[緑陰随筆特集]

春の高崎山を訪ねて

     中央区・城山支部
(高見馬場リハビリテーション病院) 林  敏雄

 
写真 1 ホテルから見た高崎山(正面)

3月末の3連休に家内とどこか旅行に行きたいねという話になって,今年は申年だから高崎山に行くことに決まった。3月19日(土)に新幹線で博多に1泊,翌日特急ソニックで昨年オープンしたばかりのJR九州ホテル・ブラッサム大分で旅装を解いた。大分駅は大改造され,映画館やアミュプラザの商業施設があり,屋上には子ども達が乗れる電動トレインが1周する広場となっている。駅前広場にはキリシタン大名 大友宗麟とフランシスコ・ザビエルの立派な銅像が建っていた。
 ホテルは大分駅に直結した高層建築で,最上の21階には眺望絶倫の大温泉“シティスパ・てんくう”がある素敵なホテルで,高崎山や別府湾が良く見えた(写真1)。
 大分から東に30kmの所に旧・佐賀関(サガノセキ)町があったが,今では大分市に組み込まれている。豊予海峡(幅約14km)を挟んで四国の佐田岬とフェリーで連絡する港があり,また漁港では美味で有名な関アジ,関サバが水揚げされる(写真2,3,4)。昔は200mの煙突を持つ銅の製錬所と豊予海峡を守る陸軍の要塞があるので知られていた。昭和の始めの頃,軍人だった父はこの要塞司令部勤務だったことがあり,当時私は4歳で隣の子と溝川(トブガワ)に沢山いたカニにオシッコをかけたりして遊んだ記憶がある。以前から一度佐賀関を訪れてみたいと思っていたので早速行くことにした。

   
写真 2 四国行きフェリーが停泊する佐賀関港
写真 3 佐賀関漁港

写真 4 四国方面を望む豊予海峡


 日豊本線の幸崎で降り,タクシーで佐賀関半島を目指した。タクシーの運転手さんは昔観光バスに乗っていたとのことで土地の歴史に詳しく,大型フェリーが停泊している港や漁港,道の駅などに案内してくれた。山の中腹に掘られた要塞弾薬庫跡(写真5)にも連れて行ってくれたが,現在は閉鎖されていて中には入れなかった。残念ながら自分達がどの辺に住んでいたかは分からなかった。
 夕方になって関アジ,関サバを食べようと思って2軒ある料亭に行ったがどちらも超満員で,大分駅前に良い店があると聞いて帰ってから食べることにした。ホテルの直ぐ近くのアーケード商店街に,「寿司ろばた・八條」というガイドブックにも載っている店があるので,早速行ってみた。カウンターと堀炬燵のある小座敷が長く延びている瀟洒な店で,サバよりアジが旬だというので早速刺身などを注文して食べたら,評判だけあって凄く美味しかった(写真6,7)。

   
写真 5 要塞弾薬庫跡

写真 6 大分駅近くの「寿司ろばた・八條」

写真 7 当日水揚げされた関アジ


 翌朝タクシーで別府湾沿いの道を約20分北上して,高崎山自然動物園に到着した。50数年前,新婚旅行で新婚さんのメッカと言われた別府「杉乃井ホテル」に泊まった。高崎山(標高628m)はその時訪問して以来だから随分変わっていた。当時は坂道を歩いて登ったが,今は20人乗り小型モノレールが2両連結して数分で「サル寄せ場」に着いた(写真8)。既に見物客が大勢来ていたし,親ザル子ザルも沢山出ていて,仲間同士で毛づくろいしたり,仕切りの柵に腰掛けて眺めたりしていた(写真9)。ベンツというボスザルや(死亡説あり),シャーロットという姫ザルなど約1,300頭の野生サルがいて,2グループに分かれているらしい。係員からサルに触らない,餌を与えない,目を合わせないなど注意があった。足を開いているとサルが通り抜けることがあり縁起が良いそうだ。どこかでキャーと歓声が上がったので,サルの股くぐりが実現したらしい。

 
写真 8 高崎山モノレールに通ずる陸橋

写真 9 餌場で寛ぐサル達


 グループごとに1日1回,イモの餌配りが圧巻だと聞いていたが,10時過ぎにそれが始まった。食べ易いように切り刻んだイモを,リアカーに一杯積んだのを係員が走りながら配ると,今まで餌のムギを拾っていた数十頭のサル達が(写真10),1個でも多く手に入れようと凄まじい勢いで集まってきた。要領のいいサルは口の中にも,両手にもイモを沢山獲得した(写真11)。餌配りショーを見て満足したので山を降りた。

 
写真10 ムギを拾って食べるサル


写真11 走ってイモを配る係員(上)
    イモを争って拾うサル(下)


 国道を挟んで海側に「おさる館」と水族館の「うみたまご」が並んでいる。「おさる館」はサルに関する情報・資料,土産用グッズの販売やレストランの食事が主らしいので省略して,「うみたまご」に向かった(写真12)。鹿児島の水族館より規模は少し小さいようだが,アザラシ,トド,セイウチなどがいたり,イルカ・ショー等もあるらしいが,大回遊水槽を中心にサカナをざっと見て帰った。
 大分では県立美術館に寄ってみたが,奇妙な顔を描いた大きなバルーン・アートが珍しかった(写真13)。他には常設の展示物はなく,レストランで遅い昼食を摂ってから,来た時と逆コースで鹿児島に帰った。
 昔を思い出す小旅行で懐かしく楽しかったが,ホテル最上階の露天風呂では,春風が冷たくて応えたのが記憶に残った。

 
写真12 水族館「うみたまご」
写真13 大分県立美術館のバルーン・アート




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