=== 年頭のあいさつ ===
年 頭 の ご 挨 拶 |
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 あけましておめでとうございます。会員の皆様ご家族および各医療機関の職員の皆様ともに晴れやかに新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
今年は院長を拝命して二年目の春を迎えました。皆様のお力添えをいただきながら,何とか医師会病院を再生させたいと考えておりますので,なにとぞよろしくご協力くださいますようお願いいたします。
さて,昨年を振り返りますと,地球規模での異常気象による自然災害,エボラ出血熱,隣国韓国でのMERSの蔓延,さらにわが国でのデング熱騒動にも見られますように,輸入感染症は決してまれとはいえず,対岸の火事として看過できない状況にあります。国を挙げての対策が急務となります。聞くところによりますと,国立感染症研究所村山庁舎において,エボラウイルスなど最も危険度が高い病原体を扱うことができる,国内初の「BSL4」施設の稼働を開始したとのこと,遅ればせながら対策が一歩前進したと申せましょうか。鹿児島でも新たな感染対策が講じられる必要があろうかと思います。
また世上は極めて不安定で,パリの事件に代表されるイスラム過激派のテロ活動,それに触発されたように,潜在していたフランスやドイツなどの極右政党の勢力拡大,さらにアメリカでは次期大統領候補による,“自由主義アメリカ”の根幹を揺るがすような言動。ロシア・フランス・有志国によるシリア空爆に伴う難民の増大化は,難民に紛れたテロリストの移動により各地にテロが飛び火する始末となり,さらなる怨恨の連鎖に歯止めがかかりません。わが国では日米安保条約の見直しから,今回のドイツ同様に後方支援という,派兵を求められるのではないかと危惧いたします。さらには南沙諸島をめぐる中国と周辺諸国との摩擦に伴うアメリカの介入など,一触即発状態の緊張感を漂わせており,目が離せない状況です。“今の日本は戦前の空気其の儘に帰っていく気配がする”という瀬戸内寂聴さんの言葉を借りるまでもなく,極めて憂慮すべき状況といえましょう。
経済においては原油安に伴う好景気に沸く一部の大企業を除き,低所得者保護に国費を提供することや,軽減税率の取り扱いを巡る税収減少を考えますと,2017年4月に導入する消費税アップによる財政の健全化はなかなか容易ではないと思われます。その結果,社会福祉・医療政策は思うに任せず,医療界を取り巻く環境は依然として厳しい状況が続きそうです。来年度の診療報酬改定で診察料は小幅値上げされても,薬価の引き下げによる収入減が見込まれる厳しい回答と判断せざるを得ません。
当院にとってはまさに正念場と言える年になりそうです。27年度の収支はやや改善傾向を示したものの,依然として厳しいものでありました。診療部スタッフの異動や退職などが相次ぎ,22年度に53人在籍したDrが40人にまで減少したことが,収入アップを図れない大きな要因であります。救急体制のためにメディカルスタッフを充実させている関係で,相対的に人件費比率が上昇しており,削減を図ることが急務となっております。しかし,メディカルスタッフは当院の大きな売りであり,各方面から評価を受けております。慎重な対応が必要です。一方,収入アップを目的として,職員全員一丸となって前進するために,昨年暮れの12月7日診療部全員+各部署の主任以上の緊急拡大医局会を開催いたしました。その場で診療支援部・看護部・事務部・薬剤部各部長より現状の分析と改善策を提示していただきました。ついで診療部のみがのこり,財務改善についての対策を,皆で検討しました。様々な意見が出ました。我々のみで決定できないものもあり,執行部とも協議を図ってまいります。また医師確保など直ちにかなわぬ問題もありますが,患者の引き受けの方策などについて,検討を重ね,引き続き努力を続けてまいります。幸い,大学からローテートとしてこられた若手医師も現在の病院の置かれた状況を共有し,それこそ一生懸命に努力していただいています。常勤スタッフも前向きに各個人の医療技術の向上に励みながら,鹿児島の地域医療に貢献することに,惜しむことなく研鑽される方々が揃っています。極めて頼もしい限りです。そのような姿が,呼び水となり,婦人科腹腔鏡手術の研修目的でベテランの医師が一年限定ですが着任されました。さらに婦人科には技術修練の為,若手女性医師も加わっていただき,日夜励んでおられます。
さて,現在の医療状況を考えますと,女性医師には地域医療の担い手として是非とも中心となっていただく必要があり,当院も,ワークライフバランスに協力しながら,勤務していただいております。麻酔科には3人の女性医師が勤務され,そのうち2人は時差出勤などにより,家庭と両立させながら,時間内手術をこなしています。全国医師会勤務医部会連絡協議会でも話題になりましたように,女性医師のサポートには周囲の男性医師と,子育て中ではない女性医師が当たる必要があります。今後の女性医師対策はこの方々のサポートを重要視すべき第二段階に入ったことが強調されていました。当院でも直面する大きな問題であり,大学医局の協力を得ながら前向きに対応していこうと思っております。医学部生の半数近くが女性である現状を考えると,能力がありまた意欲のある女性医師の参加を促進できる病院に変化していかなければならないと考えております。
明るい話題としては,基幹型研修医に関東の学生さんが一人マッチングしたことがあげられます。鹿児島にはゆかりのない方で,病院見学がきっかけとなり,このような縁を持たれたものです。さらに2月には東大の学生さんが2人,循環器内科のエレクティブ・クラークシップとして正式に来られることが決定しました。これも昨年見学の際の鳥居先生の指導・臨床の姿勢に好感触を得られての結果であります。かれらを大切に育て,再び研修医のあふれる職場へと飛躍を遂げたいと考えております。
以上年頭に当たって,新生医師会病院として努力してまいります決意をお示しするとともに,今年もご支援をお願いする次第です。なにとぞよろしくお願いいたします。

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