緑陰随筆特集

医療機器安全管理責任者の業務と責任の範囲について
公益社団法人鹿児島県臨床工学技士会 理事長 山口 親光

 日頃から当会の活動にご理解とご支援をいただき,心より厚く御礼申し上げます。
 当会は,これまで一般社団法人として活動して参りましたが,平成23年4月鹿児島県知事より公益社団法人として認可をいただき,同年4月1日付で鹿児島法務局に公益社団法人鹿児島県臨床工学技士会として登記いたしました。
 公益法人化後の最初の事業として,鹿児島サンロイヤルホテルにおいて,日本透析医学会理事長の秋澤忠男先生をお招きし,公益社団法人鹿児島県臨床工学技士会設立記念講演会並びに祝賀会を開催いたしました。この会には,鹿児島県選出の国会議員の秘書の方をはじめ,多くの鹿児島県議会議員,鹿児島県医師会並びに鹿児島市医師会所属の多くの先生方のご参加をいただきました。皆様方に花を添えていただけましたことで,盛会裏に終了することができました。改めて厚く御礼申し上げます。

 さて,平成24年3月8日に共同通信社より配信されました報道によりますと,宮城県立循環器・呼吸器病センター(栗原市)に心筋梗塞で入院していた同市の無職男性患者=当時(82歳)=が,平成22年7月に死亡された事故で,宮城県警捜査一課は8日,患者を担当していた女性看護師(42歳)と男性臨床工学技士(48歳)を業務上過失致死の疑いで,男性主治医(33歳)を医師法違反の疑いでそれぞれ書類送検したと報じています。
 改正医療法では,医療機器安全管理責任者の業務の中で医療機器を取り扱う職員に対して,当該医療機器の使用機器について研修計画を立て,それに基づいた研修を実施することを明確に規定しています。今回の事件は,これに基づき,違反があるとして書類送検されています。
 この法律は,当会が実施している医療機器安全管理セミナーの根拠としているものでもあります。また,先の事故のようなことを未然に防ぐため,当会では,以前から公益事業として平成18年に改正された改正医療法に基づく医療機器の管理と使用上の安全性を高めるため,「医療機器安全管理セミナー」の開催や医療機器安全管理責任者の現状調査として,医療機器安全管理責任者のアンケート調査等を実施してまいりました。
 これまでにセミナーに参加いただいた方のご意見やアンケート調査などによると,現在,医療機器安全管理責任者の任に当たっている方々の多くは,“取りあえず任命されて役に就いている”というのが現状のように感じ取れます。また,医療機器安全管理責任者の本当の責任の重要性及び範囲について,十分に理解されていないのではないかと思われるようなことも散見されています。
 しかし,今回の書類送検は,医療機器安全管理責任者の責任が非常に大きいことを明確に表しています。一方で,現状の医療機器安全管理責任者の責任の大きさに対し,持たされている権限は非常に小さく,医療機器安全管理責任者の業務が円滑に実施できない状況にあることは明白です。医療機器安全管理責任者に課せられた重責を果たすためには,責任の裏側にある権限がなければならないと考えています。権限のないところに重要な責任が発生するという現状は早急に改善する必要があるのではないかと思っています。
 そのためには,現在使用されている医療機器の構造や原理を知った上で,安全な医療機器の使用や保守管理の重要性についてもっと評価される必要があり,医療機器安全管理責任者の位置づけが見直される必要があると考えています。
 そこで,当会では今回の事件を踏まえ,本年8月に名城大学都市情報学部教授の酒井順哉先生をお招きし,医療機器安全管理責任者講習会を開催,「医療機器安全管理責任者の業務権限と事故責任」というタイトルでご講演をいただき,医療機器安全管理責任者のあり方と業務内容について解説をお願いいたしました。
 そして,医療現場で医療機器管理を行っている臨床工学技士及び他の医療スタッフの方々に医療機器管理の現状と問題点について講演会を実施し,同時に2つの医療施設から現在の医療現場で実施している具体的な対応策について,法的問題点や今後の対策等について現状を報告していただきました。参加していただきました鹿児島県内の約200の医療施設の今後の対応についてお役立ていただけたのではないかと考えております。
 今後も,公益社団法人としての自覚を持ち,従前にも増して公益事業の拡大を図る中で,よりタイムリーな企画を立てて参りますので,医師会の先生方のご理解とご協力をお願いする所存です。




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