天
武岡 志郎
庭箒きな蜘蛛の巣が張っ無精者
(にわぼきな こっの巣がはっ ふゆしごろ)
(唱)ずっさらしがち世間が見ちょっ
(唱)(ずっさらしがち 世間がみちょっ)
竹の細いら枝さを編んだ竹箒は、落葉などを掃くのに便利です。新品は、弾力があり、また幅も広いので掃き心地も良いですが、使うほどに磨り減り、固くて細い箒となりますが、これもそれなりに調法します。
そんな箒を毎日使っていれば、蜘蛛も巣を張ることはないのに、掃除をしない無精者です。当然庭も散れ放題でしょう。
地
市立病院支部 甲突五差路
気が付けば耳の穴かあ出ちょい箒
(気が付けば みんの穴かあ でちょい箒)
(唱)男らしどん見掛けが悪し
(唱)(男らしどん 見掛けがわるし)
耳の穴辺りにわんさかと毛が生えている人を、たまに見掛けることがあります。
大抵の人は、耳を触ったりしたときの感触で、その毛を察知したら抜きますが、長いこと気付かなかったのでしょう。
「箒が出ている」という表現には、少し無理があるようですが、相当数の毛を箒に見立てたところが、ユニークでした。
人
紫南支部 宇宿ガサ医者
掃除機を箒き持っ替えっエコライフ
(掃除機を ほきもっかえっ エコライフ)
(唱)小けこっかあ実践ぬしっ
(唱)(ちんけこっかあ 実践ぬしっ)
いろいろな分野で自然環境保護運動、エコロジーの見直しや実践が行われていますが、まだまだ、一般の人の意識は高いとは言い難いのが現状です。
節電も一つのエコですが、箒を持ち、体を動かすことによって、掃除で部屋が綺麗になることを、より実感していることでしょう。着眼が斬新な句です。
五客一席 城山古狸庵
箒の目を白洲い立てっ待っ日の出
(箒の目を しらすいたてっ まっ日の出)
(唱)氏神様も喜くっおじゃろ
(唱)(うっがんさあも よろくっおじゃろ)
五客二席 川内つばめ
親父かい方が無ち箒で叩かれっ
(親父かい ほがねち箒で たたかれっ)
(唱)将来ちゃ為めない厳しか躾
(唱)(やがちゃためない 厳しか躾)
五客三客 清滝支部 鮫島爺児医
箒捌く見ればやる気が良う出居っ
(ほっさばく 見ればやる気が ようでちょっ)
(唱)集中をしっ念が入っ丁寧
(唱)(集中をしっ 念がいってね)
五客四席 武岡 志郎
箒で追た盆蜻蛉大空れ秋を呼っ
(箒でうた ぼんぼいうぞれ 秋をよっ)
(唱)少とずっじゃが涼し朝晩
(唱)(ちっとずっじゃが すずし朝晩)
五客五席 紫南支部 紫原ぢごろ
マンションに住ん竹箒と切れた縁
(マンションに すんたけぼっと 切れた縁)
(唱)草取いも無で楽じゃが寂し
(唱)(くさといもねで だっじゃがさびし)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
逆さ箒亭主も一緒き連れっ出っ
(さかさ箒 ととも一いっどき つれっでっ)
土俵ん箒きゃ塵掃っじゃ無し描っ美術
(どひょんほきゃ ちりはっじゃのし かっびじゅっ)
箒の目が美事て庭いなあい風情
(箒の目が みごて庭いな あいふぜい)
城山古狸庵
箒の柄ん馬い乗った大将どん
(箒の柄ん うんまい乗った かしたどん)
爺が作っ箒きゃ十年も使こがなっ
(爺が作っ ほきゃ十年も つこがなっ)
紫南支部 紫原ぢごろ
ロボットが箒の代いをさせられっ
(ロボットが 箒のかわいを させられっ)
長尻にこっそい立てた箒か無なっ
(ながじいに こっそい立てた ほかのなっ)
武岡 志郎
逆箒が効かじ酔ろ坊腰しょ据えっ
(さかぼっが きかじよくろぼ こしょすえっ)
物音い寝巻の女房は箒く握っ
(ものおとい ねまっのかかは ほくにぎっ)
紫南支部 宇宿ガサ医者
箒きけ乗っ空れ向こたどん谷き落えっ
(ほきけのっ それむこたどん ほきちゃえっ)
長尻の飲兵衛がニコッ逆さ箒
(ながじいの のんべがニコッ さかさ箒)
印南 本作
レール掃除掃除機よっか箒が調法
(レールそっ 掃除機よっか 箒がちょほ)
紫南支部 二軒茶屋電停
昔しゃ魔女今じゃハリポタ箒で飛っ
(むかしゃ魔女 今じゃハリポタ 箒でとっ)
薩摩郷句鑑賞 69
横道な猫叱ったしこずっきし逃げっ
(おどな猫 がったしこずっ きし逃げっ)
新原 幹竹
いわゆるどろぼう猫というのは、魚でもくわえると、それなりの知恵があって、一目散に逃げるものであるけれども、この猫は、どうも強かなどろぼう猫のようである。
追えば数歩逃げて振り返り、また追えば数歩逃げて振り返りして、「叱ったしこずっ逃げっ」という表現がぴったりなのである。いかにも横着な猫という感じが、中七、下五によく出ている。
手術台痺るっずいの頼いなさ
(手術台 しびるっずいの 頼いなさ)
西原 未笑
大なり小なり、手術となると不安になるもの、まして大手術でもするということになると、なおさらのことであろう。
局部麻酔にしろ、全身麻酔にしろ、手術が始まれば痛くもかゆくもないうちに終わってしまうわけだが、「手術はうまくいくのだろうか」という不安や、「痛くはないかな」という恐怖心が、「痺るっずいの頼いなさ」にこめられているとみてよかろう。
敬老会笑るっ帰ればまた一人
(けいろかい わるっもどれば またひとい)
垂野剣付鶏
きょうは敬老の日、町や村が主催したり、集落などが主催したりして、お年寄りを招いて、いろんな催しが計画されているところが多いだろうと思う。
婦人会の踊りや、青年団の演劇、あるいは子どもたちとのゲートボールなどで、楽しい一日を過ごしたのである。しかし、家へ帰れば、また独り暮らしとは、なんと寂しいお年寄りであろう。胸を刺すような句。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎11 号
題 吟「 冗談(わやっ)」
締 切 平成25年10月5日(土)
◎12 号
題 吟「 時計(とけい)」
締 切 平成25年11月5日(火)
◇選 者 永徳 天真
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鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
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