天
城山古狸庵
酌き行たや逆ち徳利ゆ取い上げっ
(しゃきいたや 逆ちとっくゆ といあげっ)
(唱)どうぞどうぞち下げちょい頭
(唱)(どうぞどうぞち さげちょいびんた)
歓送会、歓迎会や花見の会など、春は何かと飲み会の多い時季でもあります。
これらの宴会でよく見かける光景が、酒好きで気配り上手な人たちが酌をして回っています。それが目上の人であればそれを制して、まずは先輩、上司からと酌をするのが礼儀というものでしょう。そんな一コマがうまく捉えられています。
地
紫南支部 紫原ぢごろ
定年で夫婦ん権力が逆きけなっ
(定年で みとんちからが ぎゃきけなっ)
(唱)所帯繰や女房が 下知つすっ通い
(唱)(しょてぐやかかが げつすっとおい)
定年で退職しました。当然ですが今まで貰ってきた給料は、もうありません。
この突然の落差は大きく、これからの現実は、退職金、預金、年金での厳しい生活となります。
金を稼いで来なくなれば、夫婦の関係も微妙にズレが生じて、この句のような状況も、切ない真実かもしれません。
人
清滝支部 鮫島爺児医
裁判の逆転無罪い罰は無し
(裁判の 逆転むざい ばっはのし)
(唱)冤罪ゆ如何ん思ちょったろうか
(唱)(えんざゆいけん おもちょったろうか)
世の中にはいろいろな事件があり、その犯罪に対しては、裁判が行われます。結果、判決が下され、有罪に不服があれば、控訴や再審というケースもあります。
不透明な真実ですが、裁判のやり直しによって逆転無罪となっても、一度有罪とした検察や裁判所には罰は無いという、社会に対する批判の句でもあります。
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
歳しゅとれば夫唱婦随が逆きしなっ
(としゅとれば 夫唱婦随が ぎゃきしなっ)
パソコンは親が子供に逆き習るっ
(パソコンは 親がこどんに ぎゃきなるっ)
月き行けば地球は逆で星い成っ
(つき行けば 地球は逆で 星いなっ)
霧島 木林
辛れ仕事逆き考ぐれば少た楽
(つれしごっ ぎゃきかんぐれば ちっただっ)
熱血ち指導が逆きパワハラち大騒動でなっ
(あちしどが ぎゃきパワハラち うそでなっ)
天才は人とは逆の良か発想
(天才は 人とは逆の よかはっそ)
城山古狸庵
逆もまた間違げじゃ無かち師の教え
(逆もまた まっげじゃなかち 師の教え)
我が家とは逆の電車で痴漢騒動
(わがえとは 逆の電車で 痴漢そど)
紫南支部 紫原ぢごろ
増税と景気回復か逆じゃねか
(増税と 景気かいふか 逆じゃねか)
夫が家事妻は勤めで逆の娑婆
(ととが家事 かかは勤めで 逆の娑婆)
作句教室
今月も投句者が少なかったので、五客を省略しました。
前号に引き続き、渋柿会の合同句集「たっばけ」に収められている作品の中から「焼酎に関わる句」を紹介します。
身近な素材である焼酎のある世界を、広がりのある薩摩郷句で味わってください。
蝮焼酎元気ん源を引張っ出っ
(まむしじょちゅ 元気んもとを そびっでっ)
上薗 佳笑
家計簿ん赤字答えあ亭主が焼酎
(家計簿ん 赤字答えあ ととがしょちゅ)
上別府印句
また来てち脈があろそな縄暖簾
(また来てち みゃっがあろそな 縄暖簾)
上村 牛歩
相手は酔漢笑るっ宥むい地蔵角
(えてはとら わるっなだむい じぞうかど)
工藤 天然
貴方が飲ん瓶じゃんさおち持たされっ
(はんがのん 瓶じゃんさおち もたされっ)
桑元 行水
友達の鍵取い上げっかあ焼酎を出っ
(どしのかっ といあげっかあ しょちゅをでっ)
境田 西隆
飲まん言で嫁たとが間違げ凄ぜ上戸
(のまんちゅで きたとがまっげ わっぜじょご)
佐澤汽車道
焼酎が出っ調子が合でた娶れ話
(しょちゅがでっ おだめがおでた もればなし)
白澤 黒猫
よかよかち謝罪い行たや焼酎が出っ
(よかよかち ことわいいたや しょちゅがでっ)
新地 十意
痛か歯も焼酎を飲ん時かち忘れっ
(いたか歯も そつをのんとか ちわすれっ)
新森 鶏冠
疼っ歯も飲ん方てなればけ忘れっ
(うずっ歯も のんかてなれば け忘れっ)
高辻 満夫
鹿児島あ良事悪い事焼酎が先
(かごっまあ えこっわいこっ しょつがさっ)
埀野剣白鶏
晩酌ん側で家計簿付けをしっ
(だいやめん そばで家計簿 付けをしっ)
津留見一徹
半分な触い賃じゃろバーん請求
(半分な かかい賃じゃろ バーんつけ)
堂園 三洋
栄転祝僻んで割った苦か焼酎
(おくいゆえ ひがんで割った にがかしょちゅ)
中囿 和風
美味め焼酎で毎晩しちょい腸洗浄
(うめそつで めえばんしちょい わたせんじょ)
中村 雲海
風呂上がいなんちゅあならんこん一杯
(風呂上がい なんちゅあならん こんいっぺ)
中村 木強
言難き事つ全部うっ言た焼酎ん勢
(ゆにきこつ ずるっうっつた しょつんいっ)
長山紫の君
まだ早えち万歳ゆさせん上戸ん課長
(まだはえち ばんざゆさせん じょごんかちょ)
西ノ園ひらり
敬老会古希は新兵焼酎ん番
(けいろかい 古希はしんぺい しょちゅんばん)
原田 菊男
薩摩郷句鑑賞 66
馬鹿力どんじん柄ずい打っ折っ
(馬鹿力 どんじんえずい たたっごっ)
大山 元師
「どんじ」というのは、杭などを打ちこむ時に用いる大きな木槌である。
餅を搗く場合も、力いっぱい搗けばよいというものではないし、この句のように、「どんじ」で杭などを打ちこむ時も、ただ力まかせに振りおろせばよいというものではない。いわゆる要領というものがあり、コツというものがある。歌を歌う場合でも、大声張り上げればよいというものでないのと同じであろう。その辺の分からない人へ対する皮肉。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎5 号
題 吟 「 用事(ゆし)」
締 切 平成25年4月5日(金) ◎6 号
題 吟 「 謎(なぞ)」
締 切 平成25年5月7日(火)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp |
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