鹿市医郷壇

兼題「恥ね(げんね)」


(422) 永徳 天真 選




 城山古狸庵

急な客きパンツ一丁ん恥ね態
(急なきゃき パンツいっちょん 恥ねざま)
(唱)女んお客かキャー言て叫っ
(唱)(おなごんおきゃか キャーつておらっ)

 この情況を想像するといろいろと考えられますが、暑い日の昼寝どきとか、風呂上がりだったり、家の中ではなく庭に出ていたのかもしれません。
 たまたまそんな格好の時、来た客とご対面でしたが互いにびっくりだったことでしょう。そんな一瞬時間が止まったような様子が目に浮かんできます。




 印南 本作

真実つ知っ知ったかぶいが恥ねこっ
(まこつしっ しったかぶいが 恥ねこっ)
(唱)反省やすいが又じゃ悪り癖
(唱)(はんせやすいが またじゃわり癖)

 他人の話をよく聞く人もいれば、よく聞かない人もいます。その結果が、話の内容を十分理解したか、中途半端に理解したかの違いとなります。
 この後者が、知ったかぶりをしてよく喋ります。そして後から、その話の間違いに気付いて後悔をすることになるのです。互いに気を付けたいものです。




上町支部 吉野なでしこ

恥ねこっ服く前後気が付かじ
(恥ねこっ ふくまえうしと 気がつかじ)
(唱)あいた呆けじゃち一人で笑るっ
(唱)(あいたぼけじゃち ひといでわるっ)

 よほど急いでいたのか、何か他の事を考えていたのか、下着ではないこともないですが、上着ではTシャツやセーターでしょうか。着たら違和感がありそうなものですが、脱ぐときに気付いたのでしょう。もしかして、気付いた人がいたかもと思うと恥ずかしい限りです。外出の時は鏡の前で要チェックということでしょう。


 五客一席 紫南支部 二軒茶屋電停

よかぶって勘定が足らじ恥ねこっ
(よかぶって かんじょがたらじ 恥ねこっ)
(唱)慌こっ出せた追加ん諭吉
(唱)(せしこっ出せた 追加んゆきっ)


 五客二席 清滝支部 鮫島爺児医

掛け持っで祝に恥ね出た悔袋
(かけもっで いわいに恥ね でたくやん)
(唱)あら間違ごたち汗がぞっぷい
(唱)(あらまっごたち 汗がぞっぷい)


 五客三席 紫南支部 紫原ぢごろ

週刊誌恥ね写真ぬゆも載せっ
(週刊誌 恥ね写真ぬ ゆものせっ)
(唱)あの手この手で低俗く商売
(唱)(あの手この手で ていぞくあっね)


 五客四席 城山古狸庵

はら恥ね機嫌取い話す本気きしっ
(はら恥ね めすといばなす ほんきしっ)
(唱)疑ごを知たじねっかあ正直
(唱)(うたごをしたじ ねっかあしょちっ)


 五客五席 川内つばめ

肩叩てっ女房と間違ごて恥ねこっ
(肩たてっ かかとまっごて 恥ねこっ)
(唱)振い向かれたや女房よっか美人
(唱)(ふいむかれたや かかよっかシャン)


   秀  逸

清滝支部 鮫島爺児医

道つ聞たや此処じゃち恥ね本人じゃった
(みつきたや ここじゃち恥ね ぬしじゃった)

破れ服く恥ねも無して威張っ着っ
(破れふく 恥ねものして いばっきっ)

夫婦喧嘩恥ねも無して大か声
(みとげんか 恥ねものして ふとか声)

顔と名前を思め出さんよな恥ね年齢
(つらとなを おめださんよな 恥ねとし)


紫南支部 紫原ぢごろ

慰安婦ん誤報を恥ねかすい朝日新聞
(慰安婦ん ごほを恥ねか すいあさひ)

泣っ喚っ恥ねも無かか馬鹿県議
(なっおめっ 恥ねもなかか 馬鹿県議)

パソコンぬ恥ねどま無し孫げ習るっ
(パソコンぬ 恥ねどまのし まげなるっ)


 川内つばめ

定期切れ改札つ出れじ恥ねこっ
(定期切れ かいさつでれじ 恥ねこっ)

相撲とい回しが取れっ恥ねこっ
(相撲とい まわしがとれっ 恥ねこっ)

ラブレター渡し間違ごて恥ねこっ
(ラブレター 渡しまっごて 恥ねこっ)


 城山古狸庵

会見で恥のも無して泣た県議
(会見で げんのものして ねた県議)

恥ねこっ振り込め詐欺い二度嵌っ
(恥ねこっ 振り込め詐欺い 二度うたっ)
 

上町支部 吉野なでしこ

恥ねこっ教授ん横で腹が鳴っ
(恥ねこっ 教授ん横で 腹がなっ)

恥ねこっ財布を手い持っ探せ方
(恥ねこっ ふぞを手いもっ さがせかた)


 薩摩郷句鑑賞 80

騙されっ嫁た割いもてた三十年
(だまされっ きたわいもてた さんじゅねん)
             上釜 小波

 仲人のうまい口に乗せられたのか、プロポーズの甘い言葉に嘘があったというのか、とにかく、結婚してから失望したのであろう。
 しかし、満点の人間なんていないし、不満や失望はお互いさまである。足りないところを補い合いながら、夫婦生活は営まれるものであろうから、不平や失望がだんだん薄れ、いつの間にか十年二十年の歳月が流れたのであろう。そして、騙されたと思ったことを、あるいは懐かしく思っているのかもしれない。


再婚も面倒でで今ん亭主し我慢っ
(再婚も めんでで今ん てしきばっ)
             長瀬 慶子

 「六十年の不作」なんて思っているのは、亭主の方だけと思っていたら大間違い。「こんな男になんで惚れたんだろう」と後悔しながらも、子どもがいるから我慢していたり、いい年をして離婚するのもみっともないからと、諦めている奥さんたちも多いのかもしれない。
 この句の場合、離婚をして、再婚するのも面倒くさいし、不満だが、この亭主に我慢しようというわけである。しかし、ほんとうは首ったけなのに、おどけているのかもしれない。


遅れたや取いかけ目かけ猪口が来っ
(遅れたや 取いかけ目かけ ちょっがきっ)
             吉丸セツ子

 よく鹿児島では、「駆(か)けつけ三杯(さんべ)、来(く)い来(く)い九杯(きゅうへ)」などと言って、宴会に遅れてきた人に、集中的に飲ませる。決して遅れた人をいじめるためではなく、すでに酔っている人々と調子を合わせられるように、酔わせてやろうという気持ちからであろうと思う。
 「取いかけ目かけ」は、「よってたかって」というような意味で、同じ酒量でも、たてつづけに飲まされると、酔いが速いものである。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋



薩 摩 郷 句 募 集

◎新年号
 題 吟 「料理(じゅい)」
 締 切 平成26年12月1日(月)
◎2 号
 題 吟 「 寒み(さみ)」
 締 切 平成27年1月5日(月)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


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