本号で今年も最後,誌上ギャラリーの「立神岩夕景」の奇麗な夕日は,まさに1年を締めくくるに相応しい1枚です。山口淳正先生ありがとうございます。みなさんにとってはどのような年になりましたか。私の今年の3大ニュースは,浪人中の愚息1号に続き4月から娘が神戸に進学して妻と愚息2号の3人家族になったこと,7月30日に高校の卒業30周年同窓会を無事に開催したこと,さらに日本臨床皮膚科医会(日臨皮)学校委員会副委員長として携わってきた「学校生活における紫外線対策に関する具体的対策の日臨皮統一見解」を10月に公表できたことでした。
今年一番の全国ニュースは,論説と話題の猪鹿倉忠彦副会長を始め,多くの方の1年を振り返っていただいた原稿に出てくる東日本大震災と福島原発事故でしょう。現代用語の基礎知識選ユーキャン,今年の流行語・新語の候補にも多くの関連する言葉が挙がっていますが,私が注目したのは「想定外」です。福島原発事故のニュース解説でよく耳にし,聞くたびに原子力ムラと呼ばれた専門家集団の言動に違和感を覚え,原子力安全神話の前提そのものが甘かったことを露見させた言葉でした。失敗学の開祖で福島原発事故調査委員会の委員長に就任した畑村洋太郎氏の「未曾有と想定外」に「人間は何かを企画したり,計画する際には最初に問題(課題)設定して,その枠組内について問題(課題)解決方法を出すが,前者が得意な人は少ない。そして状況の変化によって想定の枠組みを拡大し,それに則した解決方法を臨機応変に出せる人はもっと少なく,日頃からの訓練が必要である。」とあります。新制度が本格始動する臨床検査センターやそう遠くない将来に建て替えも必要になる医師会病院の存続を考える時に大事な教訓となるものと考えます。
くすり一口メモのアセトアミノフェン製剤の適応と用法・用量の改訂を読んで,アメリカ留学中ドラッグストアで買ったイブプロフェンを思い出しました。日本では患者さんがあまり効かないと言っていたのに,よく効くので不思議に思い調べてみると含有量は我が国の約3倍の200mgもあり,さすがアメリカ,big and lotsの国,薬剤の含有量も半端無く多いのだと感心していましたが,日本での用量が実は少なすぎたのかもしれないと今回思い直しました。学術には,特発性腸間膜静脈硬化症という珍しい症例報告が医師会病院からありました。比較的新しい疾患のようで今後の多くの症例の積み重ねによる病態の解明がまたれるところです。
鹿児島というか九州の今年の一番のニュースはやはり九州新幹線の全線開通でしょう。東日本大震災の影響でテレビ放映は中止となりましたが,マイア・ヒラサワの歌う「Boom!」をバックに,九州新幹線の開通を祝う「JR九州/祝!九州キャンペーン」のCMはカンヌ国際広告祭のアウトドア部門にて金賞,メディア部門にて銀賞を受賞しました。その中にあるコンセプトはズバリ今年の漢字として私が予想している「絆」です。本会の絆を深める良い方法の一つは医報への投稿ではないかと思うのですが,本号には常連の古庄弘典先生,鮫島 潤先生だけでなく,リレー随筆を愛甲隆昭先生が書かれて,晴天に恵まれた親善ゴルフ大会で優勝されたお三方にも優勝の弁をいただいています。本当にありがとうございました。
本号が届く頃には,執行部役員等選挙がはじまります。公益法人化という転換期の大切な選挙であり,今回は現行システム(選挙当日に会場に出席した会員による直接選挙)での最後のものになります。今まで委任状だけで済ましておられた方も会場に足を運んで一票を投じられてはどうでしょうか。会員として医師会を見つめ直す良きチャンスになるかもしれませんよ。
(編集委員 島田 辰彦)

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