=== 随筆・その他 ===

仏 性 に つ い て



南区・谷山支部
(安達診療所)     安達  寛

 医師会誌に仏教の関連文を掲載させていただくことをありがたく思います。宗教について浄土真宗の家に生まれて特に母が熱心な浄土教の信者であったんだと信じるようになったのは,熊本在住の禅修行道場の高橋嘉道禅師について禅の指導を受けてからでした。

 一切衆生悉有(しつう)仏性…(知らぬが仏)
 衆生本来成仏(仏なり)…(知っても仏)
   仏性平等,因果差別,平等差別が各々個人の特徴であり,価値であります。

 因果差別の人間の世界は因果必然のあらわれであり,人々の外面的違いは人間内因の因縁によるあらわれであり,身長や体温,思想の差などとして現在あらわれている姿であります。これらあらわれた差は,外面的・表面的な差でありますが内面は全く1つの平等仏性で活動しております。多くの人が親しい禅語として身心一如とか啄同時,色即是空,空即是色とか,一即一切,一切即一などを日常受用しておりますが,仏性(仏心)が無意識(自然)にあらわれている姿(相)であります。

 「世の中は今より外になかりけり,昨日(きのう)は過ぎつ,明日(あす)は来らず」

 仏教はお釈迦さまの教えであります。仏教は,人間が仏になる教えであります。人間の本質は仏性(仏にもなれる能力)をもって生まれて来ているのでありますが,人間レベルで満足し,ホトケ(完成された人間)になっていないのです。あまりにも人間社会に人間レベルで満足すべき要因(五欲)があり,それに満足せず更に更にと貪りを求めているのでありますまいか。仏道は仏教の実践であります。弓道は理論であります。弓に矢を番(つが)えて実際矢を的に向かって放す技術を弓道というのであります。医学,医術,医道が,仏法僧に相当し,仏法僧を「三宝」,医学は「一体三宝」,医術は「現前三宝」,医道は「仏道(住持三宝)」に相当し,人を救い得るレベルであります。医道と仏道は表裏一体の関係にあるといえるのではないでしょうか。身体が健康であることは誰もが望んでいることでありますが,仏性(仏心)は見えません。仏性は身にあらわれて来ます(空即是色)。自分の心は自分でコントロールされるのは僅かで,仏性のコントロールの許にありますから自分仏にあえるように修行が必要であります。

 「五臓六腑これを父母に受く,あえて毀損せざるは,孝の始めなり」
 「松陰の黒きは月の光かな」
 「三歩下って師の陰を踏まず」
 「明日ありと思ふ心の仇桜,夜半には嵐の吹かぬものかわ」
 「仏道を習ふというは自己を習うなり,自己を習ふというは,自己を忘るるなり,自己を忘るるというは,万法に証せらるるなり,万法に証せらるるというは自己の身心,他己の身心を脱落せしむるなり」
(正法眼蔵現成公案)

 自己を救うのは,自己の仏性(仏心)なり,国を救うのも個々人の仏性総体であります。坐禅は本来の自己(仏性)にあう修行であります。仏性にあうことを悟り(見性悟道)といい,仏の生活が出来るようになります。日常坐禅の生活をされておられる方がありましたらご指導をお願い申し上げたいものです。



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