鹿市医郷壇

兼題「自慢(おぎら)」


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清滝支部 鮫島爺児医

太て鼾泥棒除けよち自慢ら言っ
(ふていびっ ぬすとよけよち 自慢らゆっ)

同郷ち知覧の人達ちゃ 凄ぜ自慢
(どうきょうち ちらんのしたちゃ わぜ自慢)

毛が薄しで手入れ不要ち言う自慢
(けがうしで ていれいらんち 言う自慢)

爺の自慢小め頃釣った太かあら
(じの自慢 こめころつった ふとかあら)

通知表全部るっ丸言て爺が自慢
(通知表 ずるっまるちゅて じが自慢)

百歳爺ん自慢ら聞きてち人が寄っ
(ももじゅじん 自慢ら聞きてち ひとがよっ)

我が事の自慢話にゃ耳に胼胝
(わがこっの おぎらばなしにゃ みんにたこ)

選挙戦自慢も言わにゃ白け居っ
(選挙戦 自慢もゆわにゃ しらけちょっ)


 城山古狸庵

クラス会子供の自慢ではれをしっ
(クラス会 子供の自慢で はれをしっ)

爺が自慢話しゃいっもん筋通い
(爺が自慢 話しゃいっもん すっ通い)

釣自慢聞ったび魚は太とけなっ
(釣自慢 聞ったび魚は 太とけなっ)

自慢吹っ誰もはなかあ聞ちゃ居らじ
(自慢吹っ 誰もはなかあ 聞ちゃ居らじ)


上町支部 吉野なでしこ

また自慢前も聞いたち言わならじ
(また自慢 まえもきいたち いわならじ)

自慢好っ客が増えたや調子乗っ
(自慢ずっ きゃくがふえたや ちょうしのっ)


紫南支部 二軒茶屋電停

自慢なしよかぶいもなし心美人
(自慢なし よかぶいもなし こころしゃん)


 川内つばめ

良か点を取った時だけ自慢顔
(良か点を 取った時だけ 自慢顔)

うっかたの自慢といえば飯つくい
(うっかたの 自慢といえば 飯つくい)

足よいも腸は長げち苦げ自慢
(足よいも 腸は長げち にげ自慢)

新け車自慢が祟っ傷をつけ
(にけくいま 自慢がたたっ 傷をつけ)


 霧島 木林

自慢話語は楽しげ聞くは辛れっ
(おぎらばな かたっは楽しげ 聞くはつれっ)


 印南 本作

目入れてん痛くは無かち孫自慢
(目入れてん 痛くは無かち 孫自慢)

音はずす笑ろこち我慢のど自慢
(音はずす 笑ろこち我慢 のど自慢)

思い出がいつの間にやら自慢話
(思い出が いつの間にやら おぎらばなっ)


永徳天真先生を悼む
 鹿市医郷壇の選者を第四十六巻第三号(平成十九年三月)から快くお引き受けいただき、毎回会員の作品を吟味していただいていた永徳天真先生が、平成二十七年三月六日にご逝去されました。享年六十四でした。
 先生は薩摩郷句「渋柿会」でご活躍されておられ、お忙しい中鹿市医郷壇の選定・書評で、投句者に的確なご指導をいただき大変お世話になりました。本当にありがとうございました。
 先生の唱は心温まり、そしてくすっと笑いを誘うものもあり、それにより作品をさらに引き立たせ、そしてなるほどと読者を唸らせるほどのすばらしいものでした。本当に先生の優しいお人柄があふれており、毎回拝読するのを楽しみにしておりました。ところが今回、突然の訃報を耳にして、驚きと悲しみを隠せません。心からお悔やみ申し上げ、ご冥福をお祈りいたします。また、これまでの兼題を並べて追悼させていただきます。八年の間本当にありがとうございました。
 実は、私も投句者のひとりでありまして、先生から初めて「天」をいただいた時は感激し、自慢げにクリニックの朝礼で披露したことを昨日のことのように覚えています。こういった郷句を通して先生のお人柄や人生感を学ばせていただいたような気がします。
 突然の訃報でしたので、医報第四号の鹿市医郷壇の兼題「自慢(おぎら)」は、選定をせずに原文をそのまま掲載いたします。鹿市医郷壇はなるべく早急に再開できるよう編集委員会で鋭意努力いたしますが、しばらくの間お休みいたしますのでご了承ください。
 最後に、失礼とは思いますが永徳天真先生のこれまでのご尽力に感謝の意を込めまして一句、「天国も 郷句で集っ 笑いの和(二軒茶屋電停)」。先生、天国でご評価お願いいたします。
編集委員長 上ノ町 仁


