鹿市医郷壇

兼題「全部(ずるっ)」


(395) 永徳 天真 選




霧島 木林

初ゴルフ予備球も全部ひっ使こっ
(はっゴルフ よびきゅも全部 ひっつこっ)

(唱)右左せえ乱れ飛だ球
(唱)(みっひだいせえ みだれつだたま)

 私も過去に、素人の域を脱しないゴルフの経験がありますので、よく理解できる句です。自己流で練習もしましたが、自信と挫折のくり返しで、なかなか思うように行かないゴルフでした。
 郷句と相通じる所もありますが、上達への近道はなく、ひたすら努力するのみです。また、向上心を忘れないことです。




清滝支部 鮫島爺児医

通信簿全部丸言て爺が踊っ
(通信簿 全部まるちゅて じがおどっ)

(唱)鼻高高ん孫じゃち自慢
(唱)(鼻高高ん 孫じゃち自慢)

 通信簿を渡されて開けて見ると、見事に全部丸印が付いていて、ひっ驚(たまが)ったことでしょう。「たいしたもんじゃ」と孫を褒めながら、爺さんはその喜びに思わず踊り出しました。
 周りの人も皆な笑顔のその様子が、目に浮かんでくるような、ほのぼのとした句です。




上町支部 吉野なでしこ

アイメイク全部落とせっ別な女
(アイメイク 全部おとせっ べっなひと)

(唱)気易す語いも出来んよな違げ
(唱)(きやすかたいも でけんよなちげ)

 最近は、堂々と素顔を披露するバラエティー番組がありますが、中には化粧の前後で、別人のような女性もいます。
 私も化粧に関係して次のような句を作ったことがありますが、この作品も化粧で変身する女性を物語っています。

 派手な化粧会たびパンダを思め出せっ
(派手なけしょ おたびパンダを おめだせっ)

 亭主しか素面な知らん厚化粧
(とのじょしか すめんな知らん あっげしょう)


 五客一席 武岡 志郎

勉強は全部忘れっ夏休ん
(勉強は 全部わすれっ なっやすん)

(唱)二学期きなれば付けが回ろそな
(唱)(にがっきなれば つけがまわろそな)


 五客二席 霧島 木林

好物他人いなやらじ全部食っ
(すっなもん ひといなやらじ 全部くっ)

(唱)譲いがならん張った食い意地
(唱)(ゆずいがならん 張った食い意地)


 五客三席 清滝支部 鮫島爺児医

原発を全部止めてん火種は残っ
(げんぱっを 全部とめてん ひはのこっ)

(唱)知恵を出し合っ切い替えん時期
(唱)(知恵をだしおっ きいかえんとっ)


 五席四席 城山古狸庵

人ん金ぬ全部うっ食たAIJ
(人んぜぬ 全部うっくた エーアイジェ)

(唱)人事のよな態で頭下げ
(唱)(ひとごっのよな ふでびんたさげ)


 五客五席 紫南支部 紫原ぢごろ

タッチミス貴重ねデータが全部パー
(タッチミス たしねデータが 全部パー)

(唱)下手なこつしっ唯唯呆然
(唱)(下手なこつしっ ただただあけっ)



   秀  逸

清滝支部 鮫島爺児医

レセプトは全部点検らんと後で後悔
(レセプトは 全部みらんと あとでくけ)

候補者はあちこち全部手を握っ
(候補者は あちこち全部 手を握っ)

全部してまとめがならん民主党
(全部して まとめがならん 民主党)


城山古狸庵

冷蔵庫全部空れした里戻い
(冷蔵庫 全部かれした さともどい)

一ダース全部ひん飲だ大飲んごろ
(いっダース 全部ひんぬだ うのんごろ)


紫南支部 紫原ぢごろ

里戻い冷蔵庫どま全部空
(さともどい 冷蔵庫どま 全部から)

リーマンのショックで全部消えた儲け
(リーマンの ショックで全部 消えたもけ)


霧島 木林

宝くじ夢を買うたが全部駄目
(宝くじ 夢をこうたが 全部ぼっ)

衣替え全部捨せた着らん服
(衣替え 全部うっせた きらんふっ)


上町支部 吉野なでしこ

欲が出っ全部儲けたや無一文
(よっがでっ 全部儲けたや 無一文)


武岡 志郎

福島が原発つ全部うっ止めっ
(福島が げんぱつ全部 うっとめっ)



《雑 吟》

武岡 志郎

禁止前レバ刺が客く並ばせっ
(禁止前 レバさしがきゃく なるばせっ)

峠道つ入道雲い子は走っ
(とうげみつ たかたろぐもい 子は走っ)

帽子しょ被れ陰で遊べち親愛情
(ぼしょかぶれ 陰であすべち おやぼんの)



 作句教室

多くの作品から学びましょう(二)
 前号に引き続き、渋柿会の合同句集の「ひとっば」に掲載の中から作品を紹介します。表現や表記のしかた、そして郷句味を学んでほしいと思います。

記憶かまだ政治家よっかあいごたっ
(きおかまだ 政治家よっか あいごたっ)

             石塚 律子


五分早よ済んだ演説つ褒めまくっ
(五分はよ 済んだえんぜつ ほめまくっ)

             諸木 小春


都合ん悪り所や英語で書た日記
(つごんわり とこや英語で けた日記)

             小瀬 一峻


開けたなあ脈が飛ぼそなラブレター
(あけたなあ みゃっがとぼそな ラブレター)

楽きなって良かったねえち葬送い出っ
(だきなって よかったねえち おくいでっ)

             西ノ園ひらり


稽古をした祝辞が壇でうっ詰まっ
(けこをした 祝辞が壇で うっづまっ)

馬鹿丁寧い間違ごた道つば教せっ
(ばかてねい まっごたみつば ゆっかせっ)

             樋口 一風


降参ち女房い言わせた夢を見っ
(降参ち かかい言わせた 夢を見っ)

             川村  明

三部経鉦で時時目が覚めっ
(さんぶきょう じんでとっどっ 目がさめっ)

             堂園 三洋


割り勘で愚痴も小言も聞かされっ
(割り勘で ぐぜもこごっも きかされっ)

             弓場 正己



 薩摩郷句鑑賞 59

精霊迎けん松根の火が庭へ揺れっ
(しょろむけん こえまっの火が にへゆれっ)

             倉元 天鶴

 七月十三日の夜、精霊を迎えるために門辺で焚くのが迎え火、十六日の夜に焚くのが送り火である。麻幹(おがら)を焚くのがほんとらしいが、鹿児島では松の根を小さく割って焚いていたようである。これを、「あかし」と言ったり、「こえまっ」と言ったりしているようであるが、田舎でも、このごろ門火を焚かなくなってしまったのではなかろうか。
 今日は月おくれの盆の入りである。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋


薩 摩 郷 句 募 集

◎10 号
 題 吟 「 茶碗(ちゃわん)」
 締 切 平成24年9月5日(水)
◎11 号
 題 吟 「 悩ん(なやん)」
 締 切 平成24年10月5日(金)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


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