=== 鹿市医図書室 ===
『ぼ く た ち は な く』
南区・谷山支部
(東開内科クリニック) 植松 俊昭
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これは計41篇の詩からなる,内田麟太郎さんの詩集(絵 小柏 香,PHP研究所,1,200円+税)です。
内田さんは,1941(昭和16)年,福岡県生まれ。詩人にして絵本作家で,70歳を過ぎたオトナ(!)。
大変失礼ながら,すでに老境に入った詩人の作品だとはとても信じがたい,まるで少年のようなみずみずしい感性を湛えた心の持主ではないでしょうか。
その冒頭に「ぼくたちは」という詩があります。
この詩は遅々として進まない,東日本大震災の復興に悲しみをこらえながら頑張る,被災地の人たちの心根に通じるものかもしれません。
深い深いいい詩です。
帯にもあるように子どもたちと一緒に読んでみられたらいかがでしょう。
「ぼくたちは」
もしかしたら
にんげんがえらいのは
かなしくても
つらくても
しにたくても
いきているからかもしれない
いしは なくだろうか
てつは なくだろうか
ほうせきは なくだろうか
ぼくたちは なく
つらくて つらくて なく
こえを ころして なく
こえを あげて なく
でも ぼくたちは いきていく
つらさを かかえながら
かなしみを だきしめながら
そんなぼくたちをみて
だれかがいっているようなきがする
がんばれ
がんばれ
ぼくたちは いきているだけで
きっと えらいのだとおもう
かなしみを こらえて いきているのだから
おいおいなきながら いきているのだから
それだけで じゅうぶんに
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