天
紫南支部 二軒茶屋電停
孫ん笑顔見れば一日ん疲れも飛っ
(孫んえご 見ればひしてん 疲れもつっ)
(唱)会社ん鬼も家じゃ恵比須顔
(唱)(会社んおんも えじゃえべすづら)
原句には「孫ん笑み」とありました。現在はあまり使いませんが、笑顔(えご)という言葉がありますので書き換えました。
どんなに疲れていても孫の笑顔は最高の栄養剤です。孫の句は郷句にも、川柳にもよく詠まれているので、題材としては新鮮味があまりありませんが、でもこんな句は誰が読んでも楽しくなります。短冊に書いた時に見る人を楽しい気分にさせるのが郷句の本旨でしょう。日常茶飯事の出来事をさりげなく句にできるのは素晴らしいことです。
地
清滝支部 鮫島爺児医
疲れを取い薬や昼寝が確実っ効っ
(疲れをとい くすやひいねが ぴしゃっきっ)
(唱)あんまい長げち傍ん人が心配
(唱)(あんまい長げち はたんしがせわ)
短い昼寝は健康に良いらしい。「確実(ぴしゃ)っ効(き)っ」とありましたので医学的にも間違いないでしょうし、確信もあられるのでしょう。疲れが取れるという医学的なお墨付きがあるから堂々と昼寝もできます。寝ている様子を「鼻が鳴(な)っ」とか「鼾(いび)くけっ」とか薩摩郷句では表現をしていたようです、「鼾(いび)くけっ」にすると堂々と昼寝をしている様子が見えてきます。
人
上町支部 吉野なでしこ
遊園地しったい疲れた孫ん守い
(遊園地 しったい疲れた 孫んもい)
(唱)後をば追かて辛気が煮えっ
(唱)(後をばうかて しんきがにえっ)
勝手気ままに広い遊園地で孫はどこへ行くか分かりませんので、油断も隙もありません。ちょっと目を離したすきに迷子になります。あまり世話を焼くと嫌がりますので付かず離れず、後をついて行かなければなりません。帰りには老骨(おんじょぼね)が痛くなります。もう行かないとその時は思うのですが、せがまれればまた行きます。孫を持ったことのある方は、皆さん経験されたことでしょう。「しったい疲(だ)れた」が効きました。「すったい」とも言います。
五客一席 上町支部 吉野なでしこ
疲れとけっ服も着替ゆい気力も無し
(疲れとけっ ふっもきがゆい あやものし)
(唱)汚れたままち女房け叱われっ
(唱)(汚れたままち かけくるわれっ)
五客二席 清滝支部 鮫島爺児医
孫ん守い帰でた後から疲れが来っ
(孫んもい もでた後から 疲れがきっ)
(唱)孫ん家来のごっじゃった付け
(唱)(孫んけらいの ごっじゃったつけ)
五客三席 紫南支部 二軒茶屋電停
飲ん疲れた言ひこ飲まんな落て着かじ
(のん疲れた ちゅひこ飲まんな おてつかじ)
(唱)肝硬変が心配じゃちカルテ
(唱)(肝硬変が せわじゃちカルテ)
五客四席 城山古狸庵
疲れちょって焼酎も飲まれん休肝日
(疲れちょって しょちゅも飲まれん 休肝日)
(唱)今夜え限って出た良か肴
(唱)(こんえかぎって でたよかしおけ)
五客五席 川内つばめ
疲れたとも一口言わじ頑張っ母
(疲れたとも ひとくっいわじ きばっはは)
(唱)弱身んも見せじ良か子を育っ
(唱)(よわんも見せじ よか子をおえっ)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
残業で疲れを言うよじゃ先きゃ知れっ
(残業で 疲れをゆうよじゃ さきゃ知れっ)
尻あ軽し疲れも見せんじ流行い医者
(しあかるし 疲れも見せんじ はやい医者)
長旅も連れが良かれば疲れあ無し
(ながたっも つれがよかれば 疲れあのし)
ゴルフ好っ疲れも見せんじ一日中
(ゴルフずっ 疲れも見せんじ ひのひして)
なでしこは疲れも見せんじ頑張っ銀
(なでしこは 疲れも見せんじ きばっ銀)
作句教室 今月の投句より
連休で親あ疲れとけっ火の車
(連休で 親あだれとけっ 火のくいま)
この句について面白い句だと思いましたが、残念なのは中八です。上句と下の句は六までは許される場合もありますが、薩摩郷句は原則として上と下は五です。俳句も川柳も中八は許してもらえませんので気を付けましょう。この句は、連休で何日も旅行をしてくたくたになって帰ってきましたが。お金を遣いすぎて家計は火の車なった、ということでしょう。これを五・七・五にするならば「連休で親も疲(だ)れたが火の車(くいま)」とすれば句になりますが、火の車とは経済的に苦しい暮らしのことだと思います。疲れを火の車とする比喩には少し無理があります。題が「疲(だ)れ」だから、「連休で親も財布(さいふ)も疲(だ)れとけっ」と財布を擬人化したらすっきりとした句になります。薩摩郷句ですので鹿児島弁の、「財布(ふぞ)」を使いたいです。「親も財布(ふぞ)も」としたいのですが、中六になりますので、長い休みでしたので親だけでなくて、子どもも疲れるはずですので、親子でとしたらどうでしょう。
「連休(れんきゅ)いな親子も財布(ふぞ)も疲れとけっ」ではどうでしょうか。
このように何回も推敲して最も適切な言葉を探し出すことが上達の秘訣です。
薩摩郷句鑑賞 85
金槌も水着姿で写真撮い
(かなづっも 水着姿で 写真とい)
田畑すすけ
この頃の水着は、泳ぐためというより、見せるためという感じの方が強い。色や柄の派手なことはともかくとして、着けていないに等しいような大胆なものまで流行しているようである。
だが自分のプロポーションとも相談して、個性を生かせるものを選ばないと、見せるつもりが、とても見られたもんじゃないことにもなり兼ねない。似合った水着は、写真に写してもきれいだろうし、泳げないなんて思えないほど、ぴったりと決まるだろう。
子が土産じゃっち手ぶらで里帰い
(子がみやげ じゃっち手ぶらで さともどい)
大園幸運児
夫婦きりのうちは、実家に帰る場合には、土産でも持って行けるだろうが、子どもが生まれると、それがひと荷物である。ましてや、二人になり三人になればなおさらのこと。もっとも、今は車があることだけれども。「顔(つら)土産(みやげ)」という言葉があるが、実家の親にしてみれば、娘や孫の顔を見れば満足するわけで、土産なんか当てにしていないのである。
(三條風雲児)
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎10 号
題 吟 「 上手(じょし)」
締 切 平成27年9月5日(土) ◎11 号
題 吟 「 小言(こまごっ)」
締 切 平成27年10月5日(月)
◇選 者 樋口 一風
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
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