本年4月に鹿児島大学の学長に就任しました。鹿児島市医師会の皆様には,日頃から本学の教育・研究にご理解とご協力を賜り,深く感謝申し上げます。
【本学の使命と役割】
本学は,長い歴史と豊かな伝統を持ち,その起源は240年前の1773年(安永2年)に設立された藩学造士館にさかのぼります。この造士館では,薩摩藩内の子弟を対象に,当時の最高水準の学問と教育が実施され,「進取の気性」に富む多くの若者を育ててきました。この造士館で学んだ若者達は,我が国の歴史の変革と近代化に大きな役割を果たしました。明治以降も,1869年(明治2年),ウイリアム・ウイリスを校長とする西洋医学校を始め,造士館の名跡を受け継いだ第七高等学校造士館や鹿児島師範学校,鹿児島農林専門学校,鹿児島水産専門学校,鹿児島県立工業専門学校,鹿児島医学専門学校の高等教育機関が設立され,また,戦後の1949年にはこれらの高等教育機関の伝統を受け継ぎ,新制の国立鹿児島大学が発足しました。
現在,9学部と10大学院研究科からなり,約9,000名の学部学生と約1,700名の大学院生(うち留学生約300名),並びに約2,500名の教職員が在籍する西日本有数の総合大学へと発展してきました。これまでに約10万名の卒業生を輩出し,国内はもとより世界の各地で,人類の平和と繁栄ならびに福祉の向上のために大きな足跡を残してきています。また,アジアを中心とした多くの留学生が本学で学び,帰国後は母国の発展のために重要な役割を担って活躍をしています。
【大学憲章と学生憲章】
本学は,2007年に鹿児島大学憲章を制定し,“学問の自由と多様性を堅持しつつ,自主自立と進取の精神を尊重し,地域とともに社会の発展に貢献する総合大学”を目指しています。特に教育においては,“高い倫理性と社会性を備え,向上心を持って自ら困難に立ち向かい,国際社会で活躍しうる人材を育成する”ことを掲げています。2011年には,学生達自ら起草した鹿児島大学学生憲章が制定され,学生の行動指針として“進取の精神の継承,地球的視野の涵養,互いの友情や思いやりの醸成,積極的社会参加の実践”を宣言しています。
【進取の精神の涵養】
本学は,この大学憲章ならびに学生憲章の精神が,学生のキャンパス生活の中で,しっかりと培われ,その事が学生の人生設計の礎となるように,支援を惜しみません。その取り組みの一つとして,学生が“進取の精神”を自ら培うために,学生海外研修への支援,ボランティア活動への支援,「進取の精神」を具現化しチャレンジする取り組みへの支援,さらに,学生の向上心を育て・称えるための奨学金制度や表彰制度を備えています。また,その環境を充実するために,学生が自主的に学び,互いに交流し新たな創造が生まれる場として「学習交流プラザ」の建設に着手し,本年9月に完成する予定です。
【本学の目指す方向】
本学は,進取の精神を涵養する総合大学の理念のもと,次の4つのミッションを掲げています。
1)学修環境の改善を行うと共に,社会の変革と発展にリーダーシップを発揮できる人材の養成を行う。
2)基礎研究を重視すると共に,社会の発展につながる応用研究を推進し,全人類的課題解決へ挑戦して世界的研究成果やイノベーションの創出を目指す。
3)地域再生の核となる大学づくりに務め,大学の地域貢献のあり方として地域で活躍する人材の養成,大学のシーズや資源の地域への活用,社会人教育や生涯学習の提供に取り組み,存在感のある大学を目指す。
4)開かれた大学として社会への積極的な情報発信を行うと共に,活動全般に対する適切な改善システムを構築する。
これらの取り組みを通して,本学の存在が国民に明確に認識され,学生,教職員,卒業生並びに地域社会が誇りとする大学を目指します。
今後とも鹿児島市医師会の皆様のご理解とご協力を賜りますとともに,皆様の益々のご発展とご健勝をお祈り申し上げます。

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