天
城山古狸庵
言うでけた苦情をば焼酎で黙らせっ
(ゆうでけた 苦情をばしょちゅで だまらせっ)
(唱)策き嵌ったかそら良か気分
(唱)(さきはまったか そらよか気分)
隣同士での気に入らないこと、迷惑なことは、例えば犬が吠えて眠れないとか、隣の木の落ち葉が溜まるとか数々あり、そんな苦情を相手方に言いに来ました。
しかし、一枚上手の相手は、焼酎を飲ましてその苦情の勢いを柔らげてしまいました。いがみ合うことなく、こんな対処の仕方もあることに感心しました。
地
清滝支部 鮫島爺児医
大て鼾苦情も言えんじ耳に栓
(ふていびっ 苦情もゆえんじ みんにせん)
(唱)良う寝れたどち皮肉どん言っ
(唱)(ゆう寝れたどち 皮肉どんゆっ)
私も旅行の幹事の経験がありますが、その部屋割りでは、まず鼾の大きい人が悩みの種で、年齢なども考慮した適当な組み合せは難しいものです。
運悪く鼾をかく人と同部屋の場合は、早く寝るに限るのですが、そうもうまくはいかず、前もって準備していた耳栓がなんとか役立ったのかもしれません。
人
紫南支部 紫原ぢごろ
前向っが役所ん苦情い合言葉
(まえむっが やっしょん苦情い 合言葉)
(唱)そいじゃ納得かいかんち吠えっ
(唱)(そいじゃなっとか いかんちほえっ)
生活の中で個人的には解決できない、困っていることや不便なことなどは、どうしても役所に頼らざるを得ません。
そんな苦情の中には、手続きが必要なものも多く、そう簡単には対処できませんが、苦情に対して、いつになるか不透明な「前向きに」という言葉で返答している役所を、ちょっぴり皮肉っています。
五客一席 城山古狸庵
苦情電話頭下げ下げ相手をしっ
(苦情電話 びんたさげさげ えてをしっ)
(唱)話す良う聞っ真面目人間
(唱)(はなすゆうきっ 真面目人間)
五客二席 清滝支部 鮫島爺児医
地震津波苦情は原発ち向く変えっ
(なえつなん 苦情はげんぱち むくかえっ)
(唱)住んがならんち恐ろしか事故
(唱)(すんがならんち 恐ろしか事故)
五客三席 霧島 木林
我い非が無かち考ぐい苦情ん前
(わがいひが ねかちかんぐい 苦情ん前)
(唱)間違げじゃったち恥ずかかんごっ
(唱)(まっげじゃったち はずかかんごっ)
五客四席 武岡 志郎
売れ残っ安し分譲いな苦情が出っ
(うれのこっ やしぶんじょいな 苦情が出でっ)
(唱)金ぬ返せち先い買た衆が
(唱)(ぜんぬもどせち 先いこたしが)
五客五席 紫南支部 紫原ぢごろ
嬶天下亭主の苦情どま馬耳東風
(かかでんか てしの苦情どま しれったん)
(唱)何時かあこげんなったたろかい
(唱)(いつかあこげん なったたろかい)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
桜島降灰苦情にゃ不知振
(桜島 降灰苦情にゃ しれったん)
食物にな苦情は無かった戦時中
(くもんにな 苦情はなかった 戦時中)
高層ビル日照権でな高け苦情
(のっぽビル にっしょけんでな たけくじょう)
城山古狸庵
多数決横ごん苦情でやい直えっ
(たすうけっ よんごん苦情で やいなえっ)
苦情言け来た人をびりっやい込めっ
(くじょうゆけ 来たとをびりっ やいこめっ)
武岡 志郎
コピー商品ね苦情も届かん国にょ頼っ
(コピーしね 苦情もとじかん くにょたよっ)
苦情ん先きょ想定外ち鈍らせっ
(苦情んさきょ 想定外ち にぶらせっ)
紫南支部 紫原ぢごろ
小め声で女房せえ苦情ん敷かれ亭主
(こめ声で かかせえ苦情ん しかれてし)
霧島 木林
苦情電話受けっ厄介な鬱いなっ
(苦情電話 うけっやっけな うついなっ)
《雑 吟》
霧島 木林
新居住め返済期間を計算しっ
(しんきょずめ ローン期間を さんにょしっ)
決算時計算が合わじ四苦八苦
(決算時 さんにょがおわじ 四苦八苦)
武岡 志郎
沈ん客船無様な船長は先き逃げっ
(沈んふね ざまなせんちょは さきにげっ)
内定も出じ嬉しも無卒業式
(内定も でじ嬉しもね そつぎょしっ)
薩摩郷句鑑賞 56
地蔵様も桜吹雪くば身いかぶっ
(じぞさあも さくらふぶくば 身いかぶっ)
秋山タツ枝
地蔵講は、旧暦の正月、五月、九月の二十四日だけれども、この句は地蔵講そのものを詠んだ句ではない。まだ桜には早いので、もうしばらくしてからの地蔵様に、桜吹雪が散るさまをとらえたもの。
昔から「正・五・九月には死人が多い」というが、講や祭もこの月に行われるものが多い。門外漢でよく分からないが、季節のかわり目、健康状態、それに祭り、これはつながりのあることかも知れない。
ごろた石す挾すで放さん厳し下駄
(ごろたいす はすではなさん いみし下駄)
宇井野牛骨
雪の降った時下駄で歩くと、よく歯の間に雪がつまって、雪達磨式に大きくなり、のちには歩けなくなるものであった。この句の場合は、雪でなく石ころである。
「ごろた」というのは「かたまり」であるが、「ごろた石」と言えば、拳くらいの石と思えばよいだろう。最近では下駄をはくことも少ないし、道路は舗装されたので、めったに経験できないことである。
口封ぎ横ごを議長い担げ出っ
(くっふたぎ よんごをぎちょい かたげ出っ)
小迫 雑魚
よく会議などで、次々に質問をしてみたり、しつこく食いさがったり、一人で反対をしたりする人がいるものである。
それが正論ならまだしも、臍曲がりで、わからず屋が多い。鹿児島でいう「よんごもん」である。そこで、その口を封じるために、なんとか煽て上げて、議長にまつりあげたのである。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎5 号
題 吟 「 匂(かざ)」
締 切 平成24年4月5日(木) ◎6 号
題 吟 「 物好っ(ものずっ)」
締 切 平成24年5月7日(月)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
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