新年明けましておめでとうございます。
会員の皆様方には,ご家族はじめ医療施設の職員の方々ともども,晴れやかなお気持ちで,新しい年をお迎えのことと,お喜び申し上げます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
昨年の6月末に,鹿児島市医師会長を拝命し,瞬く間に半年が経過いたしました。昨今,日本の医療情勢は一段と厳しくなり,その方向性も不透明で,それらは,鹿児島市医師会を取り巻く状況へも大きな影響を及ぼしています。しかしながら,新年のあいさつに際し,鹿児島市医師会の昨年を振り返り,そして今年の抱負につなげたいと思います。
鹿児島市医師会は,民法で定められていた公益法人制度の抜本的な見直しに伴い,公益社団法人を選択し,認定後2年が経過しようとしています。鹿児島市医師会は1,400人以上の会員と500もの医療施設を抱え,九州首市でも福岡市に次ぐ規模(入会率では鹿児島市が高位)で,健康・医療面において,市政など公的な割合が大きく,また,我々の地域医療そのものが公的であるがゆえの公益社団法人への変更でした。医師会として活用できる資産も確保でき,公益性を重視し,発展していくことを願っております。公益社団法人の認定を受け,初の監査でも法人運営としては大きなトラブルの指摘はなく,比較的スムーズにスタートできたと思います。むしろ,今まで以上に医師会の活動の公益性が認められた形になったと思います。
公益法人に移行して大きく変わったことは,会員の意見の表出に関することで,特に役員の選挙や予算・決算,その他議決事項は,会員の代表としての代議員に委ねられるようになったことです。総会という会員の総意を求める場がなくなり,代議員会で代議員による決定がなされるようになりました。代議員は,各区から会員の代表として選出されますが,代議員一人一人の役割と意思が今まで以上に重要になったと思われます。それだけに,代議員懇談会や,今まで行われていた総会に代わる,会員との意見交換会などを行うことで,執行部の抱える問題や考えなどを,しっかり代議員や会員の先生方へも伝え,また支部会などでも話題にしていただき,広く会員の意見などを汲み上げることが大切だと思います。
このような中,昨年の4月には公益社団法人になってはじめての代議員による役員選挙がなされましたが,選挙そのものには,大きなトラブルはありませんでした。しかし,方法などにご不明な点や不可解な点があったのではないかと思います。今回の役員の任期は,日本医師会や鹿児島県医師会とその任期を合せることの必要性から,今回に限り任期は1年間といたしましたので,今年の4月には再び選挙を行い,6月には新たに執行部を改組せねばなりません。しかしながら,昨年行われました現在の執行部の選出に際して,例年通り14人の募集のところ,理事が1人欠員となり,定款で定めた定数13人ギリギリでのスタートとなりました。鹿児島市医師会はその構成規模から,共同利用施設の運営,救急医療,地域医療や学校保健業務をはじめ,市や県の保健衛生業務にも多く関与し,理事の担当業務も多岐にわたります。それらを勘案した各担当の割り振りに苦慮いたしました。医師会の抱える厳しい現状をふまえ,理事の忙しさや責任性も増しております。理事は,自院あるいは勤務先の多忙な仕事を維持しながら執行部の業務にあたらねばなりませんが,業務執行理事として,地域医療で活躍中の様々な経験や意見が,会員のための医師会への貴重な原動力となります。今年の役員選出では,定員を満たせるように,ご配慮のほどよろしくお願いいたしたいと存じます。
一方,共同利用施設の中で,鹿児島市医師会臨床検査センターはここ数年において経営状況が著しく険しくなりましたが,一昨年前,苦渋の選択から厳しいリストラを行い,ようやくその効果が見え始めております。しかし,新執行部がスタートした直後に,大学病院他の臨床検査検体を紛失するという失態を起こしました。大学病院や関係諸機関はもとより,会員の先生方には,多大なご不安とご迷惑をおかけいたしました。新たな気持ちで経営改善に着手し,その効果が出始めた矢先であっただけに,気の緩みを深く反省し,ご利用いただいている先生方の信頼,検体そのものの大切さ,個人情報の管理,委託業者との連携など,改めて考え直し,二度と起こさないように,周知徹底をはかりました。
