随筆・その他
小 さ な 彼 氏
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鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 小児外科学分野 山田 和歌
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今回,小代 彩先生からバトンを受け取りました山田です。私は小児外科医ですが,総合臨床研修センターに所属し主に研修医の先生方のサポートをしております。小代先生とは先生が研修医時代に出会いました。研修修了後も子どもが通う保育園が同じだったり,一日違いで第2子を出産するなど何かと縁があるママ友です。そして何より仕事と子育てを両立している彼女を尊敬しています。そんな彼女からの依頼ですので断るという選択肢はなくお引き受けしましたが,育児休業中の私の毎日に特に目新しいことはなく,何を書こうかとずいぶん悩みました。辞書によりますと随筆とは見聞したことや心に浮かんだことを,気ままに自由な形式で書いた文章とありましたので,今まさに体験している子育てについて書こうと思います。
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車輪に夢中
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私には2人の男の子がおり,現在上の子が3歳,下の子が4カ月です。妊娠中は「男の子かな?女の子かな?」と想像したりするのも楽しみの1つでしょうが,そんな時間もなく2人ともかなり早い段階で性別が判明しました。私の周りは女の子ママが多かったので「男の子」に若干の不安を抱きましたが,唯一いる男の子ママから「男の子は可愛いよ。小さな彼氏みたいだよ」と聞いて不安が期待に変わったのを覚えています。無事に上の子が生まれ,やはり我が子は可愛く,また初めての育児に無我夢中で子どもと一緒に泣いたり笑ったりあっという間に毎日が過ぎていきました。
赤ちゃんの頃は性別など気になりませんでしたが,異変を感じたのは1歳の頃でした。おままごとには目もくれず車のおもちゃで遊ぶ子ども。追いかけて遊ぶおもちゃを追いかけずに,ひっくり返して動くぜんまいをじっと見つめる子ども。とにかく乗り物が大好きで,動く車輪をずっと見ていました。「うちの子変わっているのかしら?」とも思いましたが,児童館に遊びに行った時不安が払拭されました。車のおもちゃがあるゾーンはみんな男の子で,同じ年頃の子が同じように床に額をつけて車のおもちゃを動かしながら車輪の動きを見つめているではありませんか。「ああ,やっぱり男の子なんだ」と痛感しました。
その一件以来,度々「男の子だわ」と感じることがあります。
『ずっと動いている』
とにかくじっとしていません。一緒に歩いていても,すぐ走る,すぐ跳ねる,そしてずっとふざけています。さらにうちの子は歌ったり喋ったり,口もずっと動いています。
『気の向くまま』
もう何度叱ったでしょう。水溜まりを見つければパシャパシャ。おもちゃは好き勝手遊び散らかし放題。「片付けしないなら捨てちゃうよ」と言えば,泣きながら片付けるのに次の日にはまた同じ。びっくりするくらいすぐ忘れ,羨ましいくらい他人を気にせず気の向くまま行動しています。
『好きなものはとことん好き』
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兄から弟へ 4カ月からの恐竜英才教育
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多くの男の子が辿るであろうトミカ・プラレール→トーマス→恐竜→戦隊モノの道。うちの子もご多分に漏れずその道を進み,現在恐竜に夢中です。今年の七夕には「バリオニクス(恐竜の名前)になりたい」とお願いしていました。寝ても覚めても恐竜。毎日毎日同じ恐竜のビデオを見,買ってもらった恐竜図鑑をまだ字も読めないのに一生懸命読んで(見て)います。そしてずっとティラノサウルスの真似をしています。よく毎日飽きもせず…とその情熱は感心するほどです。
車輪の動きの何が面白いのか,どうして汚れるのに水溜まりに入るのか,理解し難いことだらけでイライラすることもあります。でも,今まで全く興味のなかったものを見せてくれる男の子ワールドはなかなか楽しいものです。
そして友達が言っていた「小さな彼氏」も絶賛経験中です。私が髪を切るとちゃんと気づいて「お母さん,かわいいねー」と言ってくれます。台所で「あっ!」と大きな声を出した時には「どうした?どうした?」と心配して駆けつけてくれます。子どもの「お母さん大好き」にキュンキュンし,ケンカの後の「もうお母さん好きじゃない」の言葉に本気で落ち込みムキになってしまいます。
いつまで私の「小さな彼氏」でいてくれるか分かりませんが,子どもの今を見守りながら子育てを楽しみたいと思っています。
| 次号は,鹿児島市立病院の武藤 充先生のご執筆です。(編集委員会) |

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