緑陰随筆特集

共に歩む
医療法人春風会田上記念病院
リハビリテーション部 言語聴覚士 安田勇之進

 現在私は小学校4年生の娘と1年生の息子がいます。妻を亡くし3年が経ちますが,ただひたすら生活していくことから,最近になり余暇を大事に周りの景色を共に眺めることが出来る生活に変化していることに気付きます。それは3人での生活に慣れてきて「楽しむこと」が出来てきたからであり,その「楽しむこと」を3人それぞれが見て理解し,生活の中で話題にすることが多いからだと思っています。娘は金管バンドとピアノ,息子はサッカー,私はソフトボール・釣り・家庭菜園など一緒にやることやお互いが観戦する機会は多くあります。ソフトボールは週に1回以上する機会がありますが,子供達はとても楽しみにしてくれており,練習に加わることもあります。家庭菜園においては,水やりや観察,収穫まで日常的に一緒に楽しめます。
 最近,はまっていることは野宿(キャンプといえるほど道具も準備もないので)。テントと折りたたみテーブル,ガスコンロなどの簡単なものだけを持ち,行き当たりばったりの場所でテントを設置。テントは3人で喧嘩しながらの組み立てです。夜はランタンの明かりを消して月明かりで過ごすのですが,家での生活とは全く違います。電化製品はなく,時間を気にすることもなく,「脱日常」の生活。日頃時間に追われている生活とは違い,子供と会話する機会が増えスキンシップも多く,ちょっとしたカミングアウトも時々あります。好きな子の話や思い出話,その他多くの発見があるのも野宿の利点かもしれません。
 われわれ家族には夢が2つあります。1つは故郷の奄美大島まで自力で行くということ。非現実的かもしれませんが,私は船舶1級の免許を取得しました。息子はパイロットになるという夢を持ちはじめました。もう1つの夢は,家族で海外旅行に行くという夢。私は6ヵ国に旅・留学をしたことがありますが,子供達と行くとなれば楽しみ方も変わってくると思います。1年前より車の運転中に聴けるようにと英語教材を購入し英語を勉強中。子供達にも教材を購入し遊び感覚で始めています。目標に向かって「共に歩むこと」を楽しんでいます(子供達はいつまで夢に付き合ってくれるだろうか不安はありますが…)。
 私は言語聴覚士をしており主に回復期病棟を担当しています。リハビリを実施するなかで患者様に影響を受けることも多くあり勉強させていただいています。しかし,リハビリが上手く進まず思い悩むことも多々あります。そういう中で,リハビリもファイナルゴールに向かって「共に歩むこと」が必要だと感じております。嚥下機能やコミュニケーション能力の向上を目的としても,医師をはじめ病棟他スタッフとの連携無しでは達成し得ません。共有の必要性を強く感じています。
 これからの人生で多くの人に出会うと思います。目標に向かって「共に歩む」という過程を多く経験し,多くの方と達成感を味わえたらと思います。




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