光陰矢の如し,あっという間に今年も師走ですが,みなさんにとって今年はどの様な年だったでしょうか。私にとっては,30年来の念願だったB PO(過酸化ベンゾイル)製剤が4月から使えるようになり,にきび治療がやっと世界スタンダードとなって嬉しかったことと,専門の紫外線防御対策で週刊「女性自身」に載った記事がYahoo!ニュースのトップ項目に登場し,NHKニュース7にもほんの少しですが専門家として登場したことが思い出に残った1年でした。
さて,誌上ギャラリーは,天辰健二先生の仙巌園の寒牡丹でした。「覆いとり 互いに見ゆ 寒牡丹」(虚子)を思い起こす綺麗な構図の写真をありがとうございました。
本号は,今年の総目次がついているように,1年の総括がメインテーマです。
特集は,1年を振り返ってと題して,各医会会長から今年の活動と来年へ向けての抱負を投稿いただきました。お忙しい中,投稿くださったみなさんに感謝いたします。森山一郎先生の報告された日本耳鼻咽喉科医会第40回臨床家フォーラム「かごしまフォーラム2015」は,NHKのクイズ面白ゼミナールのオープニングでの鈴木健二の決まり文句だった「知るは楽しみなり」を具現化したような学会で,大変興味深いものでした。以前,私も耳鼻咽喉科の先生たちの勉強会で「皮膚科の抗ヒスタミン薬の使い方」を講演して,同じ薬剤でも科によって使い方に違いがあることを説明して喜んでいただいた事を思い出しました。
医師会事務局からは,東 耕治事務局長が今年の出来事と医師会全体の活動の総括を,附属施設(臨床検査センター,医師会病院,夜間急病センター)の責任者からは本年の事業内容の詳細な報告がありました。検査センターの経営が少し改善したという明るいニュースもあれば,医師会病院は厳しい経営が続いているという深刻な話題もありました。
医療トピックスは発熱性好中球減少症に適応のある抗菌薬で,疾患の定義と薬剤についての解説は,入院施設もなく,化学療法もすることのない門外漢の私には勉強になりました。
学術の1つ目は,8月の内科医会CPCでした。臨床医と病理医が一緒に一人の患者さんの診療経過と病理所見を提示しあい,出席者が多くの事を学び取るCPCこそ,まさに「患者さんから学ぶ」という医学の基本と言えるかもしれません。剖検にご協力くださった患者さんのご家族には頭の下がる思いです。
もう1つは,9月の内科医会の鹿児島大学大学院医歯学総合研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学の黒野祐一教授による「アレルギー性鼻炎・花粉症の診断と治療における留意点」と題した講演サマリーでした。皮膚テスト,特異的IgE抗体が陽性であっても発症者は約3分の1というのは,食物アレルギーにおいても特異的IgE抗体陽性(感作されたということ)と食物アレルギーを発症することは違うので,診断には食物負荷試験が必要であるとされていると同じ事を意味するのでしょう。
随筆・その他は,古庄弘典先生の医学切手コレクション,平田宗興先生の随筆でした。私の散歩コースであるマリンポートかごしまには広い芝生の広場があり,ジョギング,ウォーキングをしている人は見かけますが,まだ,ポールを持っている人は見かけた事がなく,ノルディックウォーキングが鹿児島で組織的になされているのは知りませんでした。通常のウォーキングよりも運動効率が良い様なので,リハビリ目的ばかりではく,健康増進目的でも普及していくのではないでしょうか。
師走は忘年会の季節,カロリー摂取過多でメタボにならないように,ヒポクラテスの「歩くことは人間にとり最良の薬」を糧に,積極的に歩くように心掛けていきたいものです。
(編集委員 島田 辰彦)

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