天
城山古狸庵
バッグいな枕も準備た婆ん旅
(バッグいな 枕もしこた ばばん旅)
(唱)流石旅通年季が違ごっ
(唱)(さすがたびつう 年季がちごっ)
自宅以外の旅館などで、寝る場所が変わると、なかなか寝付かれない人は多いようです。酒を飲んですぐ鼾をかくような人は別として、環境の違いによる眠りは、デリケートなのかもしれません。
眠れない苦痛は耐えられないので、ぐっすり眠れるようにと、枕が旅のお供です。万全の旅支度の着眼がよかったです。
地
城西 桃花
退職たなあ妻と湯巡い慰労ん旅
(やめたなあ かかとゆめぐい いろん旅)
(唱)よか湯じゃなあち背中も流なげっ
(唱)(よか湯じゃなあち 背中もなげっ)
定年退職をされて、長い間のお勤めは、本当に御苦労様でした。
これまで無事に働いてこれたのも、支えてくださった周りの人たちはもちろん、奥さんのお陰だったことでしょう。
その奥さんに感謝の、二人のゆったりとした旅の様子が、とてもほのぼのと表現されています。
人
武岡 志郎
旅び慣れた花嫁んリードでハネムーン
(たび慣れた よめんリードで ハネムーン)
(唱)こん先も尻い敷かれかたじゃろ
(唱)(こんさっも しい敷かれかたじゃろ)
人生で最高の旅であるハネムーンなのですが、この二人きりの旅は、希に旅の不慣れが因で、思わぬすれ違いやトラブルを発生させることもあるようです。
しかし、この二人には何の心配はなく、夫は旅慣れた妻にすべてを託して、ただお供するだけです。お互いを信頼して、すばらしい旅になったことでしょう。
五客一席 伊敷支部 矢上 垂穗
カーナビと司馬遼太郎が旅の友
(カーナビと しばりょうたろが 旅のどし)
(唱)歴史探訪と自分探しか
(唱)(歴史たんぼと 自分探しか)
五客二席 清滝支部 鮫島爺児医
一泊の旅に準備が十日も要っ
(いっぱっの 旅に準備が とかもいっ)
(唱)何ゆ持っ行こち入れたい出たい
(唱)(なゆもっじこち いれたいでたい)
五客三席 上町支部 吉野なでしこ
旅支度あいこい詰めっ入いきらじ
(たっじたっ あいこいつめっ はいきらじ)
(唱)まこて仕分けが下手な女房
(唱)(まこて仕分けが 下手なうっかた)
五客四席 紫南支部 紫原ぢごろ
外国の旅は手真似で用事じゃけ済ん
(がいこっの 旅は手真似で ゆじゃけすん)
(唱)何じ人間通じい心
(唱)(何じ人間 つうじい心)
五客五席 城山古狸庵
味ず食ろっこん次ぎゃ船ん旅ぶ言出っ
(あずくろっ こんつぎゃ船ん たぶちゅでっ)
(唱)豪華船なあ金もかかっど
(唱)(豪華船なあ ぜんもかかっど)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
人生ん旅始めと終わや皆同様
(ひとん旅 始めとおわや みんなぐわい)
月の旅び行くい頃ずや待てん身体
(つっのたび いくい頃ずや まてんごて)
景色く見い旅びゃのんびいと鈍行じゃっ
(けしくみい たびゃのんびいと どんこじゃっ)
喜寿ん旅声がせん時きゃ凄ぜ鼾
(喜寿ん旅 声がせんときゃ わぜいびっ)
紫南支部 紫原ぢごろ
レンタカーナビが頼いの一人旅
(レンタカー ナビがたよいの ひといたっ)
ツアーでなつがんね人と友しけなっ
(ツアーでな つがんね人と どしけなっ)
旅び行けば孫ん土産をあいやこや
(たび行けば 孫ん土産を あいやこや)
城山古狸庵
旅慣れた爺が懐にゃ財布一っ
(旅慣れた じいがつくらにゃ ふぞひとっ)
爺も婆もアロハ姿んハワイ旅行
(じもばばも アロハ姿ん ハワイりょこ)
上町支部 吉野なでしこ
旅前ん元気はたっ疲れ倒けっ
(たっまえん 元気はたっ だれとけっ)
とんだ旅カバンの鍵をけ忘れっ
(とんだ旅 カバンの鍵を け忘れっ)
武岡 志郎
桜島ん灰も迎め来た様な旅戻い
(しまんへも むけめ来たよな たっもどい)
旅みやげ失敗談がやれ受けっ
(旅みやげ 失敗談が やれ受けっ)
霧島 木林
気いせんじ羽目をはずした一人旅
(気いせんじ 羽目をはずした ひといたっ)
城西 桃花
駅弁もそこそけ旅の下車支度
(駅弁も そこそけ旅の げしゃじたっ)
《雑 吟》
武岡 志郎
抽選日迄や夢想三味宝籤
(抽選日ずや むそざんめ たからくじ)
今度くさ震災復興泥鰌頼ん
(今度くさ しんさいふっこ どじょだのん)
作句教室
次のような原句がありました。
老夫婦もパソコンで確認旅先の空
(おせみとも パソコンで確認 旅先の空)
この句の内容は、行く旅先の天候を、パソコンで確認している老夫婦の情景ですが、作品としては、中九、下七であり、破調句になっています。
この原句を元に、どのように十七音字にまとめるか、いろいろと検討してみたいと思います。まず、老夫婦のことは、方言では「おんじょみと」が一般的で、「おせみと」とは言わないようです。
原句に近い形で表現を変えてみると、次のような句ができます。
老夫婦パソコンで確認い旅先の空
(おんじょみと パソコンでみい たっの空)
なんとか破調句にはなっていませんが、「確認(み)い」とか「旅先(たっ)」などは、読ませ方に無理があるかもしれません。
ここでは、老夫婦(おんじょみと)、パソコン、旅先(たっさつ)などと、文字数の多い言葉が並びますので、これらをすべて作品の中に入れ込むのは無理ですから、この中のどれかを削ることを考えないといけません。そうなると、少し見方を変えることになり、例えば次のような表現もできるかもしれません。
パソコンで行っ旅先の空を見っ
(パソコンで いったっさっの 空をみっ)
パソコンで旅の情報を探い夫婦
(パソコンで 旅のじょうほを さぐいみと)
このように変えても、自己の思いが表現できていないと感じたら、その事象を句にすることを捨て、別の着眼点に切り替えることも必要です。
いろいろと表現を吟味、推敲する過程が大事ですので、不完全でも、破調句を作らないように努力して下さい。
薩 摩 郷 句 募 集
◎12 号
題 吟 「 噂(うわさ)」
締 切 平成23年11月7日(月) ◎新年号
題 吟 「 御馳走(ごっそ)」
締 切 平成23年12月5日(月)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
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