[緑陰随筆特集]
「療育施設 てるくにバオバブ」
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鹿児島県言語聴覚士会 会員
(児童発達支援 放課後等デイサービス てるくにバオバブ 言語聴覚士)田畑友里江
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図1 集団の部屋
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図2 個別の部屋
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私は,言語聴覚士として療育施設「てるくにバオバブ」に勤務させていただいています。療育施設と耳にし,まず思い浮かぶのは集団療育という言葉ではないでしょうか。この場をお借りし,平成28年6月末現在で開所1年9カ月とまだ新しい療育施設「てるくにバオバブ」についてご紹介をさせていただきたいと思います。
厚地脳神経外科病院のリハビリテーション部では脳疾患患者を対象としたリハビリテーションを実施しており,平成9年からは脳性麻痺児を中心とした小児リハビリテーションも開始しています。ここ数年他院や保健センターから,ハイリスク児として出生し,発達障害と診断を受けた児が紹介されてくるケースが増えてきている現状であり,また就園や就学といった相談も多くなり,発達に伴った幅広い対応の必要性も感じられるようになってきました。そこで,当法人の新たな試みとして,平成26年9月,療育施設を開所に至り,厚地脳神経外科病院と連携し,医療,福祉の面から子どもたちの支援を可能としました。
「てるくにバオバブ」とは,子どもたちがバオバブの木のように力強く育って欲しいという思いをこめて名づけられました。
スタッフは児童発達管理責任者を兼任するPT1人,OT2人,ST1人,CP1人(非常勤)計5人と全て専門のセラピストを配置し,療育施設では珍しい1対1の個別療育で対応しています。その中でも社会性の獲得や集団適応の必要な利用者に対しては個別を併用しつつ,2〜3人の小集団での療育も提供しています。
利用者登録数は平成28年5月末の時点で101人(表1参照),年齢別利用者数は3〜5歳児が最も多く,次いで小中学生となっています。
疾患別分類は,運動発達遅滞,肢体不自由,発達障害と続きますが,最近では「ことばの問題」での問い合わせが増加している傾向にあります。しかし,純粋な構音障害は稀であり,大半は発達障害を伴った場合が多く,利用者によってはPOSが介入することで質の高い療育を提供しています。
紹介元としては,厚地脳神経外科病院が最も多いですが,最近の傾向として他療育施設や保健センターからの紹介が増えています。他療育施設で集団療育を継続しつつ,「てるくにバオバブ」で個別療育を新たに開始する場合もあり,利用者の特性に合わせた対応をしています。
また,園や学校訪問を行うことで地域との連携も図っていますが,まだまだ連携不足であることが現状です。
「てるくにバオバブ」に勤務するにあたり,STという職種の必要性を実感することができ,改めて利用者一人ひとりの人生に携わる重要な役目を担っていると感じました。このことは,責任重大であり変わりゆく変化を共に分かち合えることは喜びでもありますが,なかなか変化がみられずプレッシャーに感じてしまうことも多々あります。何がいけなかったのか,どうすべきだったのか,日々試行錯誤しながら利用者と関わる中でSTとして少しずつですが成長することができているのではないかと思います。
また,療育施設は病院勤務とは違い,利用者とは勿論ですが保護者や地域社会との密接な関係があってこそ成り立つものだと強く感じます。利用者一人ひとりに対してどのような方法が適しているのか見極める力を養い,これからも些細な変化を見落とすことがないようにしていきたいです。そして,日々の生活の中で求められるニーズに対応できるように,質の高い療育を提供し続けていけるように精進していきたいと思っています。
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| 表1 利用者登録数 |

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