随筆・その他
逆単身になって思うこと
-愛犬,職場,そして報道番組について-
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『鹿児島市医報』の「リレー随筆」への投稿を依頼されてはたと困ったが,故大森 勲(義父)が生前『鹿児島市医報』によく投稿していたことを思い出し,ご縁がありましたのでお引き受けいたしました。
2年前に娘が県外の高校に進学した関係で妻も一緒に久留米に住んでおります。従いまして現在いわゆる逆単身で過ごしておりますが,一人になると結構忙しくもあり思う事も様々です。
思うこと① 愛犬
本来ならば単身生活を謳歌するのでしょうが,我が家には次女たる英国ゴールデンレトリバー(9歳)がいますので,仕事が終わるとまず彼女に食事を提供する事が私の日課になっています。ドイツ(ハンブルグ大学とケルン大学)に留学させていただき,ドイツ人と犬との関係に非常に感激しました。ドイツでは犬はパートナーとして存在しておりました。電車の券売機には犬とのペアの発券ボタンがあり,どの犬も実におとなしく乗っています。高級ブランド店のドアマンも,にこやかにドアを開けて犬連れのマダムを迎えてくれますし,レストランやデパートの食品売り場も犬同伴で拒否されることはありません。そんな犬たちを多く見た私は,ブリーダー探しからはじめて,生後45日でケルンが我が家の一員になりました。現在体重は37キロ,黒目がちな丸い目にプラチナホワイトの毛はカールしており実に美人です。性格は温厚にして怖がり,頭が良くて“場の空気”をよく読みます。しつけではドイツの犬にも劣らないと自負しております(トレーナーにしつけを依頼したことはなく街中でもノーリードで歩けますが,犬を怖がる方もおられますので散歩時は必ずリードを付けています)。子犬の頃からの習慣のためか,一頭の時はケージの中が一番安心できるようで,朝私が出かける支度を始めると自分からケージに入ります。かわいそうですが,平日は平均13~14時間くらいをケージの中でじっと私の帰りを待っています。その為水分を取らないようにしているようで留守中はほとんど飲水をしておりません。私が帰宅しケージを開けるとすぐに排泄し水を飲みます。そのかわり私が家にいる間は(夜中も)リビング等で快適空間を探して好きなように過ごしていますが,あと数カ月は長い留守番が続く予定です。そんなケルンの唯一困った点は,人は大好きなのですが同類の犬が非常に苦手なことです。散歩時に小さなチワワが近づいて来ると,さっと脇を通り過ぎ一切相手を見ずに先を急ぎます。人が近づいて来ると尻尾をブンブン振り応えていますが,それが犬を連れた人だと早足でスルーするといった具合です。今更ながら少々箱入り娘にし過ぎたせいかと思うところです。
大型犬は存在感が大きく,逆単身生活を無事に変わりなく過ごせるのもケルンのおかげと思っています。一日でも長生きして欲しいものです。
思うこと② 職場
2014年4月から外科が今村病院から今村病院分院へ移動いたしました。分院に外科を新設・標榜するにあたり,その移動にたいへん多くのスタッフが協力してくれましたので,比較的スムースに診療・業務を開始することができ,約1年間大きな問題もなく経過いたしました。外科病棟の確保,手術室の増設(3室から5室へ),ICU(10室)の新設等のハード面が充実し,ソフト面では病棟・外来のスタッフ・薬剤師・栄養士等多くのメンバーが今村病院から分院へ異動してくれました。1984年設立の今村病院分院は建物の老朽化に伴いまして増改築中であり,2017年4月に新病棟(400床規模)が完成予定です。患者さん・スタッフにとっての快適環境をいかに構築するか職員皆で日々検討しており,新病棟の完成が楽しみです。
私にとりましては,自宅からの通勤時間が少々長くなり,天文館が遠くなりましたが,分院のメンバーに温かく迎えられ,またこのような新病棟建設のタイミングで勤務させていただけることに非常に感謝しております。
思うこと③ 夜の報道番組
勤務が終わり帰宅すると,自宅での食事の頃が報道番組のゴールデンタイムです。9時の○○に始まり10時台は△△で,11時台は3つのキーステーションが競合しておりますので,夜は報道番組をみて過ごしております。編集長の考えで番組が構成されているのでしょうが,当然ながらトップニュースが異なり,それぞれの局の路線というものが感じられ面白いです。中にはニュースにかける時間よりも,コメントの時間の方が長く,まるでワイドショーではないかと思う事があります。また報道の中で気になることが数字の取り扱いです。これは医学の世界でも時に見受けられ,母集団が偏っているとそこから導かれる結論が別の方向になってしまうことがありますが,まさに同じことが報道の世界でもなされていることに気づきます。テレビは動画ですので,注意深く聞かないと見落としてしまうことが多々あり,報道はその編集により全く異なる主旨になっていく怖さを感じます。ビール片手にテレビを観ながらケルン相手に憤慨していると,いつの間にかケルンはケージに入っていることもよくあります。場の雰囲気を読みますから。このようにテレビ局によって少なからず主張が異なることが,新聞においても同じように同じ事を記事にしていても趣旨が異なる状況があります。またある新聞で長年報道されてきたことが誤報であったとのことで解説が大きく掲載されましたが,その中には謝罪の言葉はなかったようです。報道の中立性はかなり難しく,番組をみているあるいは新聞を読んでいる私たちがきちんと判断すべきことだと考えます。最近放送作家・小説家の百田尚樹さんの講演を聞く機会がありました。“永遠の0(ゼロ)”“海賊とよばれた男”はいずれも大正生まれの人たちの生き様を書いたもので,昭和30年前後生まれの世代(百田尚樹さんは1956年生まれ)が,大正世代の人々が成し得た出来事をさらに若い世代に伝えなければならないという思いで書いたという内容の講演でした。私も歴史を正確に継承することは極めて大事なことであるとつくづく感じております。
義父が生きていてくれましたら,今でも思うことを数多く医報に投稿していたことでしょう。残念ながら私ではこれくらいが限界ですので,そろそろ筆をおきたいと思います。
ご一読いただきましてありがとうございました。
| 次号は,今村病院分院の萩原隆朗先生のご執筆です。(編集委員会) |

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