=== 新春随筆 ===

       自由人閑話(V)




前鹿児島市医師会事務局長
   馬原 文雄

おはら祭を撮る(写真修行)
 撮っても撮っても上手くならない私の写真修行だが,春・・さくらや新緑,夏・・海やひまわり,秋・・紅葉やすすき,冬・・正月の風景や錦江湾の気嵐等々四季を通じて題材には事欠かず,加えて鹿児島にはその地域特有の色々な伝統行事やイベントもあり,修行の身としては撮りたいものばかりで一年中走り回っている。
 特に昨年は,「おはら祭」が鹿児島市制125周年(新生鹿児島市10周年)記念の一大イベントとして位置づけられていたこともあり,何としても写真を撮りたいと思い出かけた。これまで,祭に参加したことはあったが,写真を撮ったことはなかったのでワクワクする思いであった。11月2日の夜まつりから3日の本まつりを,延べ8時間かけて撮ったのだが,何と言っても電車通り含めた車道を生き生きと踊りまわる踊り連の人たちや,自由に行き来する観客,そしてそれらを必死に撮ろうとしているカメラマンたち(自分もその一人でした)の姿は開放感に溢れており,祭の素晴らしさを実感した次第であった。
夜まつり

本まつり

一緒に踊ろう!

 ところで肝心の写真であるが,夜まつりは照明の明るさはあってもやはり暗く,しかも動く被写体とあって感度を上げてもブレが多く,ピントもイマイチといったところで,改めてその難しさを実感させられた。本まつりは素晴らしい天気にも恵まれ,陽光を浴びて生き生きと踊る人たちを追いかけて,おはら祭のにぎやかで楽しい雰囲気を切り取ろうと必死にシャッターをきった。でも,なかなかシャッターチャンスに恵まれず,たまたま「これは」と思うような場面に出会ってもその時は「もう既に遅し」といった具合で,自分の修行の足りなさを思い知らされた二日間であった。これは,約500枚のなかから,自分なりに選んだ3枚ですが,皆様の率直なご批評がいただければ幸いです。
 昨年,63回目を迎えた南九州最大の祭である「おはら祭」。いつの日かこの祭らしい写真が撮れるように,これからもさらに修行を重ねていきたい。

解散・総選挙に思う
 安倍総理は昨年11月21日衆議院を解散し,12月14日総選挙を実施した。結果は政権与党である自民党と公明党が現状を維持し,解散前の一強多弱という力関係が継続する形で終わった。これからの日本の行方が大いに気になるので,少し振り返ってみたい。
(解散の大義とアベノミクス)
 今回の解散・総選挙については,与党内はじめ野党・マスコミからも「大義がない」として,いろいろな批判があったところである。今回の選挙は,安倍総理によると,GDPの実質成長率が二期続けてマイナス成長となったため,消費税を10パーセントに引き上げる時期を今年10月から18カ月延期し,2017年4月とするという税制の変更だから民意を問うということのようであった。そして,アベノミクスを継続することで景気回復をはかり,デフレからの脱却を確かなものにするということで自ら「アベノミクス解散」と名づけられた。
 しかし,そもそもアベノミクスで景気は良くなっていくのだろうか。総理は,株価も上がり,雇用も増え,賃金も上がっており,今は道半ばなのでこれを続けていくしかないと言われる。私には,それなのにマイナス成長となっているのは何故かと疑問に思えてしまう。それは,消費税8パーセントへの引き上げの影響が大きく,実体経済が伴っていないためではないのだろうか。株価は,日銀の「異次元」といわれる金融緩和や年金資金により,人為的につくられている一時的なものともいわれており,株を持っている一部の人や大企業は大もうけをしているようだが,中小企業や庶民は円安による物価上昇で苦しめられており,格差を広げるばかりという実態ではないのだろうか。賃金は,一部の大企業では上がったとはいえ物価上昇に追いつかず,実質賃金は昨年10月まで16カ月連続のマイナスの状況が続いている。雇用の実態も正規職員は減り,増えているのは非正規職員ばかり。そして,何よりも私たちに景気が良くなったとの実感はない。
 このように,よく見てみるとアベノミクスの実態が透けて見える。それでも総理はアベノミクスしかないと言い,消費税の引き上げを先送りするとして解散した。しかし,10月の引き上げには野党も反対していたし,多くの国民も反対であった。それでも解散したのは,18カ月延期するということであれば国民の支持を得られ,その結果選挙にも勝てるし安倍政権も長く続けられる。そして,安倍総理の悲願とする「戦後レジームからの脱却」を仕上げることができる・・・と。こういった思惑が果たしてなかったのかどうか。与党の一部にも,今回の解散は「総理の総理による総理のための解散」と言う人がいたとかいなかったとか。
(主権者として)
 でも,よく考えてみると,いま国政をめぐってわが国の行方を左右するような重要課題が山積しているように思う。
 昨年7月,安倍総理は憲法の解釈変更を閣議決定するだけで集団的自衛権の行使を容認した。その時は国民世論が二分され,反対もしくは危惧する声が多くなっていった。憲法学者はじめ識者からも,このような憲法の解釈を180度変えるようなことは,憲法改正をしなければ行うべきではないという声がいまも続いている。しかし安倍総理は解釈変更を強行し民意を問うそぶりすら見せなかった。それなのに今回は,増税時期の変更を理由に解散した。このことを思うと,いくらきれいごとを言っても,ときの権力者は解散・総選挙となると,自身の都合や政党政派の都合を最優先に考えるのだろうなと思ってしまう。
 しかし,今回の選挙は安倍総理にどのような思惑があったとしても,重要な選挙であったことは間違いない。
 昨年12月10日には,多くの国民が危惧しているにも関わらず強行採決された特定秘密保護法が施行された。そして,今年の通常国会では集団的自衛権の行使容認に関わる関連法の審議がはじまり,原発の再稼働も決定されることになりそうだ。また,財政再建はまったなしであり,消費税引き上げについても2017年4月には必ず10パーセントにするということのようである。消費税増税の理由となっている医療・福祉・介護・年金などは充実どころか悪くなっているのが実態ではないのだろうか。そして,その先にあるのは改憲である。
(白紙委任ではない)
 このように見てみると,今回の選挙は日本の平和と国民生活にとって,きわめて重要な選挙だったように思う。
 大義うんぬんもあるが,選挙がある以上その結果は主権者である私たちがつくるものである。しかしながら今回の選挙は,投票率に現れているように,半分近くの有権者は投票しなかったのである。戦後最低の投票率であり,その結果としての議席数である(自民党の得票率は48パーセント,有権者総数の25パーセントでしかない。まさしく,小選挙区制の「効果」と言える)。
 近年の低投票率の原因は,小選挙区制度などの選挙制度の問題や,今回の「解散の大義」に見られるように選挙の争点が明確であるかどうかといった問題もあるものとは思うが,民主主義の根幹にかかわることであり,国民一人ひとりが深刻な課題として考えていかねばならないと思う。
 ともあれ,選挙の結果は与党に大きな力を与えたが,投票率に現れているように国民の積極的な支持の結果ではないとも思えるし,安倍総理には国民多数の声に耳を傾けた政権運営をしていただくようにお願いしたい。よもやこれまで述べてきたような,国民の多くが危惧しているようなことを,「これからは何でもできるぞ」とばかりに突っ走るようなことだけはされないように・・・・・・。
 だれも白紙委任はしていないのだから。

 ・・・・ここで私が心配していることが,杞憂に終わることを祈りたい・・・・

−霧島神宮にて−





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