永徳天真先生 題吟集
平成十九年 三号 煙草(たばこ)
  〃     四号 声(こえ)
  〃     五号 腕(うで)
  〃     六号 連れ(つれ)
  〃     七号 時(とっ)
  〃     八号 機嫌(ごっ)
  〃     九号 無理(むい)
  〃     十号 札(ふだ)
  〃    十一号 素性(すじょ)
  〃    十二号 鍵(かっ)
平成二十年 一号 加減(かげん)
  〃     二号 煩悩(ぼんの)
平成二十年 三号 点(てん)
  〃     四号 薬(くすい)
  〃     五号 髭(ひげ)
  〃     六号 気力(あや)
  〃     七号 浴衣(ゆかた)
  〃     八号 相手(えて)
  〃     九号 相談(そだん)
  〃     十号 余い(あまい)
  〃    十一号 焼酎(しょちゅ)
  〃    十二号 命(いのっ)
平成二十一年 一号 明日(あした)
  〃     二号 驚っ(たまがっ)
  〃     三号 大概(てげ)
  〃     四号 写真(しゃしん)
  〃     五号 真実(まこっ)
  〃     六号 嫁(よめ)
  〃     七号 おてちき
  〃     八号 苦情(くじょ)
  〃     九号 稽古(けこ)
  〃     十号 胸(むね)
  〃    十一号 欠点(あら)
  〃    十二号 議・文句(ぎ)
平成二十二年 一号 神様(かんさあ)
  〃     二号 刺身(さしん)
  〃     三号 嬉し(うれし)
  〃     四号 餞別(せんべっ)
  〃     五号 貝掘い(けほい)
  〃     六号 雑巾(ざふっ)
  〃     七号 周囲(ぐるい)
  〃     八号 汗(あせ)
  〃     九号 団子(だご)
  〃     十号 欠伸(あくっ)
  〃    十一号 占ね(うらね)
  〃    十二号 後悔(くけ)
平成二十三年 一号 化粧(けしょ)
  〃     二号 心配(せわ)
  〃     三号 友達(どし)
  〃     四号 損(そん)
  〃     五号 丁寧(てね)
  〃     六号 味(あっ)
  〃     七号 愛嬌(あいきょ)
  〃     八号 義理(ぎい)
  〃     九号 倹し(つまし)
  〃     十号 旅(たっ)
平成二十三年 十一号 返事(へし)
  〃    十二号 噂(うわさ)
平成二十四年 一号 御馳走(ごっそ)
  〃     二号 計算(さんにょ)
  〃     三号 苦情(くじょ)
  〃     四号 名刺(めいし)
  〃     五号 匂(かざ)
  〃     六号 物好っ(ものずっ)
  〃     七号 人相(にんそ)
  〃     八号 全部(ずるっ)
  〃     九号 考げ(かんげ)
  〃     十号 茶碗(ちゃわん)
  〃    十一号 悩ん(なやん)
  〃    十二号 毎日(めにっ)
平成二十五年 一号 夫婦(みと)
  〃     二号 湯気(ほけ)
  〃     三号 逆(ぎゃっ)
  〃     四号 寄付(きふ)
  〃     五号 用事(ゆし)
  〃     六号 謎(なぞ)
  〃     七号 悪口(あっご)
  〃     八号 親類(しんじ)
平成二十五年 九号 箒(ほっ)
  〃     十号 財布(ふぞ)
  〃    十一号 冗談(わやっ)
  〃    十二号 時計(とけい)
平成二十六年 一号 客(きゃっ)
  〃     二号 惜れ(あったれ)
  〃     三号 頑張っ(きばっ)
  〃     四号 指(いっ)
  〃     五号 鵜呑ん(ぐのん)
  〃     六号 傘(かさ)
  〃     七号 可哀相し(ぐらし)
  〃     八号 痛て(いて)
  〃     九号 がっつい
  〃     十号 狡じ(えじ)
  〃    十一号 恥ね(げんね)
  〃    十二号 買物(けもん)
平成二十七年 一号 料理(じゅい)
  〃     二号 寒み(さみ)
  〃     三号 音(おと、ね)



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