鹿市医郷壇

兼題「寒み(さみ)」


(425) 永徳 天真 選




 川内つばめ

寒み晩な炬燵ちょ出らんじ寝床けなっ
(寒み晩な こたちょでらんじ ねどけなっ)
(唱)付けっぱなしんテレビと電灯
(唱)(付けっぱなしん テレビとでんき)

 食後に炬燵に入って、テレビを見たりしてくつろいでいますが、疲れ具合によっては、足元から温もってくると、睡魔に襲われて横になることもあります。
 家族がいれば、「風邪を引くよ」と起こされるのでしょうが、独り身だとそのまま眠り込むこともあるでしょう。無精者の実態がよく捉えられています。




清滝支部 鮫島爺児医

寒み財布ち睨んだママは軽り会釈
(寒みふぞち 睨んだママは かりえしゃっ)
(唱)上客じゃれば横でべったい
(唱)(上客じゃれば 横でべったい)

 ひと昔の賑わっていた頃と比べたら、今は人通りも少なく、淋しい夜の天文館は様変わりしているようです。
 こんな状況で、飲み屋と呼ばれる水商売の店も、客入りには格差があるようですが、この店は繁昌している感じです。客の懐具合を見る目を持っているママは、おもてなしの態度も違うのでしょう。




 城山古狸庵

寒かほど性根を鍛ゆい寒稽古
(さんかほど しねをきたゆい 寒稽古)
(唱)震ちょった身体て湯気が舞うちょっ
(唱)(ふるちょったごて ほけがもうちょっ)

 毎年正月から、また正月明けから、武術・スポーツや芸事の稽古が始動し、走ったり動きの基本をくりかえし鍛えます。
 鹿児島では、磯浜での寒稽古のニュースが流れますが、見ているだけで寒そうです。寒中での気合いの入った稽古の光景が伝わってくる句で、東京オリンピックの出場を目指して頑張ってほしいです。


 五客一席 紫南支部 二軒茶屋電停

寒み晩にかこつけ焼酎ん杯かすすん
(寒み晩に かこつけしょちゅん ちょかすすん)
(唱)体ん芯がじわっ温もっ
(唱)(体ん芯が じわっぬっもっ)


 五客二席 上町支部 吉野なでしこ

寒む無かち鳥肌立てっ我慢い方
(寒むなかち といはだ立てっ きばいかた)
(唱)風邪どん引けば何じゃいならん
(唱)(風邪どん引けば ないじゃいならん)


 五客三席 清滝支部 鮫島爺児医

霜を踏ん寒み様子も見せじ球を追っ
(霜をふん 寒みふもみせじ たまをうっ)
(唱)好っじゃればこそ元気な証拠
(唱)(すっじゃればこそ 元気な証拠)


 五客四席 川内つばめ

寒みギャグん父親な子供に無視されっ
(寒みギャグん ちゃんなこどんに 無視されっ)
(唱)処か狂ちょい笑いのセンス
(唱)(処かくるちょい 笑いのセンス)


 五客五席 城山古狸庵

若か娘懐ん寒み奴目もくれじ
(わっかおご つくらん寒みた 目もくれじ)
(唱)平生と違ごど今日は給料日
(唱)(かねっとちごど きゅは給料日)


   秀  逸

 川内つばめ

寒かろそ雨風ぜ当たっ田の神様
(さんかろそ あまかぜあたっ 田のかんさ)

今時きな寒み中遊っ子も見らじ
(いまどきな 寒みなかあすっ 子も見らじ)

寒かてん雪がちらつきゃ気も躍っ
(さんかてん ゆっがちらつきゃ 気もおどっ)


清滝支部 鮫島爺児医

寒み晩にゃ熱燗焼酎い貰ろ元気
(寒み晩にゃ あつかんしょちゅい もろ元気)

寒むなれば風邪が流行って忙しこっ
(寒むなれば 風邪がはやって せわしこっ)


上町支部 吉野なでしこ

まこて寒み猫は炬燵で背伸ぶしっ
(まこて寒み 猫はこたっで せのぶしっ)

雪日和カイロじゃ効かじ背を曲げっ
(ゆっびよい カイロじゃきかじ 背を曲げっ)


 城山古狸庵

寒か朝猫と老爺は炬燵守
(さんか朝 猫とおんじょは こたっもい)


 薩摩郷句鑑賞 83

雪祭い裸け乗い込だ島大根
(ゆっまつい はだけのいくだ しまでこん)
                  寺師若法師

 札幌市の雪まつりは、今日までのようであるが、先日は、その雪まつりに、指宿から、「雪に埋もれた北海道の子供たちに、南国の春を届けてやろう」と、オタマジャクシや菜の花が贈られたようである。
 この句はだいぶ古い句だけれども、雪まつりに、世界一の桜島大根が贈られたことを詠んだものである。大根を擬人化して、雪の札幌へ裸で乗りこんだと表現したところが、誠にユーモラスである。


女難の相金が切れたや無ごっなっ
(じょなんのそ ぜんが切れたや ねごっなっ)
                  児玉紫雲児

 「アイラブユー」などと書かれたチョコレートが、今日はずいぶんとプレゼントされることだろう。「うんだもう、女の子からそげなこつば言(ゆ)て」と、お婆ちゃんがびっくりするほど、聖バレンタインデーもあっけらかんになった。それも「下手な鉄砲も数撃ちゃあたる」式。
 チョコを貰って、おれは女の子にもてると、得意になっている男もいることだろうが、金の切れ目は縁の切れ目という言葉もある。この句のように、女難の相が消えるならよいけど。


税務署ち知たじ女房どま法螺を吹っ
(税務署ち したじかかどま ほらをひっ)
                  有薗 紅六

 商売が大繁盛で、儲けがあるように吹聴することは、店の宣伝という意味では効果があるかも知れないが、相手が悪かったというわけである。「そのわりには、申告が少ないようですが、脱税じゃありませんか」と言われたら大変だとばかり、はたで気をもんでいる主人の顔が想像されておかしい。
 法螺だろうと、事実だろうと、話を聞いただけで税金をかける税務署員もおるまいが、ちょうど確定申告の時期だけに面白い句。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋




薩 摩 郷 句 募 集

◎4 号
 題 吟 「 自慢(おぎら)」
 締 切 平成27年3月5日(木)
◎5 号
 題 吟 「 無料(ただ)」
 締 切 平成27年4月6日(月)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


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