=== 新春随筆 ===
プライベートをアグレッシブに
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鹿児島県言語聴覚士会 理事
(今給黎総合病院 言語聴覚士)
東 慎也
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言語聴覚士として働き始めてもうすぐ4年が経ちます。右も左も分からない1年目からすると,少しずつ仕事に慣れてきて余裕が出てきましたが,それでもまだまだ新しいことの発見ばかりで充実した日々を送っています。
言語聴覚士になって良かったなと思うことの1つが,言語聴覚士の「コミュニケーション障害者のリハビリテーション」という仕事上,様々な年代,特に自分よりも年齢が高く,自分よりも何でも知っており,自分よりもいろんなことを経験されている方(患者さんやそのご家族など)とのコミュニケーション機会が多いことです。学生時代までの同年代とのコミュニケーション機会では得られなかったような,「大人の醍醐味」,「大人の考え」,さらには「大人の恋愛観!?(笑)」など,様々な内容をいろんな方から学ばせてもらっている気がします。こんな考え方もあるのか,この趣味は自分もしてみたいな,自分もここには行ってみたいな,などとても刺激のあるコミュニケーション機会です。
このコミュニケーション機会の中で,私自身の人生観というか生き方・考え方のアドバイスになったものもあります。担当していたある患者さんから,「プライベートを活動的(アグレッシブ)に過ごしなさい」と言われたことがありました。その方は構音障害の方でしたが,発話でのコミュニケーションが可能な方で,その人曰く,「仕事の知識・技術・経験も大切かもしれないが,それ以上に私は仕事以外のプライベートでの経験や感じたことが人を成長させると思う」とおっしゃっていました。その方は,自身の経験を踏まえながらいろんなお話をして下さり,「こういう考えもあるのか」と会話の中で私に新しい風を吹き込んでくれました。
それから意識的に「プライベートをどのように過ごすか」を考えるようになりました。学生時代に比べ,時間的な余裕は少ないかもしれませんが,金銭的な余裕はあります。とりあえず,「今できることは何でもやってみよう」をモットーに,フルマラソン・球磨川ラフティング・屋久島登山・富士山登山といった体を動かすものや,今まであまり馴染みのなかった美術展や書展を見に行ったり,陶芸にチャレンジしたり,旅行に行ったり…,といろんなものに挑戦し,いろんなことを経験・体験してみました。
今のところ,これといって得たものはないかもしれませんし,考え方が劇的に変化したわけでもありません。ただ患者さんとのコミュニケーション場面の中で,私の経験や体験を話題に出すことで,「私もここには行ったことがあってな〜」,「私は昔これが趣味でね〜」,「今度はここに行ってみたら?」など,患者さんのコミュニケーションを引き出す良いきっかけになっているのではないかなと思っています。生きていく上で絶対に必要なものではなく,話したくない人とは話さなくても生活できる,というコミュニケーションの性質上,相手のコミュニケーション意欲を引き出すことは,言語聴覚士の仕事上大変重要なことかもしれません。このように,プライベートでの出来事が仕事に反映されているようです。
今後も,「プライベートをアグレッシブに」という言葉を胸に,いろんなものを経験して自分の感性を磨き,そして「自分なりの人生観」,さらには大きいことを言うと「自分なりの臨床観」を高めていきたいなと思っております。

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