編集後記


 5月21日の金環日食は,あいにくの曇り空と,大量のドカ灰のために鹿児島市では観察することが出来ず,悔しがった方々も多かったと思われます。太陽と月の前に地球の雲が立ちふさがるというのも,地球が生きている証拠。仕方ありません。それにしても,桜島の噴火活動はなかなか収まりそうになく,もしこの夏に計画停電にでもなったら,窓を開けることもままならず,熱中症になる人が多発しないか心配です。そうならないためにも,日頃の節電が必要です。電気頼みの生活を考え直す良い機会です。この夏は天気予報の最高気温と,桜島上空の風向きから目が離せません。
 誌上ギャラリーは,その桜島に屹立する県庁舎。県庁舎も鹿児島市内屈指の立派な建造物です。しかし,桜島には人類の創造物を圧倒する存在感があります。1万3千年前に北岳が姿を現したそうですが,その頃の縄文人も桜島を前にして,噴火鎮静の祈りを捧げていたかもしれません。
 論説と話題では「不眠ネットかごしま」事業を紹介いただいています。今からの季節は暑さや湿気のせいで眠れないという夜もありますが,ストレスの多い現代,不眠症に悩む方は非常に多いようです。かかりつけ医において,不眠を訴える患者さんを対象に「うつ」のスクリーニングを行い,専門医への紹介を勧め,適切な医療を提供し,自殺予防を図ろうとするシステムです。「うつ病は心の風邪」と言われるほど「誰でもかかる可能性がある」「罹患しやすい」病気です。地域医療全体で,個人の心の病を治す取り組み,是非とも会員の皆様に活用いただき,自殺者,そして悲しむ家族を1人でも減らせたらと期待します。
 くすり一口メモではアルツハイマー型認知症治療薬について解説いただきました。2011年に新たな治療薬として発売された3種類の薬剤を含め,現在使用可能な4種類の薬剤の特徴をまとめてあります。日本も4種類の治療薬を使える国際標準状態となったようですが,残念ながらいずれも進行抑制の効果しかありません。今後の根本的治療薬の開発が待たれるところです。
 学術は,たこつぼ型心筋症の症例報告です。発症には精神的,肉体的ストレスが関与するとのことですが,以前RSウイルス感染症の乳児が,入院後たこつぼ型心筋症を合併しICU管理になったことがありました。乳児でも心筋症を発症する程のストレスがあることに驚き,その時初めてこの病名を耳にしました。1度聞くと忘れない病名です。
 随筆・その他では古庄先生のエイズに関する切手シリーズ第4弾。お国柄や,エイズの蔓延度によるのかもしれませんが,日本では避妊具が切手に載ることはないでしょう。ちなみにナミビアの国全体のHIV感染率は23%ほどだそうです。内山先生には,「はやぶさ−遥かなる帰還−」を観ての映画感想文をお寄せいただきました。最近でも,日本初の商業衛星を搭載したH2Aロケットの打ち上げに成功し,JAXAの信頼性の高さが改めて示されたばかりです。2014年には「はやぶさ2」が打ち上げられる予定だそうです。また,日本に明るい話題を提供して欲しいものです。鮫島先生には専門分野の赤ちゃんの痔をわかりやすく解説していただきました。日々の診療に参考になるものです。小児科外来でも便秘がらみの肛門疾患が多く,先生の言われる,日々の食事,排便習慣,躾が本当に大事だと感じています。リレー随筆は同窓の上ノ町先生より投稿いただきました。プレミアムシートの話題3つは,そう簡単にあるような話ではないので,たまたまプレミアムシートではないのでは,とやっかみ半分で疑ってかかる自分が情けないですね。
 今回の鹿市医郷壇の題吟は「物好っ」でした。天の句,どんな趣味なのでしょうか,とても気になりました。地の句,お宝鑑定団でも小便壺では高値は出ないでしょう。薩摩郷句の,焼酎のお湯割りのように温かく,ほんわかとした感じが好きです。会長雑感にもあるように,今後とも鹿市医郷壇は大切にしたいと思います。前編集委員長曰く,かごんま弁は詳しく知らなくても薩摩郷句は詠めるそうです。ご参加をよろしくお願いいたします。

                                    (編集委員 伊地知 修)

                                              

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