編集後記


 平成24年度の診療報酬・介護報酬同時改定は,前回に続きわずかながらもネットプラス改定となったことを日本医師会はある程度評価しましたが,会員の先生方にとってはいかがだったでしょうか。医療従事者の負担軽減,医療機関の機能分化と連携,在宅医療へのシフトを意図したといえる改定でした。
 さて,今月の「誌上ギャラリー」は鹿児島市中山町の高台にある広大な「ふれあいスポーツランド」です。早咲きの桜を背景にした「風の贈りもの」のモニュメントは大勝先生の目には宇宙と交信しているように見えたそうです。
 「論説と話題」では,2月11・12日開催された平成23年度日本医師会医療情報システム協議会に参加された上ノ町先生,事務局の楠本さん,森山さんに分担して報告してもらいました。シンポジウムでは東日本大震災で生じた情報の混乱を踏まえ,災害時の複数の情報ネットワークの構築や定期的な情報伝達訓練の必要性が議論され,また,「ORCAの評価と今後」,「日医認証局の稼動」,「レセプト情報電子化」の諸問題点が報告されました。
 「くすり一口メモ」では骨粗鬆症の新規発売の副甲状腺ホルモン製剤の紹介です。従来の骨吸収を抑制する治療薬と異なり骨形成を促進する作用機序の薬剤で,適応は骨折の危険性の高い骨粗鬆症に限定されていますが高価なのが気になります。
 「学術」には今村病院の本院と分院から投稿いただきました。本院の取先生より同時性肝転移・腹膜播種を伴った巨大胃GISTの4年10ヵ月の長期生存の集学的治療例,分院の濱里先生より4例の病期の異なる離断性骨軟骨炎に対する鏡視下手術の症例提示ありがとうございます。
 「随筆・その他」では古庄先生より「エイズに関する切手シリーズA」が紹介されています。エイズに対する戦いの象徴のレッドリボンが印象的です。内山先生からは年間最多爆発を更新し続けている桜島の昭和60年の大爆発,昭和63年の鹿児島市民文化ホールで開催の国際火山会議での呼吸器に及ぼす影響に関する研究発表が紹介されています。植松先生の母国語の保護に敏感かつ熱心なフランスのフィヨン首相が公文書にマドモアゼルの使用を禁止しマダムに統一したことに対する見解には納得しました。鮫島先生は肛門疾患と精神症状との関連性について考察されています。リレー随筆は川原先生より,2月中旬にNHKで放映されたハーバード大学のマイケル・サンデル教授の究極の選択「お金で買えるもの,買えないもの」のテーマで,市場原理が命,教育,公共サービスの領域にまで入り込んできたことを考える討論会の紹介とコメントです。
 「各種部会だより」では平成23年度鹿児島市医師会女性医師部会総会の研修会で鹿児島大学脳神経外科の有田教授から教室の4人の女性脳外科専門医を紹介されています。頻回の当直,長時間の手術に携わりながらも人生設計や身体面のハンディに不安や不自由は無いが,結婚・出産された方には配慮して欲しいとの希望が出されたとのことでした。エールを送りたいと思います。
 「各種報告」では平成23年度日医学校保健講習会で髄膜炎菌性髄膜炎が第2種感染症に追加され,インフルエンザ,百日咳,流行性耳下腺炎の出席停止期間が見直されたことを河野先生に,平成23年度日医母子保健講習会で妊娠等に関する相談窓口事業の開始や産科医療補償制度などについて永井先生に報告していただきました。
 会長雑感では新年度に向けての抱負を述べられています。医師会の求心力増強のためには,支部で顔の見える交流を深めることと執行部の広報活動の充実を挙げておられます。
 東日本大震災発生から1年経過。政治の機能不全でがれき処理,除染処理ははかどらず被災地の復興は遅れています。速やかな復興から再生することを願っています。

                                    (副編集委員長 田畑 峯雄)

                                                                                                         

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