鹿市医郷壇

兼題「惜れ(あったれ)」


(413) 永徳 天真 選




 武岡 志郎

惜れち溜め込っ後にゃ塵屋敷
(惜れち ためくっのちにゃ ごんやしっ)

(唱)近所迷惑どま頭て無し
(唱)(近所めいわっ どまびんてのし)

 塵置き場に目をやると、まだ使えそうな物も捨てられています。普通の人はしませんが、「ああ勿体ない」と、家に持ち帰っている相当な変わり者です。
 黙々と溜め続けて塵の山となっています。これは、常識外れの行動ですが、生活が豊かになり、物があふれている使い捨て時代への、一つの警鐘かもしれません。




紫南支部 二軒茶屋電停

惜れち全部食たなあ糖が出っ
(惜れち ずるっくたなあ 糖がでっ)

(唱)我が事じゃっでそや自己管理
(唱)(わがこっじゃっで そや自己管理)

 食はバランスと量が大事です。出す料理も食べ残しが出ないように、作る適量を考える必要があります。
 また、間食のお菓子類は、全部食べずに、賞味期限を過ぎて捨てることも多いです。それこそ勿体ないと、残り物を完食してしまうのでしょう。要は、食べ過ぎないことが肝心です。




上町支部 小石 助六

風呂れ入い時間も惜れ受験生
(ふれはいい とっも惜れ 受験生)

(唱)追い込み必死気ばっかい焦っ
(唱)(追い込み必死 気ばっかいせっ)

 入試の時期ですが、受験の前は不安でいっぱいですから、ひたすら集中して問題集に取り組み、また時間との戦いでもある正念場です。
 そんな受験生の立場がよく捉えられた句です。家族は皆温かく見守り、応援していますので、後は本人の頑張りに期待するだけでしょう。


 五客一席 清滝支部 鮫島爺児医

二塁迄走っ惜れアウて成っ
(二塁ずい はしっ惜れ アウてなっ)

(唱)応援団もがっかい溜息
(唱)(応援団も がっかいういっ)


 五客二席 城山古狸庵

惜らし飲ません薬ゆ沢山貰ろっ
(惜らし のませんくすゆ ずし貰ろっ)

(唱)少す良うなれば大方塵箱
(唱)(ちすゆうなれば うかたごんばこ)


 五客三席 上町支部 吉野なでしこ

惜らか袖も通さじ小こなっ
(惜らか 袖もとおさじ ちんこなっ)

(唱)頭て無かった変わい体型
(唱)(びんてなかった かわい体型)


 五客四席 上町支部 小石 助六

都知事選血税ゆ使こっ惜らし
(都知事選 けつぜゆつこっ 惜らし)

(唱)粗をば出せた責任な大て
(唱)(あらをばだせた 責任なふて)


 五客五席 川内つばめ

惜らか計画無しの長げ休ん
(惜らか 計画無しの なげやすん)

(唱)何よすいかいち 毎日考げっ
(唱)(なよすいかいち めにっかんげっ)


   秀  逸

 城山古狸庵

腕ん良か医者あ惜れ五十で逝っ
(腕んよか 医者あ惜れ ごじゅでいっ)

惜らし言て山めなけた引出物
(惜らし ちゅてやめなけた ひっでもん)

惜らし国体い大か税ゆ使こっ
(惜らし こくたいふとか ぜゆつこっ)


清滝支部 鮫島爺児医

稀勢の里下位に惜れ星す落てっ
(稀勢の里 下位に惜れ ほすおてっ)

大て魚が跳ねっ惜れ切れた糸
(ふていおが はねっ惜れ 切れた糸)

残飯ぬ惜れち言っ食う爺婆
(ざんぱんぬ 惜れちゆっ くうじばば)


上町支部 吉野なでしこ

惜れち捨せやならじ肥満女房
(惜れち うっせやならじ だんべかか)

惜れち蔵た場所をば捜し方
(惜れち しもた場所をば さがしかた)


 武岡 志郎

スピードが惜れ命つ短こしっ
(スピードが 惜れいのつ みしこしっ)


 印南 本作

あとひとっ惜れくじを持っちょっど
(あとひとっ 惜れくじを もっちょっど)


 薩摩郷句鑑賞 73

猪待っの鉄砲は膝で汗をけっ
(ししまっの てっぽは膝で 汗をけっ)
              下小園客馬車

 あとしばらくで猟期も終わるが、ハンターにしてみれば、最後の獲物もねらって、落ち着けない日々が続いているにちがいない。
 猪にとっては、亥年だというのに、誠に迷惑千万な話。射翳(まぶし)で、じっと待ちぶせている銃口があるのだから、うかうか猪突猛進もできないことだろう。
 この句は、息を殺して、猪の現れるのを待っている、緊張した表情や、葉ずれの音さえ聞こえそうな森の様子が目に浮かんでくる。


泥棒猫庭箒き地面を叩かせっ
(ぬすとねこ にわぼきじだを 叩かせっ)
              鐘ケ江左利

 この頃の飼い猫は、ネズミを捕ることを知らないと言われる。美食に慣れ、苦労してネズミを捕らなくてもよくなったのだろうか。
 しかし、野良猫は、自分で食べるものをさがさないかぎり、誰も食べさしてはくれない。だから、隙をみては台所を狙い、飼っている小鳥を襲う。生きるための知恵というものだろう。
 その泥棒猫を、庭箒で叩きのめそうとしたのであろうが、ひらりと身をかわして、地面を叩かせたのである。くやしがる顔が目に浮かぶ。


大て保険喧嘩ん後は寝やならじ
(ふて保険 けんかん後は ねやならじ)
              長瀬 慶子

 友人に高額の保険を掛けて、海に突き落とした事件、愛人と共謀して、保険金目的の結婚をして、主人を殺害した事件などが起こってみると、夫婦喧嘩を派手にやった後など、おちおち眠れないという気持ちにもなろうというもの。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋

薩 摩 郷 句 募 集

◎4 号
 題 吟「指(いっ)」
 締 切 平成26年3月5日(水)
◎5 号
 題 吟「鵜呑ん(ぐのん)」
 締 切 平成26年4月5日(土)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


このサイトの文章、画像などを許可なく保存、転載する事を禁止します。
(C)Kagoshima City Medical Association 2014