鹿児島市医師会病院は,開設30年を迎え,医師不足や診療の偏り,そのニーズの変遷の影響を強く受け,ここ数年の間に急激に経営状況が不安定になっていることは,ご存じだと思います。医師不在から小児科や産科の閉科と,呼吸器内科の縮小を余儀なくされ,会員のための病院として,診療科目のカバーに影響が出ましたが,目下,既存病棟の再編成を行い,緩和ケア病棟の新設や急性期リハビリテーションの強化,外部のコンサルタントの助言など,新たな経営改善策を企画し鋭意取り組んでいるところです。市立病院の新築移転や大学病院の救急医療への参画などをふまえ,鹿児島医療圏の再構築も話題になっておりますが,会員のための医師会病院としての存在意義と価値そしてスタンスをしっかり重視しながら,慎重に臨んでいかねばならないと考えております。医師会病院の安定化,各種連携,会員と地域医療貢献へのアイデアなど,ご意見をいただけましたら幸いです。
さて,昨年の最大の難問は,まだ確実な解決にはいたっておりませんが,某法人グループが関与した谷山の県農業試験場跡地の利用問題として再び浮上し,当該地域の南区はむろん,市医師会全体,県医師会全体の問題として惹起されたことでした。会員の先生方とも,できるだけ新しく詳しい情報を交換共有し,意見や対策を伺いました。そして,県医師会との連名で,正しい医療と確実な医療を堅持し,鹿児島の地域医療を守るための我々医師会の考えを鹿児島県へ強く提示いたしました。この問題は,現在のところ医療を越えて多方面へ波及しておりますが,我々は医師という専門集団であり,今後の鹿児島の正しい医療が発展・維持することを第一に考え,慎重に,そして強い志で望まねばならないと思います。
ところで,今年の最も注目すべきは,やはり,4月の診療報酬改定と,消費税増税による地域医療への影響だと思います。安倍内閣の経済政策(アベノミクス)によりデフレ不況からの脱却や景気回復が期待される中,昨年の暮れに厚労省が「医療経済実態調査」なるもので,「2012年の医療機関の経営が前年に比べ,診療所も病院も大きく黒字基調であった」旨の報告を出したことは,甚だ納得のいくものではなく,その根拠を示してもらいたいものですが,財務省の医療費抑制の資料に当然のごとく利用されることが強く懸念されます。また,昨年11月下旬の経済財政諮問会議では社会保障費の抑制策を検討するなど,診療報酬の在り方をはじめ,社会保障の歳出合理化,効率化に最大限取り組んでいく必要があるとし,日本医師会の主張と真っ向から対峙しており,消費税増税の兼ね合いも含め,地域医療へのマイナスの影響にならないよう強く願うばかりです。そのために,昨年の参議院議員選挙において,会員の先生方の多大なるご協力をいただき,医師連盟も全力を挙げて臨んだわけですが,経済発展をねらったアベノミクスにより医療が市場原理主義に侵食されることのなきよう,今こそ,地域医療の実情はもちろん,我々医師会の信念や要望をしっかり国政に反映してもらわねばならないと思います。
最後に,今年の鹿児島市医師会には大きな楽しみもございます。築45年近く経ち老朽化が著しかった加治屋町の鹿児島市医師会館は今やきれいに撤去され,同土地での新会館の建設に向けて着実にその計画が進んでおります。先の大震災の復興施策に伴う建築業界の状況で少々工期が遅れているようですが,今年度もしくは来年度中には,素晴らしい新会館が竣工する予定です。九州首市の中でも,2番目に大きい鹿児島市医師会にふさわしい,立派な会館が出来上がるものと,ご期待くださいませ。
昨年一年は,巳年の蛇に巻きつかれたかのごとく,苦悶苦悩の連続でした。しかし,依然として医療情勢は厳しい現状ですが,受け身ではなく,積極的先取り的な対応が大切ではないかと思います。本年の干支「午年」にあやかり,この疲弊した医療界に少しでも馬脚の力が与えられることを期待したいと存じます。そして,会員の皆様方と,医師会を取り巻く諸問題の情報共有や意見交換を適時行い,皆で真摯に望むことで,より安定した地域医療へと発展していくものと信じておりますので,ご理解とご協力のほど何とぞよろしくお願い申し上げます。
新しい年を迎え,皆様方の平安とご多幸をお祈り申し上げつつ,年頭のご挨拶といたします。

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