緑陰随筆特集
私のライフワーク 〜家庭と仕事と車椅子バスケットボール〜
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鹿鹿児島県言語聴覚士会
(社会医療法人緑泉会 リハビリテーション病院吉村 言語聴覚士) 石原 禎人
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2014年も早いもので半年以上が経過しました。1978年生まれの私にとって,今年は3度目の年男の年となります。この節目の年に鹿児島市医報へ寄稿する機会をいただき,現在の生活,私にとっての3つのライフワークについて考えてみることにしました。
まず一つ目のライフワークは家庭です。言語聴覚士となり約8年,30代を迎えてからは生活の中でもさまざまな変化がありました。その最も大きなものが,結婚そして娘の誕生です。早いもので結婚して3年,娘も2歳となりました。独身時代は全てにおいて自分中心の自由気ままな生活でした。しかし,結婚して妻と2人の生活,さらに娘が誕生して3人の生活,独身時代とは生活が激変したことは言うまでもありません。激変と表現すると大袈裟すぎるのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが,結婚するまで本当に自由気ままな生活をしていた私にとって,この変化は大きなものでした。もし妻がこの記事を目にしたら,「今だって十分自由気ままにしているじゃない!」と言われそうな気もしますが・・・。
しかしこの変化は,言うまでもなく私にとって今までの人生で最もプラスになっているものです。支えるべき家族の存在が,その他2つのライフワークに対するモチベーションを今まで以上に高めてくれています。
二つ目は仕事です。現在の職場に勤務するようになり3年半が経ちます。経験を重ねるごとにセラピストとしての責任の重大さ,難しさに悩みながらも,上司や同僚に支えられながら充実した日々を送っています。家庭・育児との両立に時間に追われながら少し悩むこともありますが,セラピストは向上心を失ってしまったら,成長はないと思っています。時間を有効に使いながら学ぶ気持ちを忘れず,これからも患者と向き合っていきたいです。
9月には新病院への移転も控えており,環境が変化することへの不安もあります。しかし,新しいことにチャレンジすることの楽しみの方が大きいです。この貴重な時期にこの職場で仕事ができることを嬉しく思います。
三つ目は車椅子バスケットボール(椅子バス)です。コート上の格闘技とも呼ばれるこの競技はパラリンピックや映画,漫画にも取り上げられるなど最近注目を集めています。椅子バスは1950年代頃にグッドマン博士により脊髄損傷患者のリハビリテーションの一環として始まりました。現在は競技性が重要視されるようになり競技スポーツとして全国各地で盛んに行われています。馴染みのない方にとっては,障がい者スポーツというイメージが当然あるかと思いますが,現在は健常者でも競技人口が増加しています。椅子バスの魅力は,その迫力や競技性はもちろんのこと,障がいの有無に関係なく同じ土俵で真剣勝負ができるという点にもあると私は思います。鹿児島県においても,現在,障がい者チーム2チームと健常者チーム1チームが活動しており,レベルアップを図るために切磋琢磨しています。
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椅子バスの仲間たち
(前列左端の青ジャージが筆者)
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椅子バス試合風景
(白ユニフォームの3人のうち真ん中が筆者)
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私と椅子バスとの出会いは約6年前,以前勤務していた病院の同僚からの誘いでした。日常生活や仕事に支障はありませんが,私も下肢に障がいがあります。体を動かすことは好きでしたが,椅子バスと出会うまでスポーツの中で本当の真剣勝負を味わったことのなかった私は,すぐに椅子バスの虜になりました。チームメイトの中にはさまざまな理由から車椅子生活を送っているメンバーも当然います。そんな仲間との出会いを通して本当の意味でのバリアフリーとは何なのかということを身をもって学ぶこともできました。この経験は言語聴覚士として患者に向き合う自分にとって,とても大きな意味のあるものとなっています。
私たちは幼いころから「体の不自由な人には親切にしましょう」と教えられます。しかし,その「親切」という言葉の真意は曖昧であることをメンバーとの関わりを通して知ることができました。その人が本当に困っていることは何なのか?その人にとって必要以上の「親切」は本当の意味でその人を支えることにはならないということを学んだことは私のキャパシティーを広げてくれました。チームでは県内のさまざまな学校に出向き車椅子バスケットボール体験教室も実施しています。この教室を通して私なりに本当の意味でのバリアフリーを子どもたちに伝えていきたいと思います。
また,世間では2020年に東京オリンピックの開催が決定したことが大きな話題となっています。その陰にかくれてあまり知られていないかもしれませんが,同年に鹿児島で国体も開催されます。その時42歳・・・。かっこいい父親の背中を子どもに見せたい!!という父親としての見栄も少しあります。体力のピークはとっくに超えているとは思いますが,現役選手として国体に出場できるよう練習にも励みたいと思います。
ほぼ椅子バスの話になってしまいましたが,家庭・仕事・椅子バス,この3つは私の生活の中でどれも欠くことのできないものです。この3つのライフワークがあることで,それぞれが相互に作用し合いそれぞれの活力につながっていると思います。3つのバランスをしっかり取りながら,父親として言語聴覚士として椅子バスプレイヤーとしてこれからの人生も充実させていきたいと思います。

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