=== 年頭のあいさつ ===

年 頭 の ご 挨 拶
鹿児島市医師会病院 院長

     園田  健


 あけましておめでとうございます。会員の皆様ご家族および各医療機関の職員の皆様ともに晴れやかに新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。
 私は昨年4月より院長を拝命し,診療報酬改定・消費税アップ・大学病院の支援体制の変化に伴う人的供給低下など病院を取り巻く環境の厳しい状況を受け止めながら,院内スタッフと一丸となって経営改善施策を検討し,経営コンサルタントの意見も取り入れ,新たに地域包括ケア病棟を立ち上げるなど努力を重ねております。幸い10月は単月黒字をなしえることができました。これもひとえに皆様方の協力のたまものと考えておりますので今年も旧年に倍しますご支援を賜りますようにお願いいたします。
 昨年を振り返りますと,相次ぐ天変地異,御嶽山の噴火・白馬の大地震,もはや亜熱帯化したかのような集中豪雨に伴う広島での山津波。自然の前には人間の無力さを痛感いたしました。CO2削減に有益であった原子力発電はその安全使用について,世界の期待を集めた日本の技術をもってしても容易ではないことを思い知らされ,川内原発をはじめとして再稼働の是非が問われる現在,なかなか明るい手だてが見いだせません。
 医療に目を転じますと,世界にかんたる国民皆保険制度により我が国の平均寿命は女性が85.6歳と世界一,男性80.2歳と第八位という輝かしいものであります。これは医療の進歩を国民が分け隔てなく享受できていることから,悪性新生物,心疾患,脳血管疾患,肺炎の治療が奏功している結果と思われます。一方社会背景として大きな問題は高齢化率であります。2014年9月15日国民の8人に1人が75歳以上(後期高齢者),4人に1人が65歳以上と報じられました。さらに,2025年には団塊の世代が後期高齢者となり我が国は高齢化のピークを迎えます。そのため医療費について申しますと2015年度予算概算要求は31兆6,688億円。推定によると2025年には54兆円でGDP比9.3%に増加する見込みとされています。
 そこで国は“社会保障と税の一体改革”を掲げて,消費税を8%にアップさせて社会保障(医療費など)財源確保の第一歩が始まっています。そして昨年の国会で10%にアップさせる予定でしたが,円安効果が中小企業や労働賃金に反映されないこと,消費増税による買い控え,輸入材料の高騰,大企業の海外転出などに伴う輸出の伸び悩みなどの結果GDP連続減少となり,政府は1.5年の導入延長を決定し,アベノミクス経済政策推進と消費税先送りの是非を問うとして国会を解散年末選挙となりました。世界の経済界の反応は素早いもので,ムーディーズは日本国債の格付けを直ちにワンランクダウンしたのでした。しかし同時に恐慌を恐れるあまり,日本には自前で国債を支える能力は十分にある事を付記したのであります。いずれにしろこの一,二年が日本の将来の運命を決定づけるといっても過言ではありません。
 このことは減益が続く当院にもあてはまるもので消費税増税延期により少し息のつけるところですが,高次機能病院と会員施設をつなぐ有能な急性期病院の一つとしての役割を堅持し続けることが可能か否かはこの一,二年の業績にかかっております。
 冒頭述べましたように,平成22年から続く当院の財務状況の悪化には診療報酬改定や新臨床研修医制度など国の施策が大きく絡んでいることは否めませんが,昨年院長就任直後の支部長会でもお話しましたように,現在なしうる施策として2013年緩和ケア病棟を立ち上げ,昨年4月から常勤医2人とし,各科の合意のもと入院患者目標なるものを設定させていただき努力してもらっています。さらに4階病棟を女性病棟としてアメニティーの向上をはかり好評を博しております。リハビリも拡充しました。またジェネリック医薬品の使用率を高め来年度の機能評価係数アップに貢献できるものと思っております。今回国の施策である高齢者対策事業の一環としての地域包括ケアシステムに対処すべく,職員特に消化器内科・外科・看護師の理解を得て,7階を地域包括ケア病棟にあて,10月には導入準備を設け,11月から本格実施しております。おかげさまで10月は昨年11月以来の単月黒字となりました。内訳を見ますと,なお,昨年を下回るものの,消化器内視鏡検査および手術が9,10月と増えてきております。また10月はほとんどの診療科で外来患者数・収入ともに増えております。入院収入も増収であり,緩和ケア科は初めて想定していた目標患者数に達しました。以上から財務改善計画の施策であるリハビリ強化・地域包括ケア・緩和ケアは間違いなく効果をしめしていると思われます。しかし,同時に会員の皆様による外来ご利用の増加・入院患者数の増加が一番大きな要因であるということを再認識いたしました。医師会病院の存続の可否は医師会員の皆様のご利用に一にかかっていると考える次第です。
 さて改善計画は良好にスタートできておりますが,問題となるのはスタッフの拡充であります。現在誇れるスタッフが多数おります。しかし,だんだん年齢を重ねておりまして,後継者の育成が今後の大きな問題となります。人的支援を大学医局にゆだねてまいりました。その医局に派遣すべき人材が不足しております。これは新臨床研修医制度移行に伴い入局者が減少しているために余力がないこと。さらに,一時的とはいえ鹿児島市立病院の立ち上げが大きく影響していると思われます。市立病院の機能の充実は県都鹿児島の高度医療に欠かせないものであります。しかし市立病院が理想通りに活用できるか否かは周辺の医療機関の質的・量的協力がなければならないものとも考えております。そこで当院は会員の皆様と市立病院・鹿児島大学病院との懸け橋とならねばなりません。そのためには優秀な人材をそろえていく必要がございます。今まで以上に大学と連携を密にしてまいりたいと考えますが,会員の皆様のご子弟や親類縁者の皆様で当院における研修,もしくはともに勤務していただける方を広く求めております。この点におきましてもよろしくご配慮をお願いします。
 また基幹型研修医を昨年3年ぶりに得ることができました。この研修医を大切に育てることが後期研修医ならびに優秀な当院のスタッフづくりにつながるものと考えております。こちらのほうもご子弟親類縁者の方がいらっしゃいましたらご協力をお願いします。
 以上勝手なことばかり並べたてましたが,年頭にあたって今年を試練の年と考えて会員の皆様に重ねてお願いする次第です。




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