[緑陰随筆特集]

熊本地震災害支援活動に参加して

     鹿児島県臨床検査技師会 会長 有村 義輝

 盛夏の候,ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 平素より,私ども鹿児島県臨床検査技師会の運営に際しまして,心温かいご理解とご支援を賜り心から感謝申し上げます。
 さて,当会は4月に発生しました熊本地震災害の支援活動に参加いたしました。今回は,その活動内容として,鹿児島県臨床検査技師会と日本臨床衛生検査技師会の両面から報告させていただきます。
《熊本地震詳細》
・14日午後9時26分ごろ,熊本県で震度7の揺れを観測
・16日午前1時25分ごろ,熊本県で震度7の揺れを観測
 マグニチュードは7.3。気象庁は14日以降に続く「本震」と発表
 初めに,熊本県を中心とした地震の影響により,被害を受けられた皆さまに謹んでお見舞申し上げます。一日も早い復旧と被災された方々のご健康と生活再建を心よりお祈り申し上げます。
 さて,鹿児島県臨床検査技師会は隣の県として,支援活動趣旨として熊本地震対策支援鹿臨技チームを立ち上げ,「熊本地震 いま,わたしたちができること!」を合言葉に,鹿臨技会員の心を一つにしてこの熊本地震対策支援に,積極的に取り組もうとする意気込み「覇気」の心にて支援活動を実施。このような状況の中で鹿児島大学病院,南風病院,鹿児島医療センター,今村病院分院,谷山生協クリニック,ヘルスサポートセンター鹿児島,鹿児島市医師会病院の技師会員の皆様方(総勢13人)のご協力をいただき4月30日〜5月5日まで避難所におけるDVT(深部静脈血栓症)検診を目的に支援活動を行いました。私のチームは北九州市立医療センターのJMATチームと三日間一緒に活動しました。内容は問診・血圧測定,下肢エコー検査,血栓の陽性者のみ採血しDダイマー検査を行い全員に弾性ストッキング使用説明および実演をいたしました(図1〜くまもん@・A参照)。

   
図1-@ くまもんの下肢エコー検査 図1-A くまもんの弾性ストッキング

 被災者の方々にとって,避難所の中だけの生活が主となるために我慢を強いられることの多さ。狭い環境での寝泊まりによるストレス。トイレが自由に使えないことで水分摂取を控えてしまい脱水状態になってしまう。災害にあった事で精神的なダメージを受け,ワーファリン等の治療薬を飲むことができていない。これらの要因がいくつも重なり,エコノミークラス症候群のリスクが大きくなっているのではないかと,この支援活動を通して強く感じました。
 また下肢エコー検査はズボンをめくっていただき膝から下のみの観察で行います。
 高齢の女性被災者さんに弾性ストッキングの実演をしていました。すると“この年になって生まれて初めて男の人に靴下をはかせてもらったわ!うれしい!ありがとう!”の声。私は???となり,初めてお互いに顔を見合わせ,・・・!!!でした。この支援活動中に起きた心温まるエピソードでした。この場では車に寝泊まりされている方もまだまだいらっしゃいます。エコノミークラス症候群になりやすいので車での寝泊まりは良くないなど決して発言しないように細心の心配りが必要となります。車での生活を余儀なくされている方々が数多くいらっしゃることを十分に考慮し被災者に対しての接遇をしっかりする事がまず一番に大切なことだと痛感しました。
 次に,日本臨床衛生検査技師会(日臨技)は5月3日〜5日までの連休においては「がまだせ!熊本 ブルドーザー作戦」と題して,集中的な支援活動としてゴールデンウィーク熊本地震エコノミークラス症候群フォローアップ検診スタッフ(臨床検査技師・学生・教官・ロジ担を含む),5月3日約100人・5月4日約100人・5月5日約70人,総勢270人の全国の臨床検査技師会員を動員し支援活動を展開しました。この3日間で,熊本市内を中心に,検診者687人(うち車中泊者391人,57%)に対してエコー検査実施652人,Dダイマー実施67人となりました。弾性ストッキングの配布はうち552人です。また,4月23日からの活動累計では検診者は約1,000人に至りました。さらに,日臨技は会員支援の立場として5月3日〜5日まで災害拠点病院「阿蘇医療センター」へ病院支援を行いました。この検査室では技師が5人のみで従来はオンコール体制でしたが今回の地震にて日勤・当直体制に変更になりました。被災し少人数で日夜,検査結果を提供している疲弊した検査室へのサポートにも目を向け,5月3日〜5日の3日間で複数技師を派遣し,日勤・当直業務を遂行し病院検査技師にリフレッシュしていただき,来週以降の検査業務に備えていただくことを目的としました(図2参照)。
 まとめとして,
図2 出発前の熊本地震対策支援
臨床検査技師チーム(in熊本保健科学大学)
 特に支援活動を行うにあたり臨床検査技師参加者においては,「これこそ,まさに医療救護であり,検査技師の力量が試される仕事」「検査を待ち望む一人でも多くの避難者に検査を通じて安心を与えたい」という感想を多くいただき,この集中行動を通じて,避難所におけるDVT検診プロトコールが全国に拡散・定着して,いつ,どの地域で災害が起きても,近隣技師会が被災地技師会と連携して必要な活動が展開できるようになることが必要であると言われております。また,鹿児島県臨床検査技師会は支援サポートを実施するにあたり,今後は中長期的に臨床検査技師として何ができるかを考えていきたいと思います。そして,現在,第2段階の支援活動のチームを立ち上げ,検査技師の中にも被災された方がいらっしゃるとのことで,医療従事者として,チーム医療の仲間として,会員支援を目的として活動中であります。
 最後に,技師会の機能を十分に発揮するために,鹿児島市医師会の先生方の診療支援チームの医療一員として,しっかりと臨床検査技師の仕事をこなすことができるような技師会活動を行う所存でありますので,ご指導ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。




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