=== 新春随筆 ===

       身体髪膚と星々と




中央区・中洲支部
  (整形外科米盛中央駅クリニック) 米盛  學

 整形外科医として長年人間の身体に向き合っていると細密図のように多様で緻密にできた人体のメカニズムから,壮大なる宇宙の神秘に思いが募るようになったようだ。
 まことに「神は細部に宿りたまう」の至言どおり宇宙の万物を造った造物主の偉大さに感じ入るばかりである。「ミクロの決死圏」という古いアメリカ映画をご記憶でしょうか。脳内出血で危篤状態に陥った患者を救うため顕微鏡サイズにミクロ化した5人の医療チームが体内を巡るファンタスティックな道中が手に汗握る驚きの連続であった。宇宙旅行もかくやと思わせるSF映画であったが連想するのは「2001年宇宙の旅」。これらは宇宙そのものに出かけた宇宙船クルーの冒険話。コンピューターが怒ってしまってクルーに語りかける場面に度肝を抜かれたものだったが,もうかれこれ45年以上も昔の映画の話だ。
こんな懐旧の情に浸るのも,二基の種子島・内之浦発射基地のテレビ実像と想いが重なり,宇宙に最も近いこの鹿児島の地に住むご縁に感謝だ。
また最近映画にもなった人工衛星「はやぶさ」。戦後東京行き寝台夜行特急列車と同じ名前だ。
今や,はるか悠久の宇宙のかなたロマンをかきたてる壮挙は子どもから高齢者まで胸が躍るまさしくサスペンス。天駆ける思いだ。
ここで,少し天体に憧れた童心に返り昔の知識をおさらいしてみることとする。
 約150億年前,針の先より小さい物質の大爆発がビッグバーンであると言われ宇宙の始まりとされている。
 その後宇宙は果てしなく膨張し,光のエネルギーが冷やされ,水素ヘリウム(太陽の構成物質)を造り,さらに温度が低くなると,近い者同士が互いに集まり,無数の塊を造る。密度の大きいところでは物質が固まりあい,原子核反応を起こし始め,太陽(恒星)が誕生。
 宇宙空間に存在する,限りなく存在する一切のものを森羅万象とも呼ぶことはご高承のとおりである。
恒星たる太陽を中心にこれを廻る8の惑星があり,水星,金星とつづき3番目に近いのが我々の豊かなる地球なのである。近いといっても1億4千960万キロ,文字どおり天文学的数字の距離をもつ。ちなみに最も遠いのは海王星で,44億9千万余キロ,気の遠くなるような距離をもつ太陽系と言われ,まさに宇宙規模と言われる(図をご参照ください)。
 これら太陽系以外でも200個以上のお星様が発見されているそうな。想像を絶する宇宙の神秘・謎を追うと,人命果てるなど瞬時にも値しない。
 次に視点を変えて昔から人間になじみの深い月を歴史的に探索してみよう。
 月は地球を1カ月かけて1周しながら満ち欠け見せつつ,繰り返し廻る地球の衛星だ。古今東西古来より詩歌に吟詠され,さまざまなおとぎ話や小説等に描かれ親しまれている。人情世情描写にぴったり合うのだろう。「月見て一杯」「今宵は仲秋の名月,初恋をしのぶ夜」「満月の夜,金かね目めで別れを告げた金色夜叉」「今宵見る月はこの月の月」歌や映画と枚挙にいとまなく,「月よりの使者」「月がとっても青いから」「月が鏡であったなら」「How high the moon」「moonlight serenade」「honey moon」などなど・・・。
 むかしむかしの日本人は満月を見て「ウサギが餅つきをしている姿」をイメージしたらしいが,昔も今も仰ぎ見る月に変わりはないらしい。時は移ろい時世は変われども,何故か変わらぬ満月の月。人に望むもの。永遠に月見る満月の如し。「変わらぬ心」として教示するのかと思うと美しき名月に思う心が澄み切ってくる。
 あたかも,1969年(昭和44年小生が生まれ在所の草牟田の地に開業準備で追われる頃)USA打ち上げの人工衛星アポロ11号に乗ったニール・アームストロング宇宙飛行士が人類初の月面着陸を実現した。以来,地球は太陽を45回廻転している。すなわちこれ45年の歳月が流れたと言うわけだ。
 その成功にたどりつくまで,米・ソ間の宇宙戦は宇宙科学の大競争時代もたどったが,ソ連の1961年ボストーク1号に乗ったガガーリン世界初有人宇宙飛行士の名言「地球は青かった」。
菅原都々子が唄った「月がとっても青いから」の流行歌に拍車をかけ,今でも良く,元青年男女共にカラオケで懐かしのメロディーと,人をわかせてきている。
そして今なお,宇宙ステーション開発は進み,軍事目的化されていた人工衛星も,科学衛星・通信・気象などの分野で現代社会の生活に欠かせない存在となっていることは周知のとおりである。
 それはともかく,閑話休題,安倍さんがよくいう美しい日本の国,美しい「かぐや姫」が十五夜の月に昇っていった話や,集合体銀河「天の河」で織姫と牽牛星が年の一度逢瀬を演ずる「七夕伝説」,あるいはまた「パンドラの箱」にまつわるギリシャ神話の数々など,宇宙にまつわる伝説,神話・勧善懲悪を含めた尊く古き類いのお話,お教えが数知れず本当に多い。
 先人達が宇宙に託した夢と願いと希望と知恵。それらが生んだドラマの数々の中に悲哀を覚えるものもある。
 さまざまな星達が秘めている教えを敬い崇拝し,感謝しながらはるかなる天空の彼方に,思いを馳せたいとつくづく思う。稲盛財団主催の第30回京都賞授賞式参列の折,京の古都での二夜。つれづれなるままに羊の新年号に祈りを託そう。
平成26年11月10日





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