天
上町支部 吉野なでしこ
老け顔を新け口紅で若作い
(ふけづらを にけ口紅で わかづくい)
(唱)五六若けち言われっ
(唱)(いつっむっつあ わけちゆわれっ)
新しい口紅に変えて引いてみると意外にも若く見えました。別に若く見せようとは思っていないが若いと言われれば嬉しいものです。
口紅の色ひとつで顔が引き立ちました。女性ならではの句でしょう。
地
清滝支部 鮫島爺児医
転婆娘も口紅が欲し年齢しけなっ
(いなばごも 口紅が欲し としけなっ)
(唱)あっち言う間い 出てきた色気
(唱)(あっち言う間い 出てきた色気)
この前までは、男の子みたいに振る舞っていた娘が、化粧品のコマーシャルやデパートの化粧品売り場に興味をしめすようになりました。そっと口紅も塗ってみたくなります。
都々逸に「誰に見しょとて紅鉦付ける」という文句があります、もう大人ですよ。
人
川内つばめ
ママん真似口紅ぬ塗っませた娘
(ママん真似 口紅ぬぬっ ませたおご)
(唱)人を食たよな赤け口ちしなっ
(唱)(人をくたよな あけくちしなっ)
ママの目を盗んで化粧室の鏡台に座ると口紅がありました。好奇心で小さな唇にママのように塗ってみますが、上手には塗れなくて大変な顔になりました。ママの雷が怖いですね、大事な口紅ですから。
五客一席 城山古狸庵
見舞客くば口紅ぬ引っ老婆も待つ
(みめきゃくば 口紅ぬ引っ ばばも待つ)
(唱)窶れた容姿も見せあならんで
(唱)(やつれたよしも 見せあならんで)
五客二席 紫南支部 二軒茶屋電停
襟元ん口紅が原因女房ん角
(えいもとん 口紅がもと かかんつの)
(唱)濡れ衣じゃっち言てん通らじ
(唱)(ぬれぎんじゃっち ゆてんとおらじ)
五客三席 清滝支部 鮫島爺児医
口紅な大人せ成った娘ん証じゃろ
(口紅な おせなったこん あかしじゃろ)
(唱)やっぱい女綺麗れなろごちゃっ
(唱)(やっぱいおなご きれなろごちゃっ)
五客四席 城山古狸庵
口紅も爆買ん荷物ち加されっ
(口紅も ばくげんにもち かたされっ)
(唱)嵩張らんでち良か旅土産
(唱)(かさばらんでち よかたっみやげ)
五客五席 清滝支部 鮫島爺児医
口紅な分からん程ん美人の奥様
(口紅な わからんしこん シャンのこじゅ)
(唱)地味い塗ってんセンスが光っ
(唱)(地味い塗ってん センスが光っ)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
口紅で落書くばしっ母親が叱っ
(口紅で らくかくばしっ はほががっ)
口紅な出所いよって値が上がっ
(口紅な でどこいよって 値が上がっ)
口紅な免税店の良か土産
(口紅な 免税店の よか土産)
城山古狸庵
ワイシャツの口紅に妻ん角が出っ
(ワイシャツの 口紅にかかん つのが出っ)
川内つばめ
口紅ぬ流行ち気色悪いか黒
(口紅ぬ はやいちきしょっ わいか黒)
作句教室
「死に化粧別れん口紅ぬ丁寧に引っ」
(「死に化粧 別れん口紅ぬ てねに引っ」)
この句について、考えてみましょう。まず中句がこのまま読むと9音字になります。ルビを振らないと、口紅は「すばべん」と読みます。「口紅(べん)」にすると、7音字で句は整ってきます。
多分作者は「口紅(べん)」のつもりだったのでしょう。
兼題にルビを振ってある時は、句にルビを振らなくても兼題の通りに読みますので、振らないでも良いです(ただし自由吟の時はルビを振ってください)。題が「口紅(すばべん)」の時でも「口紅(べん)」と振っても良いです。もう一つ「死に化粧」と言う言葉がありますが、別に句としては悪くありませんが、表現がストレート過ぎますので、「死に化粧」を使わないで、次のように表現したら死に化粧だと分かります。短冊に書いた時に、死という言葉は使わない方が良いと思います。
口紅も丁寧い引かせっ母は逝っ
(口紅も てねい引かせっ はほはいっ)
薩摩郷句鑑賞 92
歯の痛せ妻ん小言ちゃ半端聞っ
(歯の痛せ かかんこまごちゃ 半端聞っ)
濱崎 鶏冠
虫歯の痛さは、我慢できないものの一つであろう。子どもだったら、泣くより手はあるまいし、大人だったら八つ当たりしたくなるのが落ちである。
この句は、歯痛に耐えているのに、奥さんがぶつぶつ「こまごっ」(こごと)を言い出したのである。中途半端に聞いている顔が目に浮かんでくる。怒鳴り付けずに半端でも聞ければ上上。
今日から歯の衛生週間だが、転ばぬ先の杖とは、歯にも言えるのではあるまいか。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎8 号
題 吟 「 花火(ひゃなっ)」
締 切 平成28年7月5日(火) ◎9 号
題 吟 「 喧し(せからし)」
締 切 平成28年8月5日(金)
◇選 者 樋口 一風
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
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