天
清滝支部 鮫島爺児医
ハイ注射幼児は暴れっ言う悪口
(ハイ注射 ちびはあばれっ ゆう悪口)
(唱)親も驚っ恥のし赤面っ
(唱)(親もたまがっっ げんのしせけっ)
初めて注射を体験した子供は、その怖さ、痛さを、体が覚えています。そしてまた、その注射を打たれるのです。
その凶器に見える注射器を目の前に、泣きわめき、どこで覚えたのか悪態をつき、精一杯の応戦です。
医療現場の体験の中での句だけに、その情景がよく見える句です。
地
武岡 志郎
上役の悪口を肴ね旨め焼酎
(うわやっの 悪口をさかね うんめしょちゅ)
(唱)そやこん前も聞いたごっあっ
(唱)(そやこん前も 聞いたごっあっ)
職場の同僚たちとの飲み会でしょう。身近な主任、係長、課長ぐらいまでの上司の中には、嫌われ者もいるようです。
焼酎が進むにつれて、その上司への不平不満の話はつきません。悪口も真実ですが、その声が届かない限り、なんの解決にもならず、飲み会の度に同じような話が続くのでしょう。
人
川内つばめ
言た方も良か気はせんが悪口たれ
(ゆたほうも よか気はせんが 悪口たれ)
(唱)はいおしまいち話すば変えっ
(唱)(はいおしまいち はなすばかえっ)
何の得にもならない悪口だと分かっていても、人間は感情の動物ですから、時には悪口も口から出てきます。
しかし、あまりにも過ぎた悪口を聞くと、気分はよくないものです。言い過ぎた本人も、きっと反省しているだろうと捉えた句ですが、その悪口あっごたれを、優しく広い心で見ているところが立派です。
五客一席 武岡 志郎
週刊誌スタん悪口で飯すば食っ
(週刊誌スタん悪口で めすばくっ)
(唱)有い事無事面白つ可笑す
(唱)(あいこつねこつ おつおかす)
五客二席 清滝支部 鮫島爺児医
境い騒動隣い居っとに凄げ悪口
(境さけいそど とないおっとに すげ悪口)
(唱)様あ無か如っ理性ゆ失のっ
(唱)(ざまあなかごっ りせゆうしのっ)
五客三席 紫南支部 紫原ぢごろ
夫婦喧嘩悪口ん後で後悔をしっ
(みとげんか 悪口んあとで くけをしっ)
(唱)ごめんが言えじつづっ冷戦
(唱)(ごめんがゆえじ つづっ冷戦)
五客四席 城山古狸庵
言うてかあ取消しゃならん悪口癖
(ゆうてかあ といけしゃならん 悪口ぐせ)
(唱)反省やすいがいっもこん調子
(唱)(はんせやすいが いっもこんちょし)
五客五席 中央支部 高見馬場バス亭
総選挙結果が悪りと出い悪口
(総選挙 結果がわりと でい悪口)
(唱)自己責任の自覚か無か態で
(唱)(自己責任の じかかなかふで)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
大工どんに悪口どん言と家は曲がっ
(でつどんに 悪口どんゆと えは曲がっ)
先輩達にゃ悪口は言わん郷中ん教育
(おせんしにゃ 悪口はゆわん ごじゅんなれ)
北朝鮮ん衆にゃ悪口を言てん平然たん
(きたんしにゃ 悪口をゆてん しれったん)
城山古狸庵
人い言た悪口が自分い戻っ来っ
(人いゆた 悪口がわがい 戻っ来っ)
女模合嫁ん悪口で座が賑ん
(おなごもえ 嫁ん悪口で 座がはずん)
紫南支部 紫原ぢごろ
政党は悪口を言放題選挙前
(政党は 悪口をゆほで 選挙前)
言ちゃならん悪口い気付た年の功
(ゆちゃならん 悪口いきぢた 年の功)
武岡 志郎
悪口どま逃げ腰で言う臆病者
(悪口どま 逃げ腰でゆう ひっかぶい)
こん頃じゃインタネットで飛っ悪口
(こんごろじゃ インタネットで つっ悪口)
紫南支部 宇宿ガサ医者
妻どんよいっも一言多けごたっ
(かかどんよ いっもひとこっ うけごたっ)
悪口せか言わんじおれば良か女房
(悪口せか ゆわんじおれば よかおかた)
紫南支部 二軒茶屋電停
句作いに難儀な兼題ち言う悪口
(句作いに 難儀なだいち ゆう悪口)
印南 本作
立話悪口でやあれ盛い上がっ
(たっばなし 悪口でやあれ もいあがっ)
中央支部 高見馬場バス亭
両親へいっも悪口を言なち言われちょっ
(おへいっも 悪口をゆなち ゆわれちょっ)
作句教室
助詞を伴う表現の方言での表記について
「悪口(あっご)言い」「悪口(あっご)言うな」「悪口(あっご)言(ゆ)っ」等の表記がありましたが、これらの表現を共通語に言い変えると、「悪口を言い」「悪口を言うな」「悪口を言う」となり、すべてに助詞「を」があります。
薩摩郷句での表現は、話ことばが基本になりますので、共通語の「悪口を言うな」「嘘を言うな」は方言では、「悪口(あっご)を言(ゆ)な」「嘘を言(ゆ)な」と言い、「悪口(あっご)言(ゆ)な」「嘘(うそ)言(ゆ)な」とは言いません。
作句では、この使われていることばで表現し、その表記をすることが基本であり、大事なことです。
また方言では、助詞「に」「は」「を」を伴う場合、ことばが縮まることがあり、例えば、「外に出る」は「外(そ)て出(で)っ」、「夏は暑い」は「夏(な)ちゃ暑(あ)ち」、「腰を伸ばす」は「腰す(しょ)伸(の)べっ」等のように表記し、●印の送りがなが、それぞれ助詞「に」「は」「を」の働きをしていることになります。
助詞「に」では、多くがことばが縮まりますが、助詞「は」「を」では、一部が縮まるだけです。そこで方言の「悪口(あっご)」と「冗談(わやっ)」で、助詞「を」を伴う表現の表記を比較してみます。
「悪口(あっご)を」は、ことばが縮まらないので「悪口(あっご)を言(ゆ)っ」ですが、「冗談(わやっ)を」は、 ことばが縮まるので「冗談(わや)く言(ゆ)っ」となります。ですから、「悪口(あっ)ご言(ゆ)っ」という表記は、「ご」を送りがなにしても、助詞「を」の働きはしないので、正しい表記ではないということになります。
薩 摩 郷 句 募 集
◎9 号
題 吟 「 箒(ほっ)」
締 切 平成25年8月5日(月) ◎10 号
題 吟「 財布(ふぞ)」
締 切 平成25年9月5日(木)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp |
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