随筆・その他
ライ○ップより,月100km走
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大学時代を岩手県で過ごしたため,鹿児島には同じ大学の先輩は数えるほどしかいない。今回はそんな数少ない先輩からお話をいただいた。さて,取りあえず引き受けてみたものの,はてさて何を書けば良いのか,とんと見当もつかない。医師会報からの案内状には,「次の執筆者を紹介してもらえると助かります」とも書いてあるのだが,現在これを書いている時に,すでに4人に次回の執筆依頼受け取りを断られているのだから,なおさら途方に暮れる。5人目は誰にお願いしようかと考えてみるも,誰も思いつかないので本題に入ってみようと思う。
これまでのものを見ると,やはり自分の趣味について書かれている方が多いようだ。趣味か…といっても趣味がないのがここ数年の悩みの種なのだ(SNSの一言欄は,数年前から「趣味がほしい」の一点張り)。うむむ…そういえば自分の中では趣味とは思っていないのだが,周囲から「数年間継続しているのだから,それは立派な趣味だ」と言われることが一つだけある。胸を張って好きだとも言えないことを趣味と言ってよいのかとも思うが,「毎日続けてたいしたものだ」とも褒められるのだから,やっぱり趣味と言っても差し支えないのだろう。というわけで,ありきたりで大変恐縮なのだが,今回はジョギングについて皆様にご報告させていただこうと思う。
まずはその動機について。元々ただ走るだけのスポーツ(マラソン等)の何が面白いのかさっぱり理解できず,ましてや好き好んでそれをしている人はよっぽどの物好きなのだと勝手に思い込んでいた。そんな自分が,よっぽどの物好きになろうと考えた一番大きな理由は,やはり仕事上の都合と言える。
現在脳卒中を主に診療しているのだが,もちろん動脈硬化は主な原因の一つ。このため患者の動脈硬化予防についてはそれなりに厳密に行う必要がある。ここからはあくまで自分の持論になるが,ほとんどの動脈硬化因子の入り口は肥満だと考えている。つまり肥満の予防,ひいては有酸素運動が動脈硬化予防には最良の選択だと考えた(もちろん運動がままならない方は別)。この悟りを開いた時が既に30代オーバー,大学時代と比べてすっかり肥満体型になってしまい,時すでに遅しとも言われたが,お釈迦様でさえブッダガヤの菩提樹の下で悟りを開いたのが35歳,それに比べりゃまだ若いと一念発起してみた。自分が肥満では,ましてや有酸素運動を率先して行っていないようでは,実体験として患者に肥満予防の大切さや有酸素運動の効果を伝えることができるわけがないということだ。[余談だが,私の後輩でやや(!?)肥満体型(BMI40オーバー)にも関わらず,堂々と患者に「肥満はいけないよね。ダイエットしなきゃ」と説明している強者がいる。彼は反面教師としての効果を狙っているものと理解している]。
さて当初は肥満(動脈硬化)予防として始めたジョギングだが,始めてみるとその他の効果もあることに気が付いた。その他の効果とは,@知らない人・物との出会い,A家計の節約だ。
ジョギングをするということは当たり前だが,自分の足で走るという事だ。自分の足で走ると,普段気付かない事に気が付く。それがなかなか面白いのだ。例えば以前の赴任先は城山の袂にあったのだが,その時は朝6時頃に宿舎を出発し城山展望台を目指した。展望台につくころは,ちょうど朝のラジオ体操が始まる時間くらい。するとそこには毎日ラジオ体操をしている高齢者の方々がいらっしゃった。全く面識は無いが,朝の澄んだ空気は人を穏やかにするらしい。「おはようございます」とお互いあいさつを交わし,一緒に体操をする。終わったら二言三言会話を交わし別れを告げる。ただそれだけの事だが,何とも気持ちの良い一日になる。現在は勤務先が変わってしまい早朝の城山登山は行っていないが,おそらく今も皆さん元気に体操をされていることと思う。
現在は鹿児島中央駅近辺の自宅から,鴨池にある今村病院分院の間を,通勤の為にジョギングしている。距離にして約5kmで,ゆったり走って約30分程度と,ちょうど良い距離のこの2つの間には大小含めいろいろな道があり,そのルートは自分の選択次第で多岐にわたる。ここの面白いところは,出勤時には通学・通勤路ゾーンが多く含まれるということと,帰宅時には飲み屋街等立ち並ぶにぎやかなルートも選択できるということ。出勤時に私が走る通路には,集団登校している小学生や,その道路横断をサポートする係の方,学校の前には校長先生らしき人,さらには時々交通整理をする警察官の方々がいる。この方達全員に,走りながら元気よく挨拶をする。相手からも元気の良い挨拶が返ってくると,何とも気分爽快になる。朝の時間帯がよく一緒になる小学生の集団からは,「今日も変なおじさんが来たね」なんて笑われることもあるが,それもまた一興なのだ。帰りは帰りで,あえて人通りの多い賑やかな飲み屋街を通るルートを選択して帰る。街の活気を肌に感じるのはやはり元気が出るし,したたかに酔っぱらった集団をみるのは非常に面白い。嘔吐しているところを目撃したりなんかすると,明日は我が身と少し憂鬱にもなったりする。いずれも面白い事柄だが,これらは車にのっていてはほとんど気付かない。自分の足で走るからこそ気付くのだ。
次は家計の節約について。最近TVのCMで「ブーッチブー!ブーッチブー!」という威勢の良い音楽と共に,ダイエットのbefore-afterを見せるものがあるが,聞くところによるとそのダイエット会社の料金は2カ月でウン十万とか。なんてもったいない。もっとお手軽にダイエットする方法があるのに。というわけで皆様に私の考える,絶対成功するダイエットの方法をご紹介させていただく。至極簡単なその方法とは,一カ月に100kmをどのようなペース配分でも良いのでジョギングするというもの。1日5kmを20日間でも,1日100kmを1日間でも良いので,とにかく月100kmのジョギングをする。これだけで確実にダイエットが成功する。では,どうしてこれが家計の節約につながるかというと,もちろんフィットネスジム等に通う必要がないので,その料金の節約になるということもあるが,何より月100km走るというのは,意外に大変だということがある。1日で100km走ることのできる人はそれほど多くはいないだろうから,月100km走るには,必然的に何日かに分けて走らなければならない。ほとんどの方は,1日5km程度が現実的なところではないだろうか。とすると月20日ジョギングを行う事になる。ジョギングをするためには,体調管理に気を使うようになる。そのため,夜に外出する頻度は減り,また宴会があっても早々に引き上げるようになる。つまり規則正しい生活をするようになるため,ひいては家計の節約につながると考えている(実際我が家では交際費が激減した。付き合いが悪くなったと言われることもあるので,そこら辺のバランス調整は必要だろう)。
以上長々とジョギングについて書かせていただいたが,お手軽にお金をかけないで,自分や家族にメリットの大きい趣味だと思う。2016年3月6日には,いよいよ鹿児島マラソンも開催される。これを機に皆様もジョギングを始めてみてはいかがだろうか。
最後に,大学卒業後85kgまで膨れ上がった私の体重は,現在65kgである。
| 次号は,今村病院分院の志村 武先生のご執筆です。(編集委員会) |

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