鹿市医郷壇

兼題「「料理(じゅい)」


(424) 永徳 天真 選




清滝支部 鮫島爺児医

女房ん料理褒め様も無かが褒めっ食っ
(かかん料理 褒めよもなかが 褒めっくっ)
(唱)味覚の違げは幸か不幸か
(唱)(みかっのちげは こうか不幸か)

 料理の最上級の評価は、「おいしい」ですが、そんな料理を食べると、食欲は満たされ幸せな気持ちにもなります。
 一方で、評価が望ましくない料理では、満足感は得られず、店だと文句の一つも言いたい気分になります。そんな奥さんの料理のようですが、おいしいと食べている気遣いに、感心させられる句です。




紫南支部 二軒茶屋電停

夫婦喧嘩機嫌が直らじ料理が減っ
(みとげんか ごっがなおらじ 料理が減っ)
(唱)好っなケーキで仲直いじゃろ
(唱)(好っなケーキで 仲直いじゃろ)

 相手の気持ちを考えない、話を聞かない、自分の非を認めないなどの、自分の一方的な言動や行動には、怒りを覚えてぶつかりあうこともあります。
 互いに納得がいく収拾がつかなければ、その余波は料理にも及び、料理の品数で機嫌を知りました。互いの気持ちの揺れ動きが見えてくるような句です。




 霧島 木林

年じゃろか薄味じなった母ん料理
(としじゃろか うすあじなった かかん料理)
(唱)薄しがやっぱいおふくろん味
(唱)(うしがやっぱい おふくろんあっ)

 それぞれの家の料理には、それぞれの家庭の味があり、おふくろの味です。幼い頃より身についてきた味で、その味で味覚が形成されたのかもしれません。
 里帰りで食べる母の味に、懐かしさを感じることは誰もが経験していますが、微妙に変化してきた味に、母の老いと寂しさを感じたのでしょう。


 五客一席 霧島 木林

冷凍食品を温めただけで料理ち言っ
(れいとうを ぬっめただけで 料理ちゆっ)
(唱)がっくいさすい手抜っも手抜っ
(唱)(がっくいさすい てぬっもてぬっ)


 五客二席 清滝支部 鮫島爺児医

炬燵ち入っ差しつ差されっ美味め料理
(こたちいっ 差しつ差されっ うんめ料理)
(唱)良か晩じゃらい御馳走が並るっ)
(唱)(よか晩じゃらい ごっそがなるっ)


 五客三席 上町支部 吉野なでしこ

洒落た料理ピリカラ味で乾っ喉
(しゃれた料理 ピリカラあっで かわっ喉)
(唱)慣れん品を食っ舌も驚っ
(唱)(なれんとをくっ 舌もたまがっ)


 五客四席 城山古狸庵

料理上手で家庭円満間違げ無し
(料理じょしで 家庭円満 まっげのし)
(唱)誠て有難て自慢の女房
(唱)(まこてあいがて 自慢のおかた)


 五客五席 印南 本作

石と砂子供の料理は美味じゃっど
(石と砂 こどんの料理は びみじゃっど)
(唱)創作料理で 将来ちゃシェフじゃろ
(唱)(そうさっじゅいで やがちゃシェフじゃろ)


   秀  逸

清滝支部 鮫島爺児医

慣れた店顔見りゃ料理は決まっ居っ
(慣れた店 つらみりゃ料理は きまっちょっ)

料理次第で飲ん物が違ご上戸も居っ
(料理しでで のんもんがちご じょごもおっ)

旅先じゃ地元ん料理が良か珍味
(たっさっじゃ 地元ん料理が よか珍味)


 城山古狸庵

呆え料理もうまかち食い結婚当初
(ぼえ料理も うまかちたもい といえはな)

頼まれた料理番組を録画忘れ
(頼まれた 料理番組を といわすれ)


上町支部 吉野なでしこ

正月料理おせちにゃ飽きっ茶漬けしっ
(しょがっじゅい おせちにゃあきっ ちゃづけしっ)

正月料理注文な済ん余裕主婦
(正月料理 ちゅうもんなすん よゆうかか)


 霧島 木林

三が日料理は作らじ店で買っ
(さんがにっ 料理は作らじ 店でこっ)

独身者道具かあっどん料理はせじ
(ひといもん しょどかあっどん 料理はせじ)


 薩摩郷句鑑賞 82

挙げた手を如何すよもね人間違げ
(挙げた手を いけんすよもね 人まっげ)
              大久保三連星

 「やあ」と言って手を挙げたものの、その相手が人違いであった。そのきまり悪さに、挙げた手をどうしようもなかったのであろう。
 こんなのはまだ良い方で、上がりこんでお茶を飲んでから、隣の家だと分かった家庭訪問の話や、人ごみで腕を組んで歩いているうちに、いつの間にか知らない人になっていた話など、嘘のようなほんとの話がある。
 しかし、こんな人たちは、なんとなく憎めないものを持っている。


胃潰瘍ん薬ゆビールでぐつっやっ
(いかいよん くすゆビールで ぐつっやっ)
               坪山 喜楽

 自家用車が普及したせいか、交際のしきたりが変わってしまったせいか、最近は正月にも酔っぱらいを見かけなくなったし、箸戦(なんこ)の声もほとんど聞かれなくなってしまった。
 しかし、酒の好きな人は、天下御免の正月とばかり、飲んだ人もいることだろう。そして今ごろになると、また胃潰瘍がぶり返しているかもしれない。ところがその胃潰瘍の薬を、水か白湯でなく、ビールで飲むのだから、全く始末の悪い人である。


曲尺冗談く真黒ろなっ叱るっ
(ばんじょがね わやくまっくろ なっくるっ)
               境 戸緒流

 「ばんじょがね」というのは、大工などが使う「かねじゃく」のことで、転じてここでは、馬鹿正直で、融通のきかない人のこと。「真黒ろなっ」は、本気になるとか、一途になるというような意味。
 よく世の中には、冗談もうっかり言えないような堅い人がいるものである。勿論、冗談にも言いようがあるわけで、人を傷つけたり、心証を悪くするような冗談は慎まなければならないが、ユーモアの分からない人も厄介である。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋

薩 摩 郷 句 募 集

◎3 号
 題 吟 「 音(おと・ね)」
 締 切 平成27年2月5日(木)
◎4 号
 題 吟 「 自慢(おぎら)」
 締 切 平成27年3月5日(木)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


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