鹿市医郷壇

兼題「返事(へし)」


(386) 永徳 天真 選




城山古狸庵

プロポーズ返事を待っ間ん長かこっ
(プロポーズ 返事を待っまん なんかこっ)

(唱)運命ゆ決むい相手ん一言
(唱)(うんめゆきむい えてんひとこっ)

 男女が出合い、付き合いを通して、共に暮らし夫婦関係を築きたいと思った時に求婚ですが、その決断の時期は人それぞれです。相手の心は読めませんが、恋が熟し、受け入れられるという確信を持っていざ求婚です。「僕と結婚して下さい」と言って、その返事を待つ数秒間ですが、人生のドラマが凝縮された句です。




原良 龍虹

話してんいっちゃ返事じゃせん反抗期
(はなしてん いっちゃへじゃせん 反抗期)

(唱)叱れば叱ったで尚も増長せっ
(唱)(がればがったで なおものぼせっ)

 中学生ぐらいの頃の第二反抗期でしょうが、この時期は、世の中の矛盾や人間関係についても大いに悩み、そして葛藤しながら、自己が目覚める成長の過程だろうと思います。特にこの時期は、親の干渉をわずらわしく思っていて、まさに真実味の句です。親としては、そのことは分かっていても複雑な心境でしょう。




清滝支部 鮫島爺児医

保証人義理と人情で返事し困っ
(保証人 ぎいとにんじょで へしこまっ)

(唱)なっといかんち睨い女房
(唱)(なっといかんち ねぎいうっかた)

 保証人は、安易に形式だけという訳にもいかず、大きなリスクを背負っていることには、間違いありません。
 それだけに、責任をとれるだけの保証能力があるかどうかを、慎重に考える必要があります。保証人になってほしいと頼まれて、その返事に苦悩する心境が、よく捉えられた句です。


 五客一席 紫南支部 紫原ぢごろ

古女房返事もだんだん図太となっ
(ふるにょうぼ 返事もだんだん ずぶとなっ)

(唱)時にゃ上から目線の物言
(唱)(時にゃ上から 目線のものゆ)


 五客二席 上町支部 吉野なでしこ

気乗やせん会議出席浮かん返事
(きのやせん 会議しゅっせき うかん返事)

(唱)嘘ん用事どん勝手い準備っ
(唱)(嘘んゆしどん 勝手いしこっ)


 五客三席 城西 桃花

倦怠期妻せえん返事じゃ知らんふい
(倦怠期 かかせえんへじゃ しらんふい)

(唱)気いななっどん口が重ぶなっ
(唱)(気いななっどん くっがおぶなっ)


 五客四席 城山古狸庵

返事じゃすいが顔あ明後日向けたない
(へじゃすいが つらああさって むけたない)

(唱)も一度聞けば何じゃったけち
(唱)(もいっど聞けば ないじゃったけち)


 五客五席 清滝支部 鮫島爺児医

可愛ぜ孫が良か返事ずしたち嬉し爺
(もぜ孫が よかへずしたち 嬉しじじ)

(唱)お利口さんち頭を撫ぜっ
(唱)(おりこうさんち びんたをなぜっ)



   秀  逸

紫南支部 紫原ぢごろ

テレビ観で頼ん返事は上ん空
(テレビみで たのんへんじは うわんそら)

頼い無が返事んぶんな良う出来っ
(たよいねが へんじんぶんな ゆうでけっ)

プロポーズいけな返事か寝もならじ
(プロポーズ いけなへんじか ねもならじ)


武岡 志郎

ちゃん付けで三歳児も良か返事ずばしっ
(ちゃんづけで みっつごもよか へずばしっ)

良か返事ずば願ごっ吉日ちプロポーズ
(よかへずば ねごっきちじち プロポーズ)

返事分な元気があっち誉められっ
(返事ぶんな 元気があっち ほめられっ)


清滝支部 鮫島爺児医

返事しゃ良どん身体は動かじ仕事ちゃ駄目
(へしゃえどん ごては動かじ しごちゃぼっ)

言難き返事確実と言わんが揉むっ源
(ゆにき返事 ちゃんとゆわんが もむっもと)


城山古狸庵

元気の良返事で起立の参観日
(元気のえ 返事できりっの 参観日)


上町支部 吉野なでしこ

幼稚園はち切れん態の大か返事
(幼稚園 はち切れんふの ふとか返事)


原良 龍虹

すぐやるち返事は良かどんうったたじ
(すぐやるち 返事はよかどん うったたじ)



《雑 吟》

武岡 志郎

皺ん中け喜怒哀楽を刻ん込ん
(皺んなけ きどあいらっを きざんくん)

頑張ってん給料が下がい世いけなっ
(きばってん きゅうりょがさがい よいけなっ)


 作句教室

 投句作品の中の次の句に注目してみたいと思います。

やっせんと思ちょい所れ嬉し返事

 この句を共通語に置き換えてみると、「駄目だと思っている所に嬉しい返事」ということになりますが、ここで問題となるのは、「何が」という点です。
 作者の駄目だと思っている「何が」を、読み手は、この句からは理解できないということになります。いろいろな「何が」が当てはまると思いますが、読み手は、勝手にその「何が」を想像しなければなりません。
 このような句は、作者の意図と読み手の解釈が合致しないことにもなりますので、作句する時にはこの点も留意し、読み手にも分かるように、「何が」という具体的な内容を表現した方がよいです。


 薩摩郷句鑑賞 53

猪の鍋自慢聞っうち滾いでっ
(ししの鍋 おぎらきっうち たぎいでっ)
               古藤 雪尾

 この句は、猪を仕留めたハンターが、一緒に猟に行った仲間や、近所の人たちを招いて御馳走したのである。呼ばれた人々は、その自慢話を聞かされる羽目になったのであろう。


お寺詣やすいが朝から亭主しゅ叱るっ
(おてらめや すいが朝から てしゅくるっ)
               田中五郎太

 左手に数珠、右手に木魚を叩きながら経文を読んでいるところへ、猫がやってきたら、その猫をひっぱたくという話が、落語かなんかにあるようである。
 この句に出てくる奥さんも、それと似たような人らしい。感謝の気持ちも、いたわりの気持ちもなく、朝っぱらから叱りつけて、こき使っているのであろう。お寺になんのために参詣しているのか分からない話。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋

薩 摩 郷 句 募 集

◎新年号
 題 吟 「 御馳走(ごっそ)」
 締 切 平成23年12月5日(月)
◎2 号
 題 吟 「 計算(さんにょ)」
 締 切 平成24年1月5日(木)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


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