編集後記


 我が家では毎年梅雨入り前の5月中旬〜下旬に南薩の某所にホタルを観にいくのが慣例になっています。今年は例年より少し数が少ないようでしたが,それでも充分に堪能できました。人工では真似できない“幽幻”という表現がぴったりくるホタルの光,いくつになっても心に沁み入ります。この近辺ではもうシーズンは終わりましたが,北薩や霧島あたりでは6月下旬まで観察できるポイントがあるようです。ぜひお出かけになられてはいかがでしょうか。
今月の「誌上ギャラリー」は宇根先生からお寄せいただきました“明智平展望台から華厳ノ滝, 中禅寺湖を望む”です。静かな湖面と流れ落ちる滝の勢いが対照的な一方,景勝地らしい雄大さが感じられる一枚です。
「論説と話題」では鹿児島市医師会病院の現状について猪鹿倉会長と園田病院長にご報告いただきました。経営安定化には紹介患者の増加が第一であるとする方向で,さまざまな新しい試みをスタートさせ,病院医師・スタッフ全員で懸命に取り組んでいる姿勢は理解できます。しかしながら一番の問題であろう深刻な医師・スタッフ不足も重なって,未だ十分な結果を得られていないようです。ぜひとも我々会員全員の協力で盛りたてていきたいものです。また五反田先生から鹿児島市医師会在宅医療に関する実態調査についてご報告いただきました。鹿児島市の場合,受け皿になりうる施設数には余裕があるものの,その連携体制にまだまだ課題があるようです。連携体制の早期構築をめざして皆様のご協力をお願いします。
「医療トピックス」では桐野先生から経口ビスホスフォネート製剤の分類と留意事項についてご紹介いただきました。骨粗鬆症の治療薬として広く普及しており内科医である私もよく処方しておりますが,服用時の注意事項が多く,年配の患者様に使用する際には十分な説明をするように心がけております。ポイントを分かりやすく解説していただき大変参考になりました。
「学術」では医師会病院病理診断科の高城先生から大腸粘膜内シュワン細胞性過誤腫の一例をご報告いただきました。我々のような一般開業医にはこういった珍しい症例は経験がなく大変勉強になります。ありがとうございました。
「随筆・その他」は3人の先生からご寄稿いただきました。古庄先生からは“各種記念”と題して6枚が紹介されています。毎回珍しい切手のご供覧ありがとうございます。小田原先生からは今年3月に厚労省より発表された『医療事故調査制度の施行に係る検討について』の合意文書に関して,その概要と解釈について詳しく説明していただきました。
リレー随筆では黒野先生より“介護老人保健施設(老健)というところ”と題して,老健施設長としての日々の仕事振りを綴っていただきました。医師としての視点でなく施設利用者の立場に立って,今の生活や今後の余生まで考慮した様々な工夫を行っている様子がよくわかります。ありがとうございました。
昨年の夏に東京都内でデング熱が発生し問題になりました。このため東京都では5月から公共の場所を中心に大がかりな駆虫作業を始めているとのこと。しかし発生の原因としては東南アジアからの観光客や渡航者からの媒介感染が有力視されており,駆虫だけの効果を疑問視する意見もあるようです。東京とまではいかないものの鹿児島も東南アジア近郊や中国からの観光客は年々増加しており,いつこのような事態が起こっても不思議ではありません。対岸の火事と思わずに,医療従事者として有事に対する心構えは常に持っていたいものです。

                                   (編集委員 寺口 博幸

                                              

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