鹿市医郷壇

兼題「毎日(めにっ)」


(399) 永徳 天真 選




 霧島 木林

飽っがこん桜島は毎日違ごた表情
(あっがこん しまはめえにっ ちごたかお)

(唱)今日はまた違ごっ好青年せ見えっ
(唱)(きゅはまたちごっ よかにせみえっ)

 先日、全国の天気の中継で、桜島の映像を見てふと感じたことは、鹿児島出身の人達は故郷の桜島を、きっと懐かしく見ているのだろうなということでした。
 雄大な桜島の魅力は、一言で形容できませんが、時には激しく、優しく、そして見る人に語りかけ、包み込んでくれます。愛される桜島がよく詠まれています。




 城山古狸庵

止むっとはけ死ん時よち毎日飲っ
(やむっとは けしんとっよち 毎日やっ)

(唱)程々じゃれば差支は無かんそ
(唱)(ほどほどじゃれば つけはなかんそ)

 欠かさず晩酌をしている人は、それが至福の時で、その人の一日のサイクルでもあり、体自身もそれを知っています。
 適量の基準は難しく、その焼酎が百薬の長であればよいのですが、ついつい飲み過ぎの人も多いようです。
 この句もその部類のようで、開き直ったような表現が可笑しさを出しています。




上町支部 吉野なでしこ

赤ん坊を毎日眺めっ緩るん顔
(あかんぼを 毎日ながめっ ゆるん顔)

(唱)語いかくれば笑るた気がしっ
(唱)(かたいかくれば わるた気がしっ)

 掛け替えの無い小さな命の誕生の感動は、母親はもちろんのこと、その家族や見守ってくれた人達にとっても大きなものです。
 愛くるしい赤ん坊の動きや表情を見ていると、優しい気持ちになり、話しかけたくなります。そんな幸せいっぱいの様子が、素直に詠まれています。


 五客一席 清滝支部 鮫島爺児医

神棚を毎日拝んで今があっ
(かんだなを 毎日拝んで 今があっ)

(唱)そん真面目さん御陰じゃったろ
(唱)(そん真面目さん 御陰じゃったろ)


 五客二席 紫南支部 紫原ぢごろ

毎日が日曜言とも寂しこっ
(めえにっが 日曜ちゅとも さびしこっ)

(唱)すいこっが無ねち持て余す暇
(唱)(すいこっがねち 持て余す暇)


 五客三席 上町支部 吉野なでしこ

ダイエット毎日の計量やそっち乗っ
(ダイエット 毎日のはかや そっちのっ)

(唱)減った増えたち一喜一憂
(唱)(減った増えたち いっきいちゆう)


 五客四席 霧島 木林

何いすいか毎日献立て悩ん母
(ないすいか 毎日こんだて なやんかか)

(唱)面倒で時か我が好っなといしっ
(唱)(めんでとかわが すっなといしっ)


 五客五席 城山古狸庵

夏休ん毎日将棋ん孫ん相手
(なっやすん 毎日将棋ん 孫んえて)

(唱)覚えが早えで腕をば上げっ
(唱)(覚えがはえで 腕をば上げっ)


   秀  逸

清滝支部 鮫島爺児医

寝ちゃ起きっ三度も食っ毎日終ん
(ねちゃおきっ 三度もたもっ 毎日すん)

朝ドラは毎日の日課け成っしもっ
(朝ドラは 毎日のにっけ なっしもっ)

新聞も見所や毎日決まっ居っ
(新聞も みどこや毎日 きまっちょっ)


紫南支部 紫原ぢごろ

晩酌ん後は毎日高鼾
(だいやめん あとはめえにっ たかいびっ)

晩酌は毎日じゃっどん飽っもせじ
(だいやめは 毎日じゃっどん あっもせじ)


 霧島 木林

日記帳毎日ちゃ続かじまとめ書っ
(日記帳 めにちゃつづかじ まとめがっ)

毎日通よ通勤道つば変えっみっ
(毎日かよ つうきんみつば かえっみっ)


 城山古狸庵

退職たなあ毎日が鶏の世話係
(やめたなあ 毎日がといの せわがかい)


 作句教室
 今回は、薩摩郷句に関する一冊の本を紹介します。それは「さつま狂句一〇〇年」という本で、その序には次のように書かれています。
 平成十四年の南日本新聞に「さつま狂句一〇〇年」が一年間連載された。
 これは薩摩狂句の誕生百年を記念した企画であり、一日一句ずつを取り上げてこれに評釈を加え、これまでに生み出されてきた作品を通して薩摩狂句百年の歴史を振る返るものである。
 これを監修・執筆されたのが渋柿会主宰・三條風雲児先生である。連載から十年目の今年、渋柿会で一冊にまとめて出版しようということになった。発行にご尽力下さった新聞社に敬意を表するものである。(以下省略)
 この本に所載されている作品の数は、三五三句で、明治・大正・昭和・平成と、その時代に詠まれた作品が紹介されていて、その丁寧な評釈から、薩摩狂句の歴史を知ることができる貴重な本となっています。
 残念ながら市販はされていませんが、出版の白兎社(TEL二五二−六〇〇一)で直接購入できますので、この本に興味がある方は、問い合わせしてみて下さい。価格は一冊一八〇〇円です。


 薩摩郷句鑑賞 63

ダイヤどんはめた手で奪合こ特売場
(ダイヤどん はめた手でばこ とくばいば)
             加治屋心眼

 公務員にボーナスが支給されて、初めての日曜日である。今日あたり、お歳暮コーナーなど、立錐の余地もないのかもしれない。欲しいと思いながら、自分の家ではあきらめているような品を、お歳暮にしているのかもしれない。
 それだけに、家で使うような品は、特売場で買うことになるのである。ダイヤの指輪をしている手とは誇張であるが、とにかく、なりふり構わず奪い合うくらいの勇気がないと、よい品は手に入らないのかもしれない。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋

薩 摩 郷 句 募 集

◎2 号
 題 吟 「 湯気(ほけ)」
 締 切 平成25年1月5日(土)
◎3 号
 題 吟 「 逆(ぎゃっ)」
 締 切 平成25年2月5日(火)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


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