天
紫南支部 宇宿ガサ医者
みな同し団子鼻揃れん我が親類
(みなおなし だごばなぞれん わが親類)
(唱)大世間一杯ぺ知れ渡っちょっ
(唱)(うぜけんいっぺ しれわたっちょっ)
親と子を見ると、顔の特徴や性格など、どこかが遺伝し、似ているところがあります。中には瓜二つの親子もいて、感心させられることもあります。
顔のパーツの中では、ど真ん中にある鼻は目立ち、ましてや団子鼻です。
決して強力遺伝子の自慢ではなさそうですが、思わず吹き出してしまう句です。
地
紫南支部 紫原ぢごろ
偉ろなれば知たん親類も挨拶ち来っ
(えろなれば したん親類も えさちきっ)
(唱)用心ぬしいし素性を確認
(唱)(ゆじんぬしいし すじょを確認)
ここで言う偉いは、地位が高いことで、おそらく、富と名声も兼ね備えているのでしょう。どこで聞き付けたのか、今までの親類との付き合いでも見たことがない人が、突然やってきました。
何の思惑があるのか、実にきな臭い感じです。こんな人々もいるようですし、人間批判の句となっています。
人
武岡 志郎
膝直し親類じ土産も沢山買っ
(ひざなおし しんじ土産も ずばっこっ)
(唱)東京からん洒落ちょい土産
(唱)(東京からん しゃれちょい土産)
「膝直し」とは珍しいことばですが、共通語で、婚礼後の新婦の里帰り。また、その時に行われる宴。という意味です。
初々しく、幸せそうな新婚夫婦を眩しく見つめる親類も、安堵する膝直しです。
二人は、結婚式に来て下さったり、お祝いをいただいたお礼に感謝を込めて、土産もいっぱい持って行ったのでしょう。
五客一席 城山古狸庵
親類言が詳し血統は知いもせじ
(親類ちゅが くわしちすっは しいもせじ)
(唱)語れば誠て近し人じゃっ
(唱)(かたればまこて ちかし人じゃっ)
五客二席 武岡 志郎
新入社員はノルめ親類ん加勢が要っ
(しんじんは ノルめ親類ん かせがいっ)
(唱)営業ん苦労を最初で体験
(唱)(えいぎょんくろを はなで体験)
五客三席 市立病院支部 甲突五差路
年賀状を書っ時か思い出す親類
(ねんがじょを かっとか思い 出す親類)
(唱)ずっと前へ会た顔を浮かべっ
(唱)(ずっとまへおた つらをうかべっ)
五客四席 紫南支部 二軒茶屋電停
親類会見覚えはあいが名が出らじ
(親類会 おぼえはあいが 名がでらじ)
(唱)長ご会ちょらんで 消えちょい記憶
(唱)(なごおちょらんで きえちょいきおっ)
五客五席 川内つばめ
子供にな嬉し正月多け親類
(こどんにな うれし正月 うけ親類)
(唱)お年玉貰れ大家族で訪っ
(唱)(お年玉もれ うげねでことっ)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
境騒動親類じゃ無様な酷で悪口
(さけそうど 親類じゃねよな ひであっご)
過疎地でな皆仲良ゆしっ親類並み
(過疎地でな みななかゆしっ 親類並み)
親類でん頼りにゃならん左派と右派
(親類でん たよりにゃならん さはとうは)
城山古狸庵
倒産で親類もずるっひん逃げっ
(倒産で 親類もずるっ ひんにげっ)
選挙前遠か親類も従兄弟けしっ
(選挙前 とおか親類も いとけしっ)
年賀状貰ろた親類を思め出さじ
(年賀状 もろた親類を おめださじ)
紫南支部 宇宿ガサ医者
狭め田舎隣近所はみな親類
(せめ田舎 とないきんじょは みな親類)
血統どま途絶えっしもが独身者
(ちすっどま とだえっしもが ひといもん)
紫南支部 紫原ぢごろ
核家族親類交際も遠おけなっ
(かっかぞっ 親類つっけも とおけなっ)
久しぶい親類が揃た米寿祝
(ひさしぶい 親類がそろた べいじゅいえ)
武岡 志郎
久振い親類も寄った白寿祝
(さしかぶい 親類も寄った はくじゅゆえ)
親類どま新聞沙汰でがらっ減っ
(親類どま 新聞ざたで がらっ減っ)
市立病院支部 甲突五差路
久々い会たが親類ん変わい様
(久々い おたが親類ん かわいよう)
宝くじ親類が増ゆい一等賞
(宝くじ 親類がふゆい いっとうしょ)
紫南支部 二軒茶屋電停
宝くじ当たれば親類増えでけっ
(宝くじ 当たれば親類 増えでけっ)
印南 本作
親類かあ掻っ集めちょい子供服
(親類かあ かっあつめちょい こどっふっ)
薩摩郷句鑑賞 68
夕立雨日向ん匂を残けっ止ん
(さだっあめ ひなたんかざを のけっやん)
中屋 合対
よく、夕立は馬の背を片方濡らすというけれども、川向こうは雨、川のこちらは砂ぼこりが立っているというようなことも珍しくない。
多分この夕立も、そんな雨だったのかも知れない。ザーッと降り出したかと思うと、すぐ止んでしまったのであろう。
結局、涼しくなるほどの雨量ではなく、庭の草木も濡れ、土も湿ってはいるけれども、なんとなく日向の匂が漂っているのである。感覚的にとらえたうまい句。
鰻屋ん親父じゃ禿ずい脂切っ
(うなっやん おやじゃ禿ずい あぶらぎっ)
鹿児山愛晩亭
土用丑の日。ウナギにとっては厄日であろう。昔からこの日にウナギを食べると、元気になると言われるが、いわゆる夏バテをするような時期に、栄養をとろうという生活の知恵であろう。
そのウナギの効き目を強調したのがこの句で、ウナギ屋の主人の元気そうな姿が目に浮かんで、思わず笑いがこみ上げてくるような作品である。
立秋ち言どん寝苦しこん暑さ
(立秋ち ゆどんねぐるし こんぬっさ)
村田まさる
暦の上では今日から秋。早生の柿が色づき始めたり、稲が穂を孕み始めたり、秋らしい風情が感じられるとは言え、ほんとに秋らしくなるのは、まだまだ先のことであろう。当分はきびしい残暑が続くであろうし、加えて連日の降灰で、戸も開けられない有様では、寝苦しい夜を我慢しなければなるまい。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎10 号
題 吟「 財布(ふぞ)」
締 切 平成25年9月5日(木) ◎11 号
題 吟「 冗談(わやっ)」
締 切 平成25年10月5日(土)
◇選 者 永徳 天真
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鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
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