師会病院の支援をお願いに通った次第です。医師会病院として,緩和ケア病棟,地域包括ケア病棟,そして在宅医療後方支援体制など,新たに取り入れておりますが,会員の先生方からの“様々な急患”を受け入れるのが本来の姿であります。その骨子を維持するべく,地域の医療のニーズに応え,かつ医師会病院としての活動力を得るべく取り組んでおります。目下,全体として上方軌道へと向かいつつありますが,依然として予断を許さず,真摯に粛々と臨まねばなりません。
一方,臨床検査センターは経営改善策による新体制になって5年目になろうとしております。運営体制は改善の方向へ向かってはおりますが,将来を見据えると決して楽観できる状況ではなく,今後のさらなる安定化と確実な継続へ向けた取り組みが大きな課題であります。昨年度の事業計画にも掲げましたように,5年後,10年後も市医師会臨床検査センターとして安定して継続するための新たな企画が早急に必要と考え,様々な検討を重ね,目下誠意取り組んでおります。
また今後はいずれの部署においても,若手人材の獲得と育成はもとより,医師も看護師もコメディカルも,そして各事務スタッフも,モチベーションの向上,すなわち昨今の厳しい状況下で“やる気”と“結束力・連帯力”をいかにして引き出し導いていくかということも大切で,今年の重要なキーになると思います。会員の先生方におかれましても,このような厳しい現状を鑑み,地域医療に臨む会員のための医師会病院と臨床検査センターとして,将来においても活性化していくよう,さらなるご理解とご協力を賜りますよう,何とぞよろしくお願い申し上げます。
併せて診療報酬改定,鹿児島市在宅医会の発足から本格的活動による地域包括ケアシステムの浸潤,そして地域医療構想に関して鹿児島保健医療圏としての意見のとりまとめと対応が大きな柱でございました。さらに,これらを責務としての市医師会の役員選挙や県医師会関係の役員選挙,ならびに県政や国政に関与する知事選挙,参議院選挙。そして11月末には市長選挙と続き,森市政の4期目がスタートしました。少子高齢化と人口減少は鹿児島市にとっても深刻な問題で,市民の安心安全そして地域医療を支えるためには,県都の医師会として,60万都市である鹿児島市と多方面での協力と連携が,今後も今まで以上に必要で重要になると思います。
地域医療構想は,ご存じのごとく,病床機能を4つの区分(高度急性期から慢性期)に分類して将来推計が行われるわけですが,これは県民の地域医療の将来のニーズを統計的な客観的データにより見通したもので,それにより進むべき一定の方向性を示した指針・目安であります。すなわち,既存の病床の増減を図るのではなく,高度急性期から慢性期に至るまで,患者の状態に応じた適切な医療を切れ目なく提供するために不足している医療機能を,将来においていかにして充実また補完させていくかという視点が重要であります。
同構想は,昨年11月の医療審議会での審議を踏まえ,知事へ最終案が委ねられました。当医師会として,以上の背景と理由から鹿児島保健医療圏としての立場をあえて強調し,県医師会臨時代議員会の招集にまで至りました。しかし,特に鹿児島保健医療圏と他の8つの各保健医療圏との状況の違いが明確となり,むしろ鹿児島保健医療圏としての全県下の医療の需要を担う重要性を,全県下の現状と将来の推移という観点からも,市医師会員の皆様におかれましては,さらに踏み込んでキャッチしていただけたのではないかと思います。既存病床の削減には至らないということから,何かとお騒がせいたしましたが,鹿児島保健医療圏としては全県下の医療の行方と安定化を鑑み,決して鹿児島保健医療圏第一主義ではなく,当圏域の特性から県下を支えるためにはどうあるべきかというスタンスを堅持した取り組みであったことをご理解いただきたいと思います。今後は各保健医療圏ごとの地域医療構想調整会議が大きな役割を担うことになりますが,もちろん,各圏域の問題点や情報を交換しうることで,さらに協力して県下の医療にも臨む姿勢が強化されたと思います。
ところで,消費税の10%増税はさらに2年間延期されました。また,アメリカ大統領の交代による日本への経済の影響から,地域医療へもさらなる医療費抑制へのしわ寄せが来るのでしょうか,高齢社会が進む中,地域包括ケアシステム構築とともに,介護保険や在宅医療と地域医療構想を踏まえた,次回(30年度)の診療報酬・介護報酬の同時改定の成り行きが大変危惧されます。一方,一昨年の10月から施行された医療事故調査制度の検証と対応は,今後も注視すべきテーマであると思います。“医療の安全の確保”が本来の目的であり,単に医療訴訟や刑事訴訟の道具とされ,我々の臨む地域医療において不要な脅威とならないよう,制度の正しい理解と運用が望まれます。
今年は丁酉の年です。鹿児島市医師会は今年も多岐にわたる問題を抱えておりますが,昨年の様々な取り組みを糧としてさらなる発展と充実を求め,「会員のための医師会としてどうあるべきか,どうあるのが会員のためにベストか」という理念の下,県医師会,各郡市医師会とも情報を交換・共有し,また多方面の動向をしっかりと見据えつつ,会員のための医師会として,そして地域医療のための医師会として,恥ずることのなきよう真摯に,そして精一杯臨んで参りたいと,改めて決意する所存です。
年始にあたり,鹿児島市医師会と地域医療の力強い発展,そして皆様方のさらなるご健勝ご多幸を祈念いたします。
本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。

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