天
城山古狸庵
痛て言たやけ死ませんがち厳し医者
(痛てちゅたや けしませんがち いみし医者)
(唱)誠てあっさい言うもんじゃらい
(唱)(まこてあっさい ゆうもんじゃらい)
病気や傷などによる肉体的な苦しみの痛みはいろいろですが、この場合は、外傷や骨折の部類でしょう。
医者にしてみればたいしたことのない傷なので、わめき散らす患者を一蹴でした。本人もその一声に何か安堵したようで、痛みも和らいだことでしょう。中七の表現がすごく効いています。
地
川内つばめ
よかぶっせ奢っみたどん痛か財布
(よかぶっせ おごっみたどん いたかふぞ)
(唱)牛丼じゃれば安すで済んだて
(唱)(牛丼じゃれば やすで済んだて)
数人で行った居酒屋での飲み会だったのかもしれません。気分が良かったのか、少々懐が暖かかったのか「今日は俺おいが奢おごっで」と、口に出てしまいました。
いざ会計をすると、出費も多く万札も消えてしまいました。焼酎の勢いに負けて奢ってしまったことを後悔したのは、言うまでもありません。
人
印南 本作
次は俺注射は痛てち泣っ子供
(次はおい 注射は痛てち なっこどん)
(唱)宥め騙けっサッ片付けっ
(唱)(なだめだまけっ サッ片付けっ)
児童らの予防注射の光景でしょうか。校医が学校に来て、注射が始まりました。
順番に並んで待っていますが、注射嫌いの子どもは不安でいっぱいです。自分の番になり、我慢も限界がきてとうとう泣き出してしまいました。泣き虫と知られたことが一番悔しいでしょうが、待つ身のリアルさがよく出ています。
五客一席 城山古狸庵
敬老会どこそこ痛てち言っ弾ん
(けいろかい どこそこ痛てち ゆっはずん)
(唱)どん病院が良かの悪いのち
(唱)(どん病院が よかのわいのち)
五客二席 川内つばめ
腹痛はただん食過ぎち恥ねこっ
(はらいたは ただんくすぎち げんねこっ)
(唱)心配は飛だどん診断いがくっ
(唱)(せわはつだどん みたていがくっ)
五客三席 上町支部 吉野なでしこ
け転んで痛てよっか先き見回せっ
(けころんで 痛てよっかさき みまわせっ)
(唱)誰も見ちょらじ少す拍子抜け
(唱)(だいもみちょらじ ちす拍子抜け)
五客四席 紫南支部 紫原ぢごろ
痛か目い遭たとい騒動な自衛権
(いたか目い おたといそどな 自衛権)
(唱)戦争ん盾いないこつ祈っ
(唱)(せんそんたてい ないこついのっ)
五客五席 清滝支部 鮫島爺児医
上手じ抱けば予防注射も痛とは無し
(じょじ抱けば 予防注射も いとはのし)
(唱)力を抜けばあっ言うめ済ん
(唱)(力を抜けば あっちゅうめすん)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
空手でん瓦割い手は痛てごあっ
(空手でん かわらわい手は 痛てごあっ)
痛て言てん我慢らんか言て打っ注射
(痛てちゅてん きばらんかちゅて うっ注射)
痛て処い病気ん素因は隠れちょっ
(痛てとこい やんめんもとは かくれちょっ)
上町支部 吉野なでしこ
人前で痛てち言われじ我慢い方
(人前で 痛てちいわれじ きばいかた)
腰痛も吹っ飛ばそそなよか当たい
(こしいたも ふっとばそそな よかあたい)
紫南支部 紫原ぢごろ
痛て所い届かじ歯痒い張い薬
(痛てとこい とじかじはがい はいぐすい)
痛てめ遭た覚醒剤を又も再犯っ
(痛てめおた 覚醒剤を 又もやっ)
紫南支部 二軒茶屋電停
あひこそこ痛てち湿布ん世話いなっ
(あひこそこ 痛てち湿布ん 世話いなっ)
痛て痛てち考げっ余計痛て注射
(痛て痛てち かんげっじんじ 痛て注射)
城山古狸庵
痛かどんナースん手前言あならじ
(いたかどん ナースん手前 ゆあならじ)
作句教室
子とじゃれっ三日後気付っ節痛てち
まず、この句の表現から内容を確認すると、「子とじゃれて節が痛いと三日後に気付いた」という意味にとれます。
この句には、作句する上での課題がいくつかあるようですので検討してみます。
上五・中七の表現は問題がないですが、注意をしたいのは下五の「節痛てち」という表現です。
これは共通語では「節が痛いと」ですから、方言では「節が痛てち」となり、話ことばでの表現が基本となります。
例えば「俺おや頭びんたが痛いてがよ」とは言いますが、「俺おや頭びんた痛いてがよ」とは言いませんので、この助詞「が」が大事で、省略することはできません。助詞「が」が省略されても、表現の意味は分かりますが、やはりことばを正しく表現することが第一です。作句では字数の制約がありますので、表現を変えたり、表現の組み替えをしたりする推敲が必要となります。
またこの下五の表現の問題点は、語尾が「〜と」の助詞で止められていることで、まだ後にことばが続くような表現の下五の止め方は、しまりのない句となります。下五の表現は、名詞や動詞でピシャッと止めるのが基本ですので、例えば「残念で」とか「やっせんが」などの表現の下五は避けなければいけません。
また、句の全体を見ると「じゃれて節が痛くなった」ということですが「節が痛くなるほどのじゃれ合い」を、読み手は想像できないのではないかと考えます。読み手にその実感が湧かなければ、作品の評価は得られないことになります。この「じゃれっ」という表現が適確であるのかを検討する必要がありそうです。
原句を元に、次のように少し表現を変えてみました。参考にしてみてください。
子と遊っ三日後気付っ痛か節
(子とあすっ 三日後きづっ いたかふし)
子と遊っどこそこ節が痛とけなっ
(子とあすっ どこそこふしが いとけなっ)
薩 摩 郷 句 募 集
◎10 号
題 吟 「狡じ(えじ)」
締 切 平成26年9月5日(金)
◎11 号
題 吟 「恥ね(げんね)」
締 切 平成26年10月6日(月)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